異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

最下層の守護獣


 魔王イヴリースが居ると思われるダンジョンからは、強烈な魔力風が吹き出している。

「たしかにこれじゃあ、普通は入れないよね」

 美琴がぐいと先頭に立つ。

「おい、美琴、大丈夫か?」 
「ふふっ、リヴァイアサンのおかげで私も進化したのよ! そう……さ、最強勇者にね!」

 美琴……そこは言い切らないとかえって恥ずかしいぞ。気持ちは分かるが。

「じゃあ、俺たちも行こうか。さ、乗って」

『へ? 乗るってどこに?』
「……まったく、これだから駆素人は……背中に決まってるでしょう? ほらさっさと乗る!」

『あ、あのー、やはり服は脱いだ方が?』
「馬鹿なの? 変態なの? フォルトゥナなの? 外で脱ぐわけないじゃない」

『え? えええぇっ!? でもさっきは……』 
「「「モフる時は仕方ない」」」

『…………ソウデスネ』

 2人はカケルに背負われてダンジョンへと踏み込んでゆく。



(す、すごい……これが異世界の英雄の力……) 

 私も魔力には自信があった。

 世界でも魔力に優れた魔族の末裔。

 その私でも、ダンジョンの入口に近づくことすら出来なかったのに。

 恐ろしかった魔力風が、カケルさんにかかれば、まるでそよ風のように無力。

 頼もしい……カケルさんの体温を感じる背中が愛おしくなってしまう。

 刹那と一緒だから少し狭いけど、安心感がすごい。え? 刹那、何をしてるの?

 
 カケルさんの首筋を甘噛みしながらキスをする刹那。しかも移動時の揺れを利用した計算され尽くした天才の所業。すごい……

 すごいけど何やってんの!? 顔真っ赤じゃない、見ているこっちも恥ずかしいからやめてよね!?

 で、でも……よく考えたら、カケルさんからは見えないし、多分バレない?

 さっきまで裸で抱きついてたんだから、それに比べればなんてことないよね?

(ふふっ、いただきま〜す) 

 かぷっとカケルさんの首筋に噛み付く。

 なんかサキュバスになったみたいで興奮してしまう。どうしようもなく楽しい。サキュバスとは近縁だから、濃い魔力に酔ってしまうのかも。

 
 えっ? 何これ……なんで俺首筋はむはむされてんの!? いや気持ちいいから構わないけどさ……よし、気付かないふりで堪能しようそうしよう。ふふふ。

「……先輩……刹那……フォルトゥナ……ダンジョンで何やってんの?」

「「「ギックウ!?」」」

 美琴が鋭い眼光で俺たちを睨みつける。

 そうだよな。危険なダンジョンでこんな事して、怒って当然だよ。

「ごめん美琴、俺ちゃんと――――」
「面白そう!! 先輩私も私も〜」

「…………美琴は抱っこで良いか?」
「うん。はい、抱っこ……して?」

 ぐはぁ!? か、可愛い……両手を広げた抱っこおねだりポーズは危険だ。


 くっ、前と後ろの3箇所から同時に首筋を責められている。

 これがいわゆるダンジョントラップという奴だな。

 今はまだ耐えられているが、長くは持たない。一刻も早くダンジョン最深部まで辿り着かねば!!

 このダンジョンには、各階層にフロアボスが存在し、フロアボスを倒すことで下層への階段が出現する仕組みになっている。


「えいっ!!」 

 真面目に攻略すると時間がかかるので、床をぶち抜いて最下層を目指す。

 おやつの時間までに戻らなければならないからな。


「どうやら、ここが最下層のようだな……」

 最下層は、1つの大広間になっており、巨大な閉じた門が見える。おそらくあれが、魔界への門だろう。

 しかし――――

『グルルルアアアアアア!?』

 立ちふさがるのは、最下層の門を守る守護獣。3つの頭を持ち、口から炎や毒を吐く巨大な番犬ケルベロス。ダブルSランクの魔獣だ。

『け、ケルベロス……そんな……』

 絶望の表情を浮かべるフォルトゥナ。

「相手にとって不足なし、聖剣エクスカリバー!」

 戦闘モードに入る美琴。

「美琴……悪い……俺に任せてくれないか……」
「せ、先輩……?」


「……ケルベロス……行くぞ」

『グルルルアアア!!』

 巨体からは想像も出来ない俊敏さで距離を詰めると、カケルに体当たりを食らわせるケルベロス。

 凄まじい猛攻に、カケルは一歩も動けずにケルベロスの攻撃を受け続けるサンドバッグ状態だ。


『ち、ちょっと……なんで助けないの? カケルさんがやられちゃう!』 

 顔面蒼白で叫ぶフォルトゥナ。

「大丈夫……先輩はあの程度じゃ死なない。それに――――」
「駆はワザと攻撃を受けている……ように見える」


『ワザと? どうしてそんなことを?』

「っ!? 先輩が動いた! ってなんで……」
 
「駆……泣いてるの?」 


 ああ、見た瞬間に分かったさ。まずは体当たりをしてからのじゃれ方も変わってない。

 そうか……お前もこの世界に来ていたんだな……ケルベロス。

 嬉しいよ……どんな形でも構わないから、ずっとお前に逢いたかったんだ。お前に救われたから俺は今ここにいる。

 だからありがとうって伝えたかったんだ。

 でもさ、辛いよな。お前は魔獣でダンジョンに魂ごと縛り付けられている。

 ダンジョンボスとして、永遠に侵入者と戦い続けなければならないんだ。
 
 そんな仕打ちあるかよ……

 お前は優しくて勇気があって……俺のせいかな? 俺がケルベロスなんて名前つけたから……だからこんなことになっちまったのかよ。

 待ってろよ。俺が助けてやる。

 なるべく痛くないようにするからちょっとだけ我慢してくれ。

 ごめんな……こんな方法でしかお前を救えない俺を許してくれ。後でいっぱい遊んでやるから。美味しいごはん腹いっぱい食べさせてやるから。


『デスサイズ……無理言って悪いな』
『ふふっ、気にするな。拙者はそんな主殿が気に入っているのだから』

 
『……ソウルセイバー!』

 魂のみを狩り取る死神の絶技によって、ケルベロスは声を上げる事も無く絶命した。


 死神のキリハさんやミコトさんは痛みや苦しみもなく、命を奪うことが出来る。

 俺にもデスサイズの助けがあれば、近いことが出来ると思ったんだ。 


 ケルベロス……今度こそ死ぬまで一緒にいような。

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