異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
サウスレア
『王様、見つけました! 人がいる街を見つけました!』
調査に出ているハーピィから念話が入る。
「良くやった! ソヨカゼ、いま、どの辺りだ?」
調査に出す前に、すべてのハーピィには俺の持つ地図情報を渡してある。
実に70人以上のハーピィに情報を渡すのだから、とても嬉しい――いや、大変な仕事だった。ちなみに、全員唇――いや何でもないです。
『アストレアの南部、サウスレアだと思われます、王様』
「サウスレアか……たしかサクラの実家だったよな」
サウスレアは、サクラの父、オルレアン伯爵領の領都だ。
『……状況はあまり良くありません。城壁は無事ですが、おそらく食糧や物品が不足していますね』
「わかった、後でそちらへ向かう。街が危ない時は、戦闘を許可する。頼んだぞソヨカゼ」
『はい、この命に代えましても! 王様、ご褒美楽しみにしてます!』
嬉しそうにソヨカゼが声を弾ませる。
生存者を発見したものにはご褒美を出すことになっている。過酷な任務だから、少しでもモチベーションになるならいくらでもご褒美をあげたい。
***
プリメーラに本拠地を置くプリメーラ騎士団は、このアルカリーゼ王国においてその練度、規模において王都の近衛騎士団と並び称される王国南東部の防衛の要だ。
今日も5千人の騎士達が、来るべき魔人帝国との戦いに向けて厳しい訓練をしていた。
「騎士達の士気が高いですね、アルベルト様」
「ああ、やはり団長のカリスマによるところが大きいな」
「はい、セレス団長、最近更に魅力的になりましたからね! あ、副官のサクラ様もそうですけど」
「そうだな、以前とは違い、幸せオーラがすごいからな。団員も当てられて結婚するものが急増している。守るべきものが出来るのは騎士にとって大事なことだと思うよ」
とはいえ――――と、アルベルト副団長は視線を話題の2人に向けため息をつく。
「……いくらカケル殿が来たからと言って、あまり職場でイチャつかれるとな」
「確かに独り身の私には目の毒です……」
「旦那様、旦那様、淋しかったぞ!」
はしゃぐセレスティーナ。数時間前に別れたばかりだよね? いや嬉しいけど。
「王子様、私も淋しかったです〜、ギュってしてください! 骨が折れるぐらい」
いや、サクラちょっと表現が怖いから。
とりあえず、2人をギュっとして落ち着かせてから話を