異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
全会一致で可決
トラシルヴァニア王国は、まるで国ごと時間が止まったような、氷に閉ざされた世界だった。
うーん、これはあれだな。原因は考えるまでもないか。
「よし、召喚『ユキカゼ』!」
魔法陣から、可哀想なぐらい落ち込んでいるユキカゼが召喚され姿を現す。
『…………申し訳ございません』
土下座しようとするユキカゼを抱きしめる。
「謝らなくていいんだ、ユキカゼ」
『ですが……私は……』
「大丈夫だ。ちゃんと分かってるよ。おおかた俺の悪口でも言われたんだろ?」
『……申し訳ございません。どうしても許せなくて……』
まだ俺の顔を見れない彼女の頭を優しく撫でる。
「ありがとうユキカゼ。俺なんかのために怒ってくれて。だから謝る必要なんてないんだぞ。聡明なお前をそこまで追い込んだ相手が絶対に悪い。だから気にするな」
『ううう……王しゃま~うううう……』
ポロポロと大粒の涙を流すユキカゼ。
可哀想なことをしてしまった。
きっと俺の役に立とうと張りきって出向いたに違いないのに。
「それにな、ここに来るまで綺麗な景色が見られて感謝しているぐらいだ。なあ、みんな?」
「そうじゃぞ。いつもとは違う祖国を見れて楽しかったし、ユキカゼが怒ったのなら、それは相手が悪い。一体誰がそんな酷いことを言ったんじゃ?」
『……ヘンリー殿下です、エヴァ様……』
「なるほど……ヘンリー兄上か……根は悪人ではないんじゃがな。すまなかったユキカゼ」
ユキカゼに頭を下げるエヴァ。
『や、やめてください、エヴァ様、どんな理由があろうと関係のない人たちも含めて国ごと凍らせたのは事実なのですから……』
まあ、凍った国に関しては、被害は無いし、解凍すれば問題解決だからな。
「ところで……俺の悪口ってどんなことを言われたんだ? ちょっとだけ気になる」
『私の口からはとても……』
「じゃあ情報だけ見せてもらおうかな。ユキカゼ?」
『は、はい、ただいま……失礼いたします』
情報のやり取りは、頭部の接触で可能だ。
『んんん〜!!!?』
ユキカゼが背のびして俺の額におでこをくっつけようとしたので、捕まえてキスをした。
なるほどね……これは酷いな。ユキカゼも良く我慢した。きっと俺の評価が傷付かないように、それだけを一生懸命考えてくれたんだな。
『ふわあ……お、王しゃま……だいしゅきでしゅ……』
いかん……あんまりユキカゼが可愛いから、やり過ぎてしまった!?
しかし、ヘンリー王子か……ユキカゼは絶対に同意しないだろうけど、間違ったことは言ってないかもな。
深海幻は論外として、俺も傍から見たら相当だしな。美琴と刹那についてはノーコメントだ。
だけど、ヘンリー王子の異世界人嫌い……いや異世界人憎しはなんか他にも理由が有りそうだけどな……
「なあエヴァ、トラシルヴァニア王国での異世界人のイメージって、もしかして悪いのか?」
「いや……そんなことはない。じゃが、王家の人間は面白く思っていない者が多いような……理由はわからんがの」
ま、直接聞けば分かるかもしれないな。
『皆さま、ユキカゼ完全復活です!! さあ参りましょう、謁見の間へ!!』
すっかり元気になったユキカゼが可愛くて、また抱きしめてしまう。
『あ、王様……駄目です……』
「嫌か?」
『……嫌なわけないです……幸せです』
可愛いユキカゼをたっぷり愛でた俺たちは、いよいよ謁見の間へと乗り込んでゆく。
謁見の間には、国王を始めとした貴族たちが氷漬けとなったままだ。
「なあエヴァ………ってみんなどうしたんだ?」
ジト目で俺をにらむ3人の婚約者たち。
「御主兄様……あんな甘いものを見せつけられた私へするべきことがあるのでは?」
「妾も何かが足りない気がしてきたのじゃ」
『カケルさま……不公平は諍いの元と申します』
ふふっ、仕方ないな! 来いみんな、存分に可愛がってやるからな!
『主よ、我も我も!!』
フリューゲルも飛び込んで来る。任せろ、空を飛べなくなるぐらい可愛がってやるさ。
『…………』
ユキカゼが羨ましそうに見ている。なんだ、まだ足りないとは欲張り屋さんめ。
「おいで、ユキカゼ」
『っ!? はいっ!!』
遠慮がちにユキカゼも飛び込んで来た。
ああ……あったかい。これが家族の温もりって奴だな。こんな氷の世界だからこそ、ひと肌が恋しく…………あれ? 寒くない?
「「「「…………」」」」
気が付けば、謁見の間の氷は無くなっており、国王陛下始め、貴族の皆さんのジト目が痛い。特にヘンリー王子! ほら見たことか! みたいな顔をするの止めて!? いや間違ってないけども! 本当の事を言ったら傷付くからね!?
(ユキカゼ、どういうことだ?)
(申し訳ございません……1日経ったら自動的に解凍されるようにしていたのです……)
(なんでそんな大事なことを言わないんだ!?)
(……王様が……その……するからです)
(…………ごめんなさい)
くっ、とにかくこの場を切り抜けないと。
仕方がない……出来れば使いたくなかったが……
俺は漆黒の死神のローブを脱ぎ捨て、純白のローブを羽織る。
【魅惑のローブ】
妄想スケッチで生み出したカケル専用ローブ。魅力系ステータスを数倍に引き上げる。
ククク、敵意丸出しの魔物でさえ、腹を見せてゴロゴロ鳴くほどの威力だ。か弱い人間や魔力に弱い吸血鬼など赤子に等しい。
さあ集え、我が懐へ。遠慮は要らない。存分に触れ合おうではないか!
カケルに魅了された人々が、殺到する。あれほど俺を嫌っていたはずのヘンリー王子ですら、俺に抱きついて離れない。
(ふふふ、どうだユキカゼ、上手く誤魔化せただろう? これでみんな共犯者)
(さすがです王様……ですが、私たちにも効きすぎて……あああ、もう駄目えええぇっ!?)
その後、老若男女問わず、謁見の間で繰り広げられた痴態という名の地獄絵図は、闇に葬ることを全会一致で可決したという。
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