異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

絶対零度の忠誠心 女勇者とクールビューティー


「先輩、この串焼き絶対にラムだよね? 鑑定だとブタウシって出るけどさ」 

 ブタウシがどんな生き物かは分からないが、味は完全にラムだな。羊肉が大好きな俺にとっては、とてつもなく重要な発見だ。家畜なら、うちの領地で牧場を作っても良いかもしれない。
 
 
 俺たちが今何をしているかと言うと、待ち合わせ場所でみんなを待ちながら屋台巡りをしている。実は思ったよりも情報が集まらなかったのだ。

 いや、正確には目的地であるトナリ町に関する情報が集まらなかったと言った方がいいか。

 どうやらトナリ町とやらは全国レベルで知られている場所ではなさそうなので、町があるエデン伯爵領へ行くしかないと、この街での情報収集を早々に切り上げることにしたのだ。

 幸いコーナン王国の大まかな地図は手に入ったので、エデン伯爵領の大体の場所は分かる。


「お待たせ、カケルくん」

 最後にカタリナさんたちウサギの耳が戻って来た。

「お疲れ様でした。魔術師ギルドの方はどうでしたか?」
「ハズレね。トナリ町に関しても、スキル持ちに関する情報も無かった。隣接している領地でもないから仕方ないのかも」

 俺たちがいるサウスパークは、コーナン王国南東部のナトー伯爵領の領都だが、トナリ町のあるエデン伯爵領とは隣接していないだけでなく、山地と森林地帯に阻まれほとんど交流がないようだ。
 
「ありがとうございます。これ食べたらエデン伯爵領方面に行ってみましょう。皆さんもどうぞ」

 ブタウシの串焼きは好みが別れるようだった。やはり独特の臭みだろうな。俺は好きだけど。改良の余地は十分ある。

「ツバサ、エデン伯爵領方面は、誰が行っているんだ?」
『キタカゼが行っている……だ、旦那さま』

 慣れない旦那さま呼びに照れるツバサが可愛くて困る。頭を撫でるだけでは物足りないが、それ以上は危険な賭けとなる。鋼の意志で前を向く。


「それじゃあ行こうか! いざエデン伯爵領へ!」

 ふふっ、それにしてもエデンか……さぞかし素晴らしい、花と緑と果実が沢山あって一年中春のイメージだ。まあ人名だから関係ないだろうけど期待しちゃうよな。

 期待に胸を膨らませて転移したが――――


「さ、寒っ!? せ、先輩、寒くて死にそう」
「御主兄様……私、つい最近似たような景色を見たような……」
『……奇遇ですね、クロエ。私も同じ事を考えておりました。あれは樹氷とダイヤモンドダストでしたね、カケルさま?』
「…………うん、ソウダネ、ヒルデガルド」

 エデン伯爵領は、動く者が居ない氷に閉ざされた領地だった。

 おいおい、これでエデンとか観光客舐めてんの? がっかり観光地認定しちゃうよ……ってキタカゼえええぇっ!?


『は、お呼びでしょうか、王さま』

 まるで忍者のようにシュタッと現れたのは、アイスブルーの髪と瞳を持つハーピィクイーン、キタカゼ。俺以外には絶対零度対応のクールビューティーだ。

 何故か頬を染めてそわそわしている。

「……あの、キタカゼさん? これは一体?」
『ふふっ、いかがですか、この美しい絶景。王さまに見せようと準備しておりました!』

 誇らしげに慎ましやかな胸を張るキタカゼ。うん、綺麗だけどバヌヌで釘が打てそうだよ!?

「一応聞くが……俺の悪口を言われたとかは……?」
『? いいえ。万一そんなことがあれば、そのゴミごと世界を凍らせますからご安心下さい』

 いや、全然安心出来ないんだけど!?

「じゃああれか! 下品な冒険者とか盗賊団に襲われたとか?」
『この身体は、髪一本まで王さまのものです。万一そんな者どもがいれば、そのクズごと世界を凍らせますからご安心下さい』

 いや、だから全然安心出来ないんだけどおおお!?

 どうしよう……ご褒美を待つ仔犬のようなキラキラした瞳。問い質せる雰囲気ではない。

 それにしてもやけにみんな静かだな……って凍ってる!? 凍ってるんですけどおおお!?

『……どうしたのです? この程度ではご褒美はいただけませんか? やはり国ごと凍らせて……』
「ち、ちょっと待った。ご褒美って? 誰に聞いたんだ?」
『妹のユキカゼですが?』

 くっ、やはりか……となるとこの事態は俺の失態。キタカゼは何も悪くない。

「そうか、俺のためにこんな綺麗な景色を用意してくれてありがとう。だが、みんな凍っちゃってるから、次からはもう少し手加減してくれると嬉しいな」
『はっ!? も、申し訳ございません。これではご褒美などいただけませんね……!? んむむむ!?』

 落ち込むキタカゼを抱き寄せキスをする。純粋な好意が嬉しかったからな。別に被害が出るわけでもないし。

『ふわあ……お、王しゃま……だいしゅきでしゅ……』

 これでキタカゼが少し柔らかくなってくれるといいんだけど。


「もうっ、酷い目にあったよ!? キタカゼ?」
『も、申し訳ございませんでした、美琴さま』

「ふふっ、許してあげてもいいけど、覚悟しなよ? ぐへへへ……」
『ひ、ひぃっ!? お、おやめください美琴さま!? そこは……そこは駄目えええええぇ!?』

 ふふふ、いつ見ても美女のからみは眼福だな。キタカゼ、頑張って耐えろよ。俺がお仕置きするとご褒美になってしまうからな。ぐッジョブだ美琴。


「どうやら、あれがエデン伯爵領の領都、パラディのようだな」

 少し馬車を走らせると巨大な城壁が目に入ってくる。

 今度こそ有力な情報が手に入ることを願って、俺たちはパラディの城門をくぐるのだった。 
 


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