異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

死神召喚

 イリゼ様と別れて魔人帝国に戻る――――前に、是非とも試しておきたいことがあった。

 それは――――


【 死神召喚 】

 イリゼ様に強化してもらったデスサイズが一気にレベル10になっていたのだ。

 新たなに使えるようになったスキルの中で輝きを放っているのがこれ。

 どう考えても、これはアレだよね。

 イリゼ様ありがとうございます!!!


 本当は落ち着いてからと思ったけど、駄目だ。我慢なんて出来る訳ないよ。

 興奮に胸踊らせながらスキルを発動する。

 愛しいあの人を想いながら。


『我カケルの名において命ず、創造神イリゼの加護により神地の理を覆し、今ここに降臨せよ。常世とこよ現世うつしよの案内人、生と死を司る番人。いでよ死神召喚!!!!』

「うおっ!?」

 通常の召喚とは比較にならないほどの力の奔流。巨大なゲートが出現し、デスサイズを携えた死神が姿を現した。ローブから垣間見える輝くような銀髪に赤く光る瞳。間違えようも無い。


『……こ、ここは? キャァ!?』

「ミコトさん!!!! 逢いたかった。逢いたかったよ!!!」

 愛しい死神を力いっぱい抱きしめる。

 手を離したらきっと夢のように消えてしまうと思ったから。


『ち、ちょっと、違う――――ん、んむむ〜』

 夢中で再会のキスをする。

 そう、この感じ。我が家に帰ってきたような――――あれ? なんか違うような?

「あ、あのー、どちら様でしょうか?」

『……………そのセリフ、そのまんまお返しするわよ!!』

 やっべぇ……めっちゃ怒ってますね……

「ごめんなさい。死神違いでした。てっきりミコトさんが出てくると思い込んでました……」

『ミコトさん? ってまさか、ミコト先輩!? ええ……確かによく似てるって言われるけど……私はキリハよ、間違えないでねっ!』

 なぜか嬉しそうなキリハさん。



 休憩していたら、突然召喚されてびっくりしたわ……しかもイリゼ様の専用術式による召喚。

 どんな緊急事態かと思って緊張していたら、いきなり抱きしめられて、き、キスされてしまった…………初めてだったのに。もうお嫁にいけないじゃない……

 す、凄かったけどね! 身も心も溶けるかと思ったけどね!!

 しかも憧れのミコト先輩に間違われるなんて……そんなに似ているかしら、ふふーん♪ 


 
『……それで? 誰の命を狩りとれば良いの?』

「……へ?」

『へ? じゃないわよ! 貴方、そんなことも知らずに召喚したの? 居ないなら貴方の命を貰うけど……』

 氷点下の瞳でデスサイズを振りかざす死神キリハさん。

「いやいやいや、ちょっと待って下さい。えーと、あ、これでお願いします」

『分かったわ。では……その蟻の命を――――ってふざけないでっ!? 何処の世界に蟻を倒すために最強のカードを切る馬鹿がいるのよ〜!?』

「……ここにいますけど」

『オーバーキルも限度があるわよ! デスサイズが錆びついたらどうするのよ!! それに蟻だって一生懸命生きているのよ? 可哀想じゃない!』

 心底呆れた様子でまくしたてるキリハさん。
 

 確かにそうだ……俺はたかが蟻だと思ってしまったが、小さくても同じ命じゃないか。

 俺の命と天秤にかけて、蟻の命なら大したこと無いと無意識に思ってたんだ。

 ははっ、なんだ……俺も魔人もやっていることは同じ……同類だな。

 イリゼ様が言っていたように、だから俺は魔王の適性が高いんだろう。危ないところだった。



「すいませんでした。殺されるべきクズは俺の方でした。キリハさんにも迷惑かけてしまいましたし……」

 土下座して謝罪する。

『え? い、いや、そこまでは言ってないから!? ほ、ほら、魔物とか一緒に探してあげるから……全く……調子狂うわね』


 結局、ターゲットが見つかるまでついて来てくれるそうだ。本当に律義な女性だな。



『ふーん……ミコト先輩の伴侶にねえ……』

 
 聞けばミコト先輩の伴侶になるためにこの世界で力と魂を集めて神になろうとしているらしい。

 そういえば、そんな人間がいるとかなんとか聞いたような……

 でも、そんなことはいいのよ。珍しいけど例が無いわけじゃないし。

 問題は、このカケルとかいう男から感じる加護の強さ。

 当然ミコト先輩の加護は分かるとして……イリゼ様の加護の強さが異常なんですけどっ!?

 これってもはや加護じゃなくて過保護なんですけどっ!?

 この強度じゃ多分、私の攻撃も通じないわね……何者なのよこの男?

 少なくともイリゼ様のお気に入り……いえ、ひょっとすると恋人? まさかね。


 とりあえず、触らぬ神にたたりなしとキリハは判断した。


『えっ、何これ食べて良いの? ……食べ物で釣ろうとしたってダメなんだからねっ!』

「そんなこと考えてませんよ。俺の手作りプリンです。お詫びと感謝の気持ちです。ミコトさんやイリゼ様も大好きなんですよ、これ」

 しばらくジト目で警戒していたキリハさんだったが、恐る恐るプリンを口にした。

『!!!!!? な、何これ……美味しい』

 あまりの美味しさにしばし呆然とするキリハさん。

「お口に合ったようで良かったです。あ、あそこにオークがいますね。ターゲットはあれでお願いします」

『え? あ、ああ、そうだったわね。えいっ!』

 プリンを食べながらオークを瞬殺するキリハさん。やべえ……攻撃がまったく見えなかった。



「お忙しいところつまらない用事で呼んでしまってすみませんでした。今後は使わないようにしますので」

 聞けば、死神召喚で呼べるのは、その場所の担当死神だけだという。つまり、ミコトさんは呼べないのだ。ならば、もう使うことは無いだろうな。本当に残念だけど。

『へ? だ、駄目よ、た、たまには使いなさいよね。またプリン食べたいし……』

「いいんですか? じゃあ、またいつか使わせてもらいますね」

『……いつかって何時よ?』

「そうですね……勝てそうもない敵が現れたらですかね」

『そんなの何時になるかわからないじゃない!! そうね……食後のデザートの時間に呼びなさい』

「え……それって毎日ですか?」

『何よ! 私に逢うのが嫌なの? 特別にミコト先輩の真似してあげてもいいわよ?』

「……呼ばせていただきます」

『……なんか素直に喜べないけど、まあいいわ。じゃあね! また食後のデザートタイムに逢いましょう!!』


 闇に溶けるように消えていったキリハさん。

 よくわからないけど、どんな真似してもらおうかな。

 カケルの過激なものまね要求にキリハが悲鳴をあげることになることを、新人死神はまだ知らない。  

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