異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

トラシルヴァニア王家の秘密


「あらためまして、異世界人のカケルです。この世界ではアルカリーゼ、アストレア、アルゴノート、クリスタリアの公爵でもあります」

 最悪の事故のことは全力スルーして、トラシルヴァニアの首脳陣、エヴァの家族と宰相のシルヴァさんたちとティータイムだ。

「ハハハ、歓迎するぞ婿殿。エヴァンジェリンを宜しく頼む!」 

 白髪に赤眼でエヴァの父親だとすぐわかる長身美丈夫の国王ブラッド陛下。

「こんなに素敵なパートナーを見つけるなんてエヴァが羨ましいわ」

 うふふと妖艶に微笑むのは、エヴァの母親で王妃のノクタニアさま。なんでもアルカリーゼの元公爵令嬢で、ノスタルジアやミヤビの叔母にあたる方らしい。

「噂の英雄が弟になるなんて嬉しいよ」

 爽やかなイケメンスマイルが眩しいのは、長男で次期国王になることが決まっているクロイツ王子。いわゆる完璧超人だ。比べられるヘンリー王子に同情するよ。


 しかしさすがは王族。あれほどの痴態など、まるで無かったかのような見事な切り替えだ。実にありがたい。顔はまだ少し赤いけれども。

 問題はヘンリー王子だが……

「すまなかった。少し言い過ぎたと思っている……」

 ヘンリー王子は、彼が幼い頃に魔物によって母親を亡くしている。エヴァやクロイツ王子とは腹違いの兄弟な訳だが、魔物を憎む気持ちは理解出来る。

「こちらこそ、ユキカゼが少しやり過ぎたかもしれません。異世界人については、あながち間違っていないので気にしてませんよヘンリー義兄さん」 
「か、カケル殿……ありがとう。ユキカゼ殿もすまなかった」
『昨日も申し上げましたが、私は気にしておりませんよ、ヘンリー殿下』 

 天使のように微笑むユキカゼ。

「あ、あの……その〜、それでだな……もし良かったら私の妻になってくれないか? ユキカゼ殿?」

 顔を赤くしてプロポーズするヘンリー王子。

「ち、ちょっと待て。ユキカゼ殿、是非私を選んで下さい」

 慌ててクロイツ王子もユキカゼにプロポーズする。おおっ!? モテモテだなユキカゼ。

「な!? 兄上はすでに沢山妻がいるではないですか!」
「人数は関係ない。お前こそ、今のパートナー一筋と言っていたではないか!」


『…………お断りします』

 部屋の温度が一気に氷点下に下がる。ユキカゼさん……せっかくの紅茶が冷えてしまうから止めて!?

「「ぐはぁ!? な、なぜだ?」」

「お前たち、諦めろ。婿殿相手では勝ち目は無い」

 ブラッド陛下が、寒さでティーカップをカタカタさせながら息子たちに厳しい現実を告げる。うちのユキカゼがすいません陛下。

「……ダーリン、兄たちがすまんの」
「気にしてないよ。ユキカゼが魅力的なのが悪い」
『はうううっ!? わ、私が魅力的? うふふふ……王様、もう一度愛してると仰って下さい!!』

 ユキカゼ……そんなこと言ってないんだが!? 愛してるけれども。

「……ヘンリー、諦めようか」
「……そうですね、兄上」

 ふふっ、雨降って地固まるという奴だな。兄弟の絆も深まったことだろう。


「ちょっと良いかしら? カケルさん」
「なんでしょうか? ノクタニアさま」

 エヴァの母、ノクタニアさまがそっと耳打ちする。衆人環視のこの状況での耳打ちに意味があるのか俺には分からないが。

『トラシルヴァニアには、母親が娘の相手を味見する伝統があるのです。もちろん義務ではありませんが。使うことは無いと思ってましたけれど、遠慮なく使わせてもらうわね……カケルさん……』

 頬を染めて耳を甘噛みするノクタニアさま。はうううっ!? この世界の母親ってみんなこんなんなの? エロ過ぎ注意なんですけど!? え? マジで!? そんな素敵な伝統があるの? トラシルヴァニア最高かよ?

「……ダーリン? どうしたのじゃ?」

 不審そうにジト目するエヴァ。 

「……御主エロ兄様ですね」

 くっ、クロエには匂い鑑定でバレバレだ。

『……そのようですねクロエ』

 くっ、ヒルデガルドには透視でバレバレだ。

『……王様……エッチなことがしたいのでしたら、どうかこのユキカゼに……どんな責めにも耐えてみせます』

 ……ユキカゼさん……後で詳しく。


「あ、あの……私が同席していても宜しいのでしょうか?」

 あ、やべぇ、宰相のシルヴァさんがいること忘れてた。

「もちろんです。実はですね――――」

 国際条約と世界会議の話を説明する。

 皆さん喜んで賛同してくれたから良かったよ。


***


「ところで、エヴァと婿殿は、もう吸血の儀は済ませているのだったな?」

「はい、父上。その先も済ませております」

 エヴァさん、真顔でそういう事言っちゃうの!?

「あらあら、うふふ。ねぇエヴァ、どうだっの?」
「し、失神するほど凄かったです母上」

 真っ赤になってぶっちゃけるエヴァ。くっ、いっそのこと殺してくれ!

「し、失神するほど……まぁ……楽しみだわ」

 あの……ノクタニアさま? そんな期待されると頑張り過ぎてエヴァに弟妹が出来ちゃうから止めてください。


「婿殿……ほどほどに頼むよ? さて、あまり知られていない話をしようか。婿殿、吸血の儀を結んだ吸血鬼は、相手が死ぬとどうなるか知っているかな?」 

「はい、一緒に死ぬことになるんですよね?」

「その通りだ。では、もし相手が死ななかったらどうなると思う?」

「え? もしかして……」

「そう。相手が死ぬまで死ねなくなる」

「なんか悪い事みたいな言い方ですけど、基本的には素晴らしいですよね?」

 あ、でも、魔王イヴリースとか、刹那の件もあるから、例外もあるのか……パートナーが封印とかされたら大変なことになるかも。

「そうだな……基本的には素晴らしい。だが……残酷な犠牲者も存在するんだ」

 トラシルヴァニア首脳陣の顔が明らかに曇り、苦痛を噛みしめるような表情に変わる。

「エヴァ、お前もパートナーを見つけたことで立派な王族となった。我が国の秘密を話そうと思う。婿殿も一緒に聞いて欲しい」

「……秘密? 一体なんでしょうか父上?」


「……エヴァ、もし、初代様がまだ生きていると言ったらどうする?」
「は? 初代様って、千年以上前の方ですよ……ってまさか……」

「ああ、初代様の存在こそが、我がトラシルヴァニア王家の秘密だ」


 背筋が凍る。冷や汗が止まらない。

 ち、ちょっと待て……初代エヴァンジェリンって、異世界の勇者と結ばれたんじゃなかったか? 今も生きている勇者なんて……一人しかいないじゃないか。


 初代勇者、いや……邪神、深海幻。お前しか…………

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