異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

聖女様とドキドキの密会

「ところで王子様、突然訪ねて聖女様に会えますかね?」

 サクラが神殿焼きという、ぱっと見串団子に見える食べ物を頬ばりながらたずねてくる。

 ちなみに鑑定したら、この山に自生する神殿芋を使っているようだ。モチモチした食感で実に旨かったよ。

「美琴は聖女様と面識は無いのか?」
 
「無いよ! 私、ひたすら戦ってたし、しかもなんか会いたくないって拒否されたし!」

 可哀想になって美琴の頭を撫でる。こんな可愛い美琴に会いたくないとか意味不明だろう?

 そして同時にサクラの頭も撫でる。

 ふふっ、言われる前にやってこそだ。自分の成長を実感する瞬間だな。 

 2人とも気持ち良さそうに目を細めている。

「まあ、とりあえず行ってみよう。別に聖女様に会うのが目的じゃない。神殿の協力が得られれば良いんだからな」


 神殿の参拝は日が沈む前までだ。

 女神様の恵みの象徴である太陽が沈んだ夜は御利益が得られないとされているからで、朝は日の出と共に始まるのだ。

 本殿に並ぶ参拝の列は長く、日没までに中に入れるか怪しくなってきた。


「参ったな……明日出直した方が良いかな?」

「せっかく来たのですから、用向きだけでも伝えた方が良いと思いますよ」

 サクラの言う通り、駄目なら最悪アポだけでもとってから帰るか。

「私が勇者の名前を出して交渉してあげようか、先輩?」

「いや、気持ちは有り難いんだが、会いたくないって拒否されたんじゃなかったっけ!?」 

「あ……そうだった」

 ズーンとヘコむ美琴。すまん俺が全部悪い。


「あのー? もしかして、異世界の英雄様ですか?」

 突然、背後から神官から声をかけられた。

 なぜ分かった? って、そりゃ黒髪の人間が3人一緒にいたら目立つよな。

「はい、そうですけど」

 英雄ですかと言われて、はいそうですと答えるのもアレだが、今更だな。英雄と呼ばれてもおかしくないように頑張らないと。

「やはりそうでしたか!! 聖女様がお待ちです。こちらへどうぞ」

 聖女様すげえ!? 全部お見通しってことか?

 可愛い神官に案内されて、特別な入口から神殿に入る。

 大勢の参拝客から羨望のまなざしを浴びるのはじつに気持ちが良い! ネズミーランドのスルーパスを使った時のような優越感だ。行ったことないけど、行けなかったけど!

「先輩、これネズミーランドのスルーパスみたいだね!」

 おお同志よ、分かってくれるか!

 美琴とグッと握手する。

「むー、なんか悔しいです!」

 会話が分からずむくれるサクラを2人でよしよしと撫でる。ついでに可愛い神官ちゃんも撫でる。

「ふえっ!? あわわわ……」

 しまった!? またやってしまった。前言撤回! 全く成長していませんでした。

「王子様……」
「先輩……」

 2人のジト目が痛いが、ここは甘んじて受けよう。反省なくば成長無し!!


「こちらでお待ち下さい」

 顔を赤くして去ってゆく神官ちゃんに罪悪感を覚えながら待つこと5分。

「聖女様がお会いになります。申し訳ございませんが、英雄様お一人でお願いします」

「そんな……王子様をひとりで行かせたら聖女様が……」

 サクラ、人聞きの悪いことを言わないで!?

「やっぱり嫌われてるんだ……」

 美琴、そんなことない! みんなお前が大好きだから!!


 
 さっきとは違うクール系神官さんに案内されて神殿の奥へ向かう。


「ここから先はお一人でお願いします」

 どうやらこの先は神官ですら立ち入ることの出来ない聖域らしい。

「案内してくれてありがとう」

 頭を撫でそうになるのをぐっとこらえる。ふふっ、同じ過ちは繰り返さないよ。 

 クール系神官さんは少し頬を染めながら頭を下げ戻っていった。


 聖域に入ると、そこは完全に和風空間だった。

 少しだけ神界に行った時の雰囲気に似た空気感がある。

 障子しょうじふすま、まさに時代劇に出てきそうな雰囲気で、聖域というより、大奥っていう感じだね。

 そして、土足厳禁の部屋に入ると、座布団のようなものに綺麗に正座をして俺を待つ、幻想的な雰囲気の美少女がそこには居た。

 よわい107歳の美少女とはこれいかに。だが、リリスもそうだが、この世界の年齢はただの数字に過ぎないことが実際多いのだから仕方が無い。

 妖精族ははじめて見るな……。その光の当たり方によって虹色の輝きを放つ髪色はイリゼ様を少しだけ彷彿とさせる。

 聖女様は俺を見た瞬間、その宵闇よいやみ色の瞳を少しだけ見開いてから、優雅に微笑み言葉を発した。


「お待ちしておりました英雄殿。さあ、何なりと願いを申し付けください。どんなことでも誠心誠意応えてみせます」

 ほんのりと頬を紅潮させる聖女様。

 なんか想像していた展開とは違うけれど、聖女様が協力的なのは願ってもないことだ。

 俺は、ここに来た経緯を説明し、スキル保持者の捜索への助力を聖女様に要請する。


「はい、お話はわかりました。喜んで協力させていただきます」

 満面の笑顔で即答する聖女様。さすが素晴らしい人格者だ。

「それで……そろそろ本題に入っても構いませんよ? ここには私たちしかおりませんから」

 そう言ってもじもじし始める聖女様。

 え? 本題ってなんだっけ? まずい……思い当たるふしが全くない。

「……どうしました? そんなに言い辛いのでしょうか?」

 少し、しょんぼりする聖女様。いかん、何かないか?

「そ、そういえば、聖女様はなぜ勇者と会うのを拒否したんですか?」

「…………」

 しまった!? 聖女様の雰囲気がこれ以上ないほど悪くなっている。助けて女神様!?


『……まったく見てられないわね。カケルくん?』

 そういって微笑んだのは、聖女様の姿をしたイリゼ様だった。
 

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