異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
追憶 不知火美琴
「ここがクリスタルパレスか………」
その日カケルは帝国の侵攻作戦を終わらせるため、クリスタリアの首都クリスタルパレスに降り立った。
皇帝ギャラクティカの書状と皇太子ユリウスを伴って。
クリスタルパレスにはパーピィクイーンのツバサ率いる先発隊がすでに到着していたので、カケルたちは転移してくることが出来た。
『おお、これは美しい街だな。破壊されなくて幸いであった』
ユリウスの言う通り、クリスタルパレスは都市全体が名前の通りクリスタルで造られた幻想的で美しい街だ。
クリスタリアは多くの都市や国家に囲まれているため、国土が魔物の領域に接しておらず、また中立商業国家ゆえに元々常備軍を持っていない。
そのためクリスタルパレスの人々が抵抗せずにすぐに避難したこと、先遣隊が少数であったこともあり大規模な戦闘が起こらなかったことで、被害は最小限に留まっていたのだ。
さらに、クリスタルパレスに派遣された魔人部隊のリーダーが、コルティスだったことも幸運であった。
彼の上官イレブンは都市の完全破壊と殺戮を命じていたのだが、芸術を愛する彼に美しいクリスタルパレスを破壊することなど出来なかったのだ。
コルティスが意図的に進軍を遅らせて人々が避難する時間を作り、占領後の破壊行為を禁じたおかげでクリスタルパレスは守られたといえる。
『こ、これはユリウス殿下!? 部隊長のコルティスです。ようこそおいでくださいました』
突然の皇太子の訪問に驚きながらも、動揺を見せず対応するコルティス。
『コルティス良くやった。お前の判断のおかげで、美しい都市を守ることが出来たのだ』
『も、勿体ないお言葉……』
命令に背いた以上、厳罰も覚悟していたコルティスは静かに頬を濡らした。
『侵攻作戦は中止となった。魔大陸諸国とは国交を結び交易を進めてゆくつもりだ。戦いは終わった。皆もご苦労だったな』
先遣部隊全員の前で皇帝陛下の勅書を見せるユリウス。
色々調べてわかったのだが、邪神の因子に冒されたものは、周囲の人間の精神にも影響を与える。
単に邪悪になると言うより、元々の人間性が大きく関係するようで、自身の欲望が肥大化してゆき、本能に忠実になるようなのだ。
先遣隊は、ほぼ全員が邪神の因子の影響を受けていたが、本体の因子が消滅したことでその影響は無視できるレベルまで下がって来ていたのは朗報だった。
その後、先遣隊を転移で帝国へと連れ帰り、また別の拠点都市を回る。
転移が無ければ、数カ月はかかっただろうが、わずか数時間で終わらせることが出来たのだからありがたい。
戦争で犠牲が出るのは仕方が無い部分もあるけれど、戦いが終わった以上、双方無駄な犠牲はひとりも出したくないからな。
すべての魔人たちを帝国へと送り届けてから、一旦クリスタルパレスに戻った。
明日のスタンピードに備えて、今日中にはメンバーを連れてバドルに行かなければならないので、これ以上は後回しにせざるを得ない。
少なくとも大陸における魔人の脅威は無くなったのだからとりあえずは十分だろう。
魔人たちが居なくなり無人となったクリスタリアの王都クリスタルパレス。
邪魔をする音も、胸を締め付けるような怨念も渦巻いたりしていない。
クリスタルのように無色透明な風景と心象が、たまらなく心地良く落ち着くのだ。
(瞬間記憶っていうのも難儀なものだな……)
人混みは嫌いではないが、膨大な情報記憶が絶えず流れ込んでくるため、慣れた今でもやはり疲れるし、あまり得意ではない。
クリスタルは半永久的に変化しないと云われている。
変化することのない無人都市で、カケルは久しぶりの開放感を楽しんでいた。
大きな公園を見つけて芝生のような緑の絨毯に大の字で寝ころぶ。
(そういえば……あの時もこんな風に芝生に寝転がっていたっけ……)
