異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

商業ギルドのミレイヌ

「レオン隊長、なんか平和過ぎませんか?」

 エスペランサを出発したプリメーラ騎士団の副隊長エスタはあまりの暇さにやや拍子抜けしていた。

「エスタ、何を言っているんだ。何も起こらない方が良いに決まっているだろう。変なフラグを立てるな!」

 確かにエスタの言う通り、エスペランサ砦を出発してから一度も魔物と遭遇していない。

 時々様子を見に飛来するカケル殿の召喚獣ハーピィくらいだ。

 10メートル進むのにも苦労していたのが、遠い昔のように感じてしまうな。


「隊長はサウスウエストレア、じゃなかった、セレスティーナへは行ったことあるんですか?」

「ああ……何度か護衛の任務でな。知り合いもいたが……おそらく生きてはいないだろうな。だが、到着したら大変だぞ! 街内の清掃、瓦礫の撤去、城壁の修復……やるべきことは山ほどある」

「うわあ……嫌なこと思い出させないで下さいよ! 今だけは現実逃避させて下さい!」

「現実逃避するのは構わんが、危険地帯を通過していることを忘れるなよ?」


 実際には全てカケルが終わらせてしまったので、現実逃避する必要もないのだが、彼らがそれを知るのは、セレスティーナに到着した後のことである。


***


 一方でカケルは……

「ゴメンな、スズカゼ。怖い思いさせて……」

 ユスティティアに殺されかけたハーピィ、スズカゼを慰めていた。

 殺されても復活するとはいえ、痛みも感じるし、記憶も残るのだ。

 主としてケアは必要だろう。


『ぐすん……怖かったよ〜王様。優しくぎゅってして下さい……』

 スズカゼのターコイズブルーの髪を撫で、優しく抱きしめる。

「ああ……それでスズカゼの傷が癒えるなら、いくらでも抱いてやる」

『ふわぁ……嬉しいです! お、王様? 私に……ご褒美……いただけますか?』

 潤んだターコイズブルーの瞳を閉じるスズカゼ。

「スズカゼ……ご苦労さま、お前のおかげでユスティティアたちを見つけることが出来たんだ。ありがとう」

 労りと感謝の気持ちを込めて優しいご褒美のキスをする。

 スズカゼの心の傷が少しでも和らぐように。


『王様……王様……不思議……力が湧いてきました……』

 最近わかったのだが、キスをするとハーピィがパワーアップするのだ。我ながら実に素晴らしいスキルだと思う。

 もちろん、ハーピィたちにしかしない。ぎりぎりラビは行けなくもないが、必然性を感じない。

『王様、ここが痛いです……』 

 スズカゼが慎ましい胸の谷間を指差す。

 なるほど、おそらくユスティティアのサンダーボルトがこの辺りを貫いたのだろう。可哀想に。

「スズカゼ、今治してやるからな」 

 神水で手をしっかり濡らし、スズカゼの程よい谷間に手を侵入させる。

 直接神水をかければなんて言ってはいけない。これは治療なのだから、気持ちが大事なのだ。

 心を込めて念入りに、万遍なく神水を塗り込んでゆく。

 神水の効果が出てきたのだろう。スズカゼの身体は紅く染まり、呼吸も熱く荒くなってゆく。


『お、王様、私、もう――――』


『……そこまでだスズカゼ、行くぞ!』
『そ、そんな〜!?』 


 颯爽と現れたツバサに連行されるスズカゼ。

 うん、元気になったみたいで良かった。

 余計な邪魔が入ったとか思ってないよ。


***


「……貴方がカケル殿ですな、いや、ワタノハラ子爵とお呼びした方が良いでしょうか?」

「カケルとお呼び下さい。あくまで冒険者ですので」

 俺は今、プリメーラの商業ギルドマスターと面会している。

 セレスティーナに移住・出店をしてくれる人を募集するためだ。できれば商業ギルドの支店も開設してくれれば最高なんだけど。

 商業ギルドマスターのモウカルさんは、立派な白ひげを蓄えたサンタクロースみたいな人だ。

 モウカルさんにセレスティーナの状況とこちらの要望を説明してゆく。


「……なるほど、もうそんなに復旧が進んでいるのですな。分かりました、商業ギルドもセレスティーナに支店を出します。いえ、ぜひともお願いします」

 さすがは商業ギルドマスター。簡単な説明だけでこちらの意図を理解してくれた。

「では早速スタッフを派遣しましょう。ミレイヌこちらへ!」

 ギルドマスターに呼ばれてやって来たのは、黒猫の獣人女性ミレイヌさん。

 イヌなのにネコなんだと思ったが、決して表には出さない。

 眼鏡をかけた知的な雰囲気の美人さんだ。

「はじめまして、サブギルドマスターのミレイヌです」

 えっ、こんなに若いのにサブギルドマスターなのか?

「ハハハッ、ミレイヌは若いが優秀な人材だ。きっとセレスティーナで活躍してくれるだろう」

 何事も最初が肝心。さすがギルドマスター、惜しみなくエースを投入するとは。

 それだけセレスティーナに可能性を感じているということだから有り難いと思う。

「ミレイヌさん、はじめまして。セレスティーナの領主カケルです。宜しくお願いします」


(こ、この人が有名な猛獣使いカケルね……気を付けないと私みたいなか弱い猫科ではあっという間に手懐けられてしまうわ。適切な距離を保ってなるべく接触しないようにしないと)

「カケル様、最初に申し上げておきますが、私の半径1メートル以内に接近しないようにお願いします!!」

「え……それは困ったな。セレスティーナへ転移するためには、しっかり接触しないとダメなんですよ。では、ミレイヌさんは後から馬車で来ますか?」

(くっ、なんと悪辣な……こちらの手の内などお見通しということですか……外堀はすでに埋められていたと。ふっ、なかなかやりますね!)

「わかりました。業務上やむを得ないと判断しますので、それは許可します」

 眼鏡をくいっと掛け直すミレイヌさん。きっと潔癖な人なんだろうな。仕方ないとはいえ、なんか申し訳ない気分だ。

「それから、もう1点、こちらはプリメーラも関係してくるんですが、異世界の甘味を街で広めたいと思っていまして、ぜひ相談できれば―――」

「か、甘味ですって?」

 うおっ、めっちゃミレイヌさんが喰いついてきた。

(まさか……この男、私が大の甘党だということを知って……ということは、最初から私狙い? ど、どうしましょう、いやちょっと格好良いなとは思うけど……いいえ、私はそんなチョロイ女じゃないのよ!)

「いいでしょう……プリメーラで一番と言われる私の舌を唸らせることが出来たら考えてあげるわ」

 
 ……なんで上から目線なのかは謎だが、まずは食べてもらった方がいいよな。   



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