異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

邪神の因子

『これはね、カケルくん……邪神の因子よ』

「じ、邪神の因子?」

 なんだその物騒でヤバそうなものは。

『私が送り込んだ初代勇者、深海幻という男、カケルくんも知っているでしょ?』

 黙って頷く。

 深海幻といえば、教科書に出てくるほどの有名な作家だ。生前は盗作疑惑で全く評価されずに自殺、死後疑惑が晴れて再評価された人物だと記憶している。

『幻は、吸収という規格外のユニークスキルを持っていて、あっという間に最強に登り詰めたわ。最後は魔王すら吸収して名実ともに世界最強の存在になった』

 吸収か……相手の力を全て吸収してしまうのであれば、それはそうだろうな。

『最終的に幻は神になる資格を得たけど、彼は禁忌を犯してしまったの』

「禁忌を……」


『……天使を吸収してしまったのよ』

「は? 天使を吸収するなんて何考えててるんですか?」

『もっと強く成りたかったんでしょうね。その結果、彼は神になる資格を剥奪されたけど、ある意味で神以上の力を得てしまった』

「それが……邪神ですか」

『そうよ。厄介なことに、幻はこの世界の奥深くに別世界を創り出し、そこに閉じこもってしまった』

「深海幻はイリゼ様でも勝てないんですか?」

『ふふっ、まさか! カケルくんとイチャイチャしながらでも髪の毛一本で瞬殺出来るわ』

 うわあ……さすが創造神、イリゼ様怖え!?

「じゃあなんで放置しているんですか?」

『アイツは神が自分の世界に直接干渉出来ないっていうルールを逆手に取ったのよ。つまり、私の世界を人質にとったようなものね……』

「なるほど、つまり深海幻を引きずり出すには……」

『そう……一度この世界を壊さなければならない。』

 くそっ、心優しいイリゼ様がそんなこと出来ないって分かっててやりやがったな。

『ふふっ、ありがとうカケルくん。そうね……私はこの世界全てを愛しているの。でも世界を守る為に世界を苦しめ続けてもいるわ……駄目な女神なのよ……』

 悲しそうに俯くイリゼ様。そんなことないって言ってあげたいけど……苦しいな。


「討伐隊を送り込むとか何とかならないんですか?」

『中途半端なものを送り込んでも、幻に吸収されてしまい、更に強くしてしまうし難しいわね。天使では吸収されてしまうし、神にスキルは効かないけど、地上に送れば弱体化してしまう。世界が終わるまで悪さをしないように監視を続けていくしかないわ。一応希望はあるけどね』

「希望……あ、もしかして俺を呼んだのって深海幻を倒すために?」

 イリゼ様にこんな顔させる奴は許せない。出来れば俺の手で……

『残念だけど違うわ。呼んだのは邪神の因子を取り除くためと絶対に幻と戦わないように伝えるためよ』

「俺では勝てないと?」

『はっきり言うと無理ね。相性が悪すぎる。カケルくんの瞬間記憶では幻のユニークスキルは習得出来ないでしょ? 相手は下級神以上の力を持っている。少なくとも地上では。万一対峙するような場合は、必ずありすを傍に置きなさい。吸収をあの子のスキルでキャンセルできるから』

 なるほど、吸収のスキルもやっぱりユニークスキルは取り込めないんだな。

「強奪のスキル持ちとかいないんですか?」

『強奪と吸収は互いに効果を打ち消し合ってしまうのよ』

 駄目か……

『でもね、ひとりだけ通用しそうなスキル持ちがいるのよ――――っていうスキル』

「な、そんなスキルがあるんですね」

『だから、もしそのスキル持ちに出会うことがあったら協力してあげてね。弱いから』

「わかりました。でも、邪神の因子なんて何処で取り付いたんですかね?」

『魔王化したフォースを倒した時ね。幻の奴、自分の世界にこもる時に因子をばら撒いたのよ。因子は強いものに寄生して成長し、最後は宿主を取り込んで幻の元へ帰る。上手くやったものね』

「げっ、それじゃあ、宿主を倒すとまた因子が?」

『そうよ、だからカケルくんには、邪神の因子が見えるように、そして倒せるように力を与えます……ってなんでそんなに落ち込んでいるのよ!?』

 明らかに凹んでいるカケルに動揺するイリゼ。心の中読めるはずなのにポンコツ化しているので気付かない。

「いえ、落ち込んでいるというか、呼ばれたのもさっきまでのやり取りも全部そのためだったんだと思ったらちょっと悲しくなっただけです」

 そりゃそうだよな。イリゼ様はすべての存在を平等に愛する女神様だ。

 俺に逢いたいから呼ばれたなんて勝手に思ってしまっただけだ。


『な、なななな、違うから!? えっと、全部ついでだから!? 逢いたかったのは本当だからね!!』

「大丈夫ですよ、気を遣っていただかなくても。イリゼ様とこうやって逢えるだけで幸せなんですから」


『し、仕方ないわね……ほら、この指輪を付けていれば邪神の因子を見ることが出来るわ。指を出しなさい』

 イリゼ様に指を差しだす。


「え? ちょっとイリゼ様? 何してるんですかああああ!?」

 指輪を口に含むんだまま、俺の指を咥えるイリゼ様。艶めかしい舌の動きと温かさがものすごくエロい。

『ん……これで良し』

 いやいやいや、全然良くないんですけど!? 確かに指輪ははまってますけど。

 自分でも顔が真っ赤になっているのがわかる。

「あ、あの……」

『……もうっ、こんなことするのカケルくんだけなんだからね!!』

 イリゼ様もゆでダコ状態ですね。
   
 そんなに恥ずかしいんだったらやらなきゃいいのに……でもありがとうございます。


『それから、因子を斬れるようにするから、ちょっとデスサイズ借りるわよ……はいOK。ってなんで残念そうな顔してるのよ!!』

 いや……もしかしたらまた? って期待しちゃったんですよ。すいません。

『もう……欲張りさんね。ほら、10秒だけ私を好きにしていいわよ』

 マジッすか!? イリゼ様マジ女神。



 あれ……もう10秒過ぎてるんだけどいいのかな?


(ふふっ、カケルくんったらまるで獣ね。思ったより時間かかっちゃったけれど、隅々まで私の加護が行き渡ったわ。これなら幻もカケルくんに干渉できないし安心ね)

 えっ? 神がえこひいきはダメなんじゃないかって? 

 大丈夫。自分の伴侶を心配するのは人も神も同じだから。

 
 だからこれはただのおまじないなの……効果は100%だけどね。   

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