異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

魔力酔いにご用心


『…………』

「「「「「…………」」」」」 

 くっ、気まずい。さっきから魔王イヴリースが俯いたまま震えて動かないし。

 いやまて、俺以上にイヴリースの方が何倍も気まずいはず、むしろ殺してくれって感じだろう。

 こういう時は癒やしのケルベロス……駄目だ首を横に振っている。すごく楽しそうに。


 ここはいつもの全力スルーだな。無かったことにするしかない。敬語も駄目だな……一気に距離を詰めよう。

「イヴリース、異世界人のカケルだ。長い年月よく一人で頑張ったな。もう大丈夫。すべて終わったんだ」

 ありったけの笑顔で手を差し伸べる。



 どうしよう……あの時は考える余裕も無かったけど、冷静になって考えてみれば、お、お尻に鍵を突っ込ませるとかまさに変態の所業じゃない。くっ、気まずい……いっそのこと殺して欲しいわ。

 刹那とフォルトゥナがいるってことは、あんまり時間は経っていないみたいだけど……よりにもよって、知らない格好良い男性に鍵を突っ込まれるなんて……しかも乙女にあるまじき獣みたいな声を上げちゃったし……ううう、死にたい。

 それにしても、恥ずかしくてチラッとしか見れなかったけど、この人一体何者なんだろう。

 そばにいるだけで分かる膨大な魔力の奔流。私も魔王と呼ばれるぐらい魔力には自負があったけど、正直次元が違う。

 まるでゴブリンとドラゴン……ちょっと待ってゴブリンは嫌! そうね角ウサギとドラゴン。雑草と大木……ちょっと待った、野に咲く花と大木ね。

 とにかく私が全力で攻撃しても、多分傷一つ付けられないほどの圧倒的な力量差を感じる。

 でも良かった。この人絶対に悪い人じゃない。もし敵だったら絶望していたところよ?

 助けに来たのがアルスじゃなかったのは予想外だったけど、結果的に良かったかも知れない。アルスは私のことタイプじゃなかったみたいだし、むしろ魔族の私的には、この黒髪の彼の方が好みど真ん中なんですけど!?

 サキュバスと違って魔力酔いし難いはずの私の身体がすでにメロメロになっている。正直こんなの初めて。

 我ながら馬鹿っぽいけれど、名前も知らないこの人に、助けてもらって鍵と魔力を突っ込まれた挙げ句かき回されて好きになっちゃたみたい。うん、変態だわ、私。

 ここまでされた以上、今更とは思うけど、恥ずかしいものは恥ずかしい。私から話しかけるなんて絶対に無理!!


「イヴリース、異世界人のカケルだ。長い年月よく一人で頑張ったな。もう大丈夫。すべて終わったんだ」

 え? た、助かった……そう。カケルさんっていうのね。はあ……格好良い……直視出来ない。目つきが悪いせいで魔王と恐れられていた私が、こんなに恋する乙女みたいになるなんて。

『……イヴリースです。責任とって下さいね?』

 いやあああ!? 何言ってんの私、違うでしょ!? まずは御礼を言わないと。

 終わった……初対面で印象最悪。命懸けで助けに来てくれたのに、責任とれとかチンピラヤクザか私は!!

「もちろんそのつもりだ。イヴリース」


 え? 本当に? 何これカケルさんめっちゃ男前、惚れちゃう、いやもう惚れてる、好き大好き愛してる! あれ? 私やっぱり魔力酔いしてる?

『嬉しい。うふふ……カケルさん……私と☓☓☓して?』

「え? お、おう……そうだな、ここじゃあちょっと無理だな。とりあえずここを出ようか? 話さないといけない事も沢山あるしな?」

 え? あれ? 今私……なんて言ったの?

「……さすが魔王。いきなり☓☓☓してとか格が違う」
「……イヴリース……貴女との友人関係見直してもいいかな?」
『……魔王さま……分かってます魔力酔いですね。でも、さすがに☓☓☓は乙女としてどうかと? 私が男ならドン引きですね』
『あらあら、うふふ……大胆ね』

 フォルトゥナさん……フォローする気あります? そうか……魔力酔いなら慣れている。

「イヴリース、遠慮することはない。好きなだけ俺の魔力を吸って良いからな?」

 魔力酔いを治すには魔力を吸わせるしかないからな。ふふふ、リリスのおかげで慌てずにすんだよ。

『ふぇっ!? あ、あの……私サキュバスじゃない――――』
「人目があると恥ずかしいよな? みんな、ちょっとだけ2人にしてくれ」


「了解! あれ聞いている方も恥ずかしいからね」
「イヴリース、ごゆっくり」
『私耳が良いから聞こえちゃいますけど、気にせず声出して下さいね? うふふ』

『ふ、フォルトゥナ、助けて……』

 黙って首を横に振るフォルトゥナ。

(ごめんなさい魔王さま、手遅れです……) 


「イヴリース、もう大丈夫だ。ここには俺とお前しかいない」

 くっ、言えない。サキュバスと違って魔力を口から吸えないって言えない。

「どうした? ははっ、恥ずかしがり屋だなイヴリース。なら俺が魔力を注いでやる」
『あ、ああ~、なんか酔いが醒めたかもしれないな~なんて?』

「遠慮しなくて良いって言ったろ? ほら、顔真っ赤じゃないか? 完全に魔力酔いの症状だぞ」

 なんでそんなに魔力酔いに詳しいの? って、んむむむ~!?

 ああ……駄目かもしれない。口から極上の魔力が流れ込んでくる。もう何も考えられない。
 
「あれ? おかしいな? 普通ならこれで治るんだけどな?」

 さ、サキュバスならそうでしょうけど、悪魔族に魔力を注ぐとかえって酔いが深くなるのよ!?

「わかった! 魔王だけにこの程度では足りないってことだな」

 ち、違う……あああああああああ!? 

「……どうしよう。なんか痙攣している。初めて逢った時のリリスみたいだ……」

 あ、あああ……もう勘弁して。

「……そうか。そもそもイヴリースはサキュバスじゃなかった」

 そ、そうよ! やっと気づいてくれたのね!

「……たしか、悪魔族はお尻に魔力が集中しているって、フォルトゥナさんが言ってたな……そうか! お尻から魔力を注入すればいいのか! そうだよな。確かに恥ずかしがる気持ちもわかるよ」

 ふ、フォルトゥナあああああああ!? なんてこと教えてんのよ!? ま、まずい……こんな状態でお尻から魔力を注入されたら……

「よし、じゃあ行くぞイヴリース」

 ち、ちょっと待って!? ああああああああ!? おかしくなっちゃう!? 壊れちゃうウうううう!?



「あれ? もう終わったの? 先輩」

「うん……なんか、イヴリースが壊れた……」

『……魔王様、お可哀そうに……殿方にあんな顔を見られるなんて』


 この後、復活したイヴリースに滅茶苦茶怒られた……

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