忘れもしない俺が5歳の時の記憶。
しばし記憶の海に潜ってゆく。
***
「イテッ!?」
芝生で大の字に寝転がっていたら、飛んできたボールが頭に当たった。
「ご、ごめんね〜、痛かった?」
顔を上げると同じ年ぐらいの女の子が申し訳なさそうな顔で立っていた。
「ううん、ちょっとびっくりしただけで痛くは無いよ」
「そっか、良かった」
ほっとしたように笑う女の子につられて頬が緩んだ。
「ねぇ、そんなところで何してたの?」
見たこともない子だし、初めて会ったのに、なぜか話してしまった。誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。
「うちのケルベロスが死んじゃったんだ。あ、犬の名前だよ」
「ずいぶん強そうな名前ね」
「うん、すごく強くて格好良いんだ。ぼくが生まれてからずっと守ってくれてたんだよ。でも……ぼくを車から守って死んじゃったんだ」
「……そうなんだ。とても勇敢だったんだね」
「うん、それでね、お母さんが生き物は死んだらお空に行くって教えてくれたから、お空からいつも見守ってくれてるんだって」
「それでお空を見ていたの?」
「うん、落ち込んだ時とか、ケルベロスと話したい時はこうやってるんだ」
「……そっか」
女の子が何やら納得した様子で隣で同じように寝転がる。
そこからは、お互いに一言も喋らずにただ空を見ていた。
「じゃあ、もう行かないと。ありがとう!」
しばらく一緒に寝転がっていた女の子が急に立ち上がって走り去って行った。
(お礼を言われるようなことしてないんだけどな?)
その時は知らなかったが、その子は両親を事故で亡くしたばかりだったらしい。
親戚に引き取られて行ったのだと母から聞いた。
「不知火家は相続で揉めていたらしいから、警察も事故と事件の両方で捜査しているらしいわよ? 小さい女の子、美琴ちゃんだっけ? ひとりだけ残されて可哀想に……」
両親がそんな話をしていたのを憶えている。
その日カケルは帝国の侵攻作戦を終わらせるため、クリスタリアの首都クリスタルパレスに降り立った。
皇帝ギャラクティカの書状と皇太子ユリウスを伴って。
クリスタルパレスにはパーピィクイーンのツバサ率いる先発隊がすでに到着していたので、カケルたちは転移してくることが出来た。
『おお、これは美しい街だな。破壊されなくて幸いであった』
ユリウスの言う通り、クリスタルパレスは都市全体が名前の通りクリスタルで造られた幻想的で美しい街だ。
クリスタリアは多くの都市や国家に囲まれているため、国土が魔物の領域に接しておらず、また中立商業国家ゆえに元々常備軍を持っていない。
そのためクリスタルパレスの人々が抵抗せずにすぐに避難したこと、先遣隊が少数であったこともあり大規模な戦闘が起こらなかったことで、被害は最小限に留まっていたのだ。
さらに、クリスタルパレスに派遣された魔人部隊のリーダーが、コルティスだったことも幸運であった。
彼の上官イレブンは都市の完全破壊と殺戮を命じていたのだが、芸術を愛する彼に美しいクリスタルパレスを破壊することなど出来なかったのだ。
コルティスが意図的に進軍を遅らせて人々が避難する時間を作り、占領後の破壊行為を禁じたおかげでクリスタルパレスは守られたといえる。
『こ、これはユリウス殿下!? 部隊長のコルティスです。ようこそおいでくださいました』
突然の皇太子の訪問に驚きながらも、動揺を見せず対応するコルティス。
『コルティス良くやった。お前の判断のおかげで、美しい都市を守ることが出来たのだ』
『も、勿体ないお言葉……』
命令に背いた以上、厳罰も覚悟していたコルティスは静かに頬を濡らした。
『侵攻作戦は中止となった。魔大陸諸国とは国交を結び交易を進めてゆくつもりだ。戦いは終わった。皆もご苦労だったな』
先遣部隊全員の前で皇帝陛下の勅書を見せるユリウス。
