異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
その瞳に映る虹
『……まったく見てられないわね。カケルくん?』
目の前で微笑んでいるのは、間違いなくイリゼ様だ。
「イリゼ様、でも……どうして?」
直接イリゼ様が介入してくるなど邪神の因子の時ぐらい緊急……いやまてプリンを作れとかあったな。
『んふふ。ここは聖域だから、私もある程度自由が利くのよ。それより、アリエスがあんまり可哀想だから見てられなくなっちゃって……』
聖女様が可哀想? やはり俺が何かしてしまったのか……
『カケルくんも知っているとは思うけど、聖女は基本的に生涯独身を貫くのだけど……あ、勘違いしないでね? 私がそうしろって言ったわけじゃないから。例外は異世界人との結婚のみ。アリエスは今回のカケルくんとの出会いに賭けてるのよ』
「なるほど。じゃあもしかして美琴と会わなかったのって……」
『待ち望んでた勇者が女だったからがっくりきたんでしょうね……でも、仕方ないのよ、アリエスは100年もの長い期間、聖女として世界のために尽くしてきたんだから』
「100年休まずに聖女を続けてきたなんて想像も出来ないですね……』
いったいどれほどの重責を背負い続けてきたのだろうか。この世界の枠外から来た、ある意味無責任な異世界人とは違うのだ。
『私も反省しているのよ。アリエスがあまりに優秀だからつい甘えちゃってね』
通常、聖女の任期は10年ほどだという。いかにアリエスが苦労してきたかわかるというものだ。
「俺に出来ることがあれば、ぜひ彼女を助けてあげたいですね」
心からそう思う。先ほどまでの聖女様の姿を思うと切なくなってきた。
『カケルくんなら、そう言ってくれると思ってたわ。彼女、私が中途半端なことを言ったせいで、カケルくんが求婚しにきたと思っちゃってるのよね……という訳だからアリエスのことよろしくね!』
「えええ!? 別に構いませんけど、俺なんかでいいんですかね?」
もちろん全力で幸せにしようとは思うけれど、すでに婚約者だらけの俺でいいのか?
『大丈夫よ。アリエスったらカケルくんに一目ぼれしてるから』
「わかりました。アリエス様はとても魅力的な方ですから。でも次の聖女候補のソフィアも含めて、もう少し負担を減らしてやれないものですかね?」
『うーん、じゃあ神託出して聖女の人数増やすわね。3交代制なら少しは負担が減るでしょうから。あと生涯独身も一言文句言っておくわ』
3交代制の聖女っていうのはイメージ的にありがたみが微妙だけど、負担が減るのは確かだ。
それに生涯独身の戒律も、聖女の神聖性を高めるために神殿が決めた勝手なルールに過ぎないのだから、これを機に変わればいいと思う。
「ありがとうございます、イリゼ様。わざわざ来ていただいた上、わがまままで聞いて下さって」
『ふふっ、カケルくん、お礼を言うのは私の方よ。お詫びに後でいいものあげるから許してね』
もとよりイリゼ様のお願いを断るという選択肢は最初からありませんよ?
でも……いいものってなんだろう?
