異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

世界にはびこる闇


「むぅ〜、いつまで見つめあっているんです?」

 間に割り込んできた可愛いミヤビの頭を撫でる。

「ナイトさま、私にもお願いします」

 ノスタルジアの頭を撫でる。

「それじゃあ、陛下のところへ行こうか! きっと驚くぞ」

「はい、でも……腰が抜けて力が入らないのです……」

 それは俺のせいだな。ごめんなさい。

「大丈夫! そのためのお姫様抱っこだ」

「うわぁ……あの伝説の……」

 前から気になってたけど、この世界のお姫様抱っこどうなってるの!? しないの!? 簡単だよ!?

 瞳を輝かせるノスタルジアをお姫様抱っこする。

 ガリガリに痩せ細っていた身体もすっかり元通りになって、柔らかい感触と甘い匂いにクラクラしてくる。

「ミヤビもおいで、背中が空いているから」

 羨ましそうに見ていたミヤビが、嬉しそうに背中に飛び乗る。

「ふふっ、楽しいですね、ミヤビ姉様」
「ええ、楽しいですね、ノスタルジア」

 2人を乗せたカケルは、次の目的地へと出発するのであった。

(前にも言ったけど、俺は乗り物じゃないからね!?)


***


「おおっ……おお……ノスタルジア……よくぞ……よくぞ」

「はい、お父さま、ご心配おかけ致しました」 

 人目も気にせず号泣し、抱きしめあう2人。

 良かったな。ノスタルジア。

 さてと、俺は呪いについて調べないとな……


「陛下、封印された魔王について、何か資料は残っていないのですか?」

 何か見落としたヒントがあるかもしれないからな。

 だが――――

「すまないカケル殿、魔王に関しては、不思議なほど、何も残っていないのだ」

「お父さま、勇者学院やギルド本部なら、何か残っていませんか?」

 魔王を封印した勇者が作ったとされる勇者学院。そして冒険者ギルド本部なら、確かに何か残っていてもおかしくはない。

「おそらくは無駄だろう。お前を助ける方法を探すために、徹底的に調べたのだから」

 それはそうだろうな。

「もしかしたら、異世界文字で書かれた日記とかは可能性ありませんか?」
 
「勇者学院には異世界文字のエキスパートが揃っている。抜かりは無い」

 怖っ、うっかり変な事日記に残さないようにしないと……


 あれ……何かがおかしい?

 思考が誘導されているのか? 

 まさか……

「来い、デスサイズ!!」

 一時的で良い。

『斬れぬものを斬る神器デスサイズよ、呪いを断ち切れ!!!』

 立ち込めていた雲が晴れるような感覚。いずれまた元に戻るだろうが。

 そもそもおかしいと思いもしなかったのがおかしい。

 建国の英雄アルスの名はみな知っているのに、なぜ勇者の名前が出てこない? 

 嫌な予感がする。

「陛下、初代アルスさまと共に魔王を封印し、勇者学院を作った勇者の名は?」



「ゲン=シンカイ。伝説の初代勇者さまだ」


 頭を殴られたような衝撃が走る。吐き気が止まらない。

「う……ぐうう……」

「だ、大丈夫ですか、ナイトさま!?」

 しまった、ノスタルジアに心配をかけてしまった。

「なんでもない、大丈夫だよノスタルジア」



 そうかよ、やっぱりお前かよ。

 お前がいつから狂ったのか……あるいは元々狂っていたのか知らないが、俺には分かるよ。


 この呪い……絶対にお前のせいだってな!!!


 くそっ、邪神……この時はまだ勇者だった深海幻が関わっている以上、悔しいけど迂闊に手が出せなくなった。

 一度イリゼ様に相談した方が良いだろうな。


***


「カケル殿、先ほどは助けて頂きありがとうございました!」 

 すっかり元通りになった宰相のベルゼさんと条約締結に関する打ち合わせをしている。

 魔人帝国との多国間条約締結を実現させることが、今回の王都へ来た本来の理由だからな。


 陛下とノスタルジアには、邪神の件も含めて説明済みだ。

 実務的なことはすべて宰相に丸投げするとのことなので、首脳会談の日程も含めて調整をしている。


「しかし、歴史的な日になりますな。大陸の主要国の首脳が一堂に会するなど、聞いたことがございません」

 確かに、転移でもない限り不可能だろうな。

 でも、国同士の話でも結局は人だ。直接会ってこそ信頼関係が築けるし、親近感が湧く。

 ここまできたのだから、シルフィたちの母国ガーランドとエヴァの母国トラシルヴァニア、リリスの母国アトランティアにも声をかけた方が良いかもしれない。

 うん、そうしよう。どうせ挨拶に行く予定だったし。


「という訳で、三カ国追加で書類の作成お願いします。ベルゼさん」

「…………分かりました。もう何も言うまい……」

 呆れたような疲れたようなベルゼさんに同情しつつも細かい部分は丸投げする。

 しょうが無いよね? だって他の国はみんな復興で忙しいんだから。


***


「何から何まで申し訳ないです。カケル殿」

「何言ってるんだ。関わったからには最後まで責任を持つのが当たり前だろ?」

 ミヤビと一緒にやってきたのは病院だ。

 先日の人身売買組織一斉摘発の際に救助された人々の中でも、特に状態が悪い人たちが入院している。

 手足が無いのはまだ良い方で、完全に心が壊れてしまっている人もいる。

 正視できないほど酷い状態だった。神水があって本当に良かったよ。



「本当に残念なことですが、今回摘発した組織は氷山の一角のようです。連中は大陸全土に拠点を持っていて、わが国でもそうだったように、各地の有力者と結びついているのです。根絶は極めて困難ですね……」

 ミヤビが悔しそうに拳を握りしめる。

 残念ながら、思ったより根が深そうだ。

 だけど……運が無かったな。この世界には俺が居る。

 根こそぎ駆逐してやるから首を洗って待ってろよ。 

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