色々調べてわかったのだが、邪神の因子に冒されたものは、周囲の人間の精神にも影響を与える。
単に邪悪になると言うより、元々の人間性が大きく関係するようで、自身の欲望が肥大化してゆき、本能に忠実になるようなのだ。
先遣隊は、ほぼ全員が邪神の因子の影響を受けていたが、本体の因子が消滅したことでその影響は無視できるレベルまで下がって来ていたのは朗報だった。
その後、先遣隊を転移で帝国へと連れ帰り、また別の拠点都市を回る。
転移が無ければ、数カ月はかかっただろうが、わずか数時間で終わらせることが出来たのだからありがたい。
戦争で犠牲が出るのは仕方が無い部分もあるけれど、戦いが終わった以上、双方無駄な犠牲はひとりも出したくないからな。
すべての魔人たちを帝国へと送り届けてから、一旦クリスタルパレスに戻った。
明日のスタンピードに備えて、今日中にはメンバーを連れてバドルに行かなければならないので、これ以上は後回しにせざるを得ない。
少なくとも大陸における魔人の脅威は無くなったのだからとりあえずは十分だろう。
魔人たちが居なくなり無人となったクリスタリアの王都クリスタルパレス。
邪魔をする音も、胸を締め付けるような怨念も渦巻いたりしていない。
クリスタルのように無色透明な風景と心象が、たまらなく心地良く落ち着くのだ。
(瞬間記憶っていうのも難儀なものだな……)
人混みは嫌いではないが、膨大な情報記憶が絶えず流れ込んでくるため、慣れた今でもやはり疲れるし、あまり得意ではない。
クリスタルは半永久的に変化しないと云われている。
変化することのない無人都市で、カケルは久しぶりの開放感を楽しんでいた。
大きな公園を見つけて芝生のような緑の絨毯に大の字で寝ころぶ。
(そういえば……あの時もこんな風に芝生に寝転がっていたっけ……)
忘れもしない俺が5歳の時の記憶。
しばし記憶の海に潜ってゆく。
***
「イテッ!?」
芝生で大の字に寝転がっていたら、飛んできたボールが頭に当たった。
「ご、ごめんね〜、痛かった?」
顔を上げると同じ年ぐらいの女の子が申し訳なさそうな顔で立っていた。
「ううん、ちょっとびっくりしただけで痛くは無いよ」
「そっか、良かった」
ほっとしたように笑う女の子につられて頬が緩んだ。
「ねぇ、そんなところで何してたの?」
見たこともない子だし、初めて会ったのに、なぜか話してしまった。誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。
「うちのケルベロスが死んじゃったんだ。あ、犬の名前だよ」
「ずいぶん強そうな名前ね」
「うん、すごく強くて格好良いんだ。ぼくが生まれてからずっと守ってくれてたんだよ。でも……ぼくを車から守って死んじゃったんだ」
「……そうなんだ。とても勇敢だったんだね」
「うん、それでね、お母さんが生き物は死んだらお空に行くって教えてくれたから、お空からいつも見守ってくれてるんだって」
「それでお空を見ていたの?」
「うん、落ち込んだ時とか、ケルベロスと話したい時はこうやってるんだ」
「……そっか」
女の子が何やら納得した様子で隣で同じように寝転がる。
そこからは、お互いに一言も喋らずにただ空を見ていた。
「じゃあ、もう行かないと。ありがとう!」
しばらく一緒に寝転がっていた女の子が急に立ち上がって走り去って行った。
(お礼を言われるようなことしてないんだけどな?)
その時は知らなかったが、その子は両親を事故で亡くしたばかりだったらしい。
親戚に引き取られて行ったのだと母から聞いた。
「不知火家は相続で揉めていたらしいから、警察も事故と事件の両方で捜査しているらしいわよ? 小さい女の子、美琴ちゃんだっけ? ひとりだけ残されて可哀想に……」
両親がそんな話をしていたのを憶えている。
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