(……私のはじめてをあ・げ・る・わ)
「ぶふぉおおおお!?」
耳元でそうささやくイリゼ様の言葉にあやうく死にかけた。
『じゃあ、また後でね! カケルくん』
恥ずかしそうに去ってゆくイリゼ様を呆然と見送るしかない。
やばい、思考が馬鹿になっている。落ち着け、今は聖女様に集中するんだ。
(悠長なことを言っていられなくなったからね。ミコちんもここに来てるし、もたもたして手伝ってもらう羽目になるなんて絶対に無理だし)
もう後戻り出来ない。覚悟を決めるイリゼであった。
「それで……そろそろ本題に入っても構いませんよ? ここには私たちしかおりませんから」
あれ? イリゼ様少しだけ調整してくれたのか。有り難い。彼女にこれ以上辛い思いはさせたくなかったから。
「聖女様……いや、アリエス。俺のお嫁さんになってくれないか? 一緒に世界中を見てまわろう。これからは自分のために生きて欲しいんだ」
イリゼ様に言われたからじゃない。
その境遇に同情した訳でも無い。
彼女の生き様に、その姿に一目惚れしたのは俺の方だから。
アリエスは幸せになるべきだ。
だって誰よりも長く、誰よりも沢山、世界を、そして人々を幸せにしてきたんだから。
もし、俺にしかその役目が担えないというのなら、喜んで引き受けよう。
彼女のこれからの人生、百年分笑って欲しいから。
「あ、あああ……」
プロポーズされました。
それも本気の。
聖女じゃなくても分かります。
英雄殿が本当に私を想って仰られたことが。
なぜでしょうか。初めてお逢いしたのに、百年分抱きしめられたような気がするのは。
どうしてでしょうか。嬉しいのに涙が止まりません。
英雄殿は、私をアリエスと呼んで下さった。
皆、私を聖女と呼びます。親や兄弟でさえ。
百年前、聖女になった瞬間に、私はアリエスでは無くなったというのに。
でも貴方はアリエスと呼んで下さった。
聖女ではない私を見て下さるのですね。
もう長い間、泣くことなど忘れていました。
聖女である私が泣いたりする訳にはいきませんから。
ああ……その眼差しが温かいです。その全てを包み込むようなぬくもりに触れてみたいと心が叫んでいます。
「……英雄殿、返事をする前にひとつ伺ってもよろしいでしょうか?」
「……もちろん」
「なぜ……貴方まで泣いているのですか?」
「……泣いてなどいませんよ? これはきっと恵みの雨です。これからずっと綺麗な虹を見るための」
ふふっ、綺麗な虹とは私のことでしょうか? そういえば女神様のお名前も虹という意味があったのでしたね。
私を見つめる貴方の瞳に映る虹。
私も見ていたいです。その瞳に映る虹をずっと。
「英雄殿、私で良ければ喜んで。一緒に幸せになりましょうね!」
「ああ、約束する。一緒に世界一幸せになろうな!」
胸に飛び込むアリエスを、優しく包み込むように抱きしめるカケル。
その夜、世界中に星が降り、月はとても明るかったという。
星はまるで2人を祝福するかのように。月は心優しいアリエスを、見守るように照らし続けるのだった。
目の前で微笑んでいるのは、間違いなくイリゼ様だ。
「イリゼ様、でも……どうして?」
直接イリゼ様が介入してくるなど邪神の因子の時ぐらい緊急……いやまてプリンを作れとかあったな。
『んふふ。ここは聖域だから、私もある程度自由が利くのよ。それより、アリエスがあんまり可哀想だから見てられなくなっちゃって……』
聖女様が可哀想? やはり俺が何かしてしまったのか……
『カケルくんも知っているとは思うけど、聖女は基本的に生涯独身を貫くのだけど……あ、勘違いしないでね? 私がそうしろって言ったわけじゃないから。例外は異世界人との結婚のみ。アリエスは今回のカケルくんとの出会いに賭けてるのよ』
「なるほど。じゃあもしかして美琴と会わなかったのって……」
『待ち望んでた勇者が女だったからがっくりきたんでしょうね……でも、仕方ないのよ、アリエスは100年もの長い期間、聖女として世界のために尽くしてきたんだから』
「100年休まずに聖女を続けてきたなんて想像も出来ないですね……』
いったいどれほどの重責を背負い続けてきたのだろうか。この世界の枠外から来た、ある意味無責任な異世界人とは違うのだ。
『私も反省しているのよ。アリエスがあまりに優秀だからつい甘えちゃってね』
通常、聖女の任期は10年ほどだという。いかにアリエスが苦労してきたかわかるというものだ。
「俺に出来ることがあれば、ぜひ彼女を助けてあげたいですね」
心からそう思う。先ほどまでの聖女様の姿を思うと切なくなってきた。
『カケルくんなら、そう言ってくれると思ってたわ。彼女、私が中途半端なことを言ったせいで、カケルくんが求婚しにきたと思っちゃってるのよね……という訳だからアリエスのことよろしくね!』
「えええ!? 別に構いませんけど、俺なんかでいいんですかね?」
もちろん全力で幸せにしようとは思うけれど、すでに婚約者だらけの俺でいいのか?
『大丈夫よ。アリエスったらカケルくんに一目ぼれしてるから』
「わかりました。アリエス様はとても魅力的な方ですから。でも次の聖女候補のソフィアも含めて、もう少し負担を減らしてやれないものですかね?」
『うーん、じゃあ神託出して聖女の人数増やすわね。3交代制なら少しは負担が減るでしょうから。あと生涯独身も一言文句言っておくわ』
3交代制の聖女っていうのはイメージ的にありがたみが微妙だけど、負担が減るのは確かだ。
それに生涯独身の戒律も、聖女の神聖性を高めるために神殿が決めた勝手なルールに過ぎないのだから、これを機に変わればいいと思う。
「ありがとうございます、イリゼ様。わざわざ来ていただいた上、わがまままで聞いて下さって」
『ふふっ、カケルくん、お礼を言うのは私の方よ。お詫びに後でいいものあげるから許してね』
もとよりイリゼ様のお願いを断るという選択肢は最初からありませんよ?
でも……いいものってなんだろう?
(……私のはじめてをあ・げ・る・わ)
「ぶふぉおおおお!?」
耳元でそうささやくイリゼ様の言葉にあやうく死にかけた。
『じゃあ、また後でね! カケルくん』
恥ずかしそうに去ってゆくイリゼ様を呆然と見送るしかない。
やばい、思考が馬鹿になっている。落ち着け、今は聖女様に集中するんだ。
(悠長なことを言っていられなくなったからね。ミコちんもここに来てるし、もたもたして手伝ってもらう羽目になるなんて絶対に無理だし)
もう後戻り出来ない。覚悟を決めるイリゼであった。
「それで……そろそろ本題に入っても構いませんよ? ここには私たちしかおりませんから」
あれ? イリゼ様少しだけ調整してくれたのか。有り難い。彼女にこれ以上辛い思いはさせたくなかったから。
「聖女様……いや、アリエス。俺のお嫁さんになってくれないか? 一緒に世界中を見てまわろう。これからは自分のために生きて欲しいんだ」
イリゼ様に言われたからじゃない。
その境遇に同情した訳でも無い。
彼女の生き様に、その姿に一目惚れしたのは俺の方だから。
アリエスは幸せになるべきだ。
だって誰よりも長く、誰よりも沢山、世界を、そして人々を幸せにしてきたんだから。
もし、俺にしかその役目が担えないというのなら、喜んで引き受けよう。
彼女のこれからの人生、百年分笑って欲しいから。
「あ、あああ……」
プロポーズされました。
それも本気の。
聖女じゃなくても分かります。
英雄殿が本当に私を想って仰られたことが。
なぜでしょうか。初めてお逢いしたのに、百年分抱きしめられたような気がするのは。
どうしてでしょうか。嬉しいのに涙が止まりません。
英雄殿は、私をアリエスと呼んで下さった。
皆、私を聖女と呼びます。親や兄弟でさえ。
百年前、聖女になった瞬間に、私はアリエスでは無くなったというのに。
でも貴方はアリエスと呼んで下さった。
聖女ではない私を見て下さるのですね。
もう長い間、泣くことなど忘れていました。
聖女である私が泣いたりする訳にはいきませんから。
ああ……その眼差しが温かいです。その全てを包み込むようなぬくもりに触れてみたいと心が叫んでいます。
「……英雄殿、返事をする前にひとつ伺ってもよろしいでしょうか?」
「……もちろん」
「なぜ……貴方まで泣いているのですか?」
「……泣いてなどいませんよ? これはきっと恵みの雨です。これからずっと綺麗な虹を見るための」
ふふっ、綺麗な虹とは私のことでしょうか? そういえば女神様のお名前も虹という意味があったのでしたね。
私を見つめる貴方の瞳に映る虹。
私も見ていたいです。その瞳に映る虹をずっと。
「英雄殿、私で良ければ喜んで。一緒に幸せになりましょうね!」
「ああ、約束する。一緒に世界一幸せになろうな!」
胸に飛び込むアリエスを、優しく包み込むように抱きしめるカケル。
その夜、世界中に星が降り、月はとても明るかったという。
星はまるで2人を祝福するかのように。月は心優しいアリエスを、見守るように照らし続けるのだった。
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