異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

召喚獣な冒険者たち


 アダムくんたちは、拠点を潰した後、馬車でこの場所から出発したようだ。

「クロエ、どちらへ向かったか分かるか?」
「むう……アダムくんの匂いが変わっちゃってますから……馬車だとリズの匂いも薄いんですよね……多分……北ですかね……」

 クロエが自信なさそうなので、イヴリースの魔法で念のため確認する。


『ログアクセス』


 ―――― 「じゃあ行き先はノルンに決定ね!」

 リズが行き先を告げるシーンを映像で確認した。クロエの言うとおり、北へ向かったようだ。


「よし、アダムくん……いやイソネくんたちはノルンという町に向かったようだ」

 断片的な情報しか見ていないので経緯は分からないが、途中からリズがアダムくんのことをイソネと呼び始めたのだ。

「カケルっち、なんでアダムの名前が突然イソネに変わったんだろうな?」
「うーん、あの映像の時の身体はカスパーだから関係なさそうだし?」

「先輩、私わかったよ! テンプレだよテンプレ。スキル発動と同時に前世の記憶が甦って~みたいな?」
「おお!? さすが美琴。それだな、なんかしっくりくる。イソネって響きもなんか日本人っぽいしな」

「それじゃあイソネくんは転生者ってことですか? 御主兄様?」
「ああ、でもその可能性が高いってだけだよ」

 
 もしそうなら話は早いかもしれない。記憶が戻って性格が変わってしまう可能性は気がかりだけど、最後に映像で見た感じだとあまり変わっていない気もする。


「駆、じゃあ、今からノルンとやらに行くの?」
「いや、残念だけど時間切れかな。もうすぐみんなを迎えに行く時間だ」

 自業自得だが、各地に婚約者たちを迎えに行かなければならない。村へ行けばすぐに会えると思ってたから、時間配分を間違えたな。

「だけど大丈夫ですかね。イソネくん、そんなに強そうじゃなかったし、リズとクルミちゃん二人を守りながらとか難易度高そうだよ?」

 ソフィアの言うとおり、確かに不安だ。俺たち基準で強さを測ったら可哀想だけどな。

 イソネくん本人はチェンジのスキルがあるから、そうそう死ぬことはないだろうけど、連れの二人はそうはいかない。しかもあれだけの美少女だし。    


「カケル、なんだったら俺たちが追いかけてやろうか?」 
「ありがとうございます、アーロンさん。でも大丈夫です」
「何でだ? やっぱり俺たちじゃ力不足かよ」

 不満そうなアーロンさんだけどA級冒険者パーティが力不足な訳ないでしょう? そうじゃないんです。

「いえ、やはりチェンジスキルを持った人間に近づくのは危険ですから。イソネくんはそんな人間じゃないとは思いますけど、万一のことを考えると……」

「うっ、そりゃたしかにやべぇな!? 身体交換されたら元に戻せないんだったよな?」
「そうみたいですね。だから召喚獣を使います」

 チェンジを使えるのが、イソネくんしかいない以上、入れ替わったら一生そのままだ。なるほど……確かになかなか使い難いスキルだな。

 人の一生を変えてしまうスキル。心優しいイソネくんのことだから、おそらく一生使うつもりは無かったのだろう。

 とはいえ、念じるだけでスキルが発動するのだからやはり注意は必要だ。たとえば洗脳や魅了で自分の意思とは関係なく攻撃される可能性だってある。

 その点、俺の召喚獣なら、本体である魂がスケッチブックにあるから、魂を入れ替えるチェンジスキルは効かないはずだ。

 問題は誰を行かせるかだけど……

「シュヴァイン、シュタルク、ハルト、ハルク、それからキタカゼ」

『はっ、お呼びでしょうか?』

 オーク四人組とハーピィのキタカゼを召喚した。

「…………あの……君たち誰?」

 キラッキラのイケメンアイドルグループみたいな……いや、悪役令嬢ものに出てくる王子たちみたいな男どもが現れた。

『酷いぜ主、俺だよシュヴァインだよ』

 灰色の髪と褐色の肌のイケメンがそんな寝言をおっしゃる。男のウインクとか要らないからね!?

『僕を忘れちゃった? シュタルクですよ』

 金髪に透き通るような白い肌。どこの王子様でしょうか? ぱっと見男装の麗人に見えなくもない。いくらなんでも、さすがにときめいたり……しないよ!?

『ふん……こんな軟弱な奴らと一緒とは……このハルクさまを失望させるなよ?』

 ボサボサの赤い髪に鋭い眼光のワイルド系イケメン、ハルク。なんで頬に傷跡があるんでしょうかね? あと眼帯いる!?

『ふぇっ!? 怖いよ主。このメンバーじゃ絶対にいじめられるよ……あ、ボクはハルトだよ?』

 サラサラの水色の髪。見るからに気弱そうなハルト。ぷるぷる震えて庇護欲を刺激する小動物系イケメン。もう原型留めてないよね!? っていうかメタモルフォーゼ必要ないじゃん!? オーク要素何処行った?

『王さま……私にこのブタ共と一緒に旅をしろとおっしゃるのですか?』

 う、そう言われると可哀想な気がしないでもない。美少女をオークの群れに放り込むとか、字面だけなら鬼畜の所業だよな!?

『おいおいキタカゼ、ブタ呼ばわりは酷いんじゃねえか?』

 キタカゼをにらむシュヴァイン。

『ごめんなさい。ブタは食べられるから一緒にしたら可哀想だったわね。食べられない貴方たちはただの変態。あと……私を呼び捨てできるのは王さまだけです。次呼び捨てしたら……殺しますよ?』

 キタカゼがにらみつけると、シュヴァインの手足が凍り付く。

『くっ、わかったよ。おお怖い怖い。こんなおっかねえ女と組むとか主マジで鬼だぜ……』

 ……どうしよう。なんか不安しかないんだけど!?

「キタカゼ、お前の力が必要なんだ。どうか助けて欲しい」

 キタカゼの手を取りしっかりと思いを伝える。

『はいっ、はいっ、もちろんですっ!! このキタカゼにお任せください』

 うっとりした瞳と上気した頬。ぶんぶんと振る尻尾が幻視できてしまう。

「シュヴァインたちもしっかりキタカゼを守れよ? 変な男がちょっかい出さないように」
『えへへ……王さまが私を大事に想ってくださるなんて……うふふ』

 大歓喜のキタカゼさん。

『は? コイツのどこに守る必要が? ぐぼぶへあっ!?』

 キタカゼにぶっ飛ばされるシュヴァイン。安心しろ、致命傷だがお前は召喚獣だ。

『シュヴァイン、勘違いするな。守るのは街とこの世界の方だ』

 消えゆくシュヴァインにそっと耳打ちする。

『……がハッ!? な、なるほど……納得……したぜ……ゴフッ!?』

 納得してもらえて良かったよ。光の粒子となって消える前に一旦シュヴァインを戻してから再召喚する。

『まったく酷い目にあったぜ……』
 
 自業自得だぞシュヴァイン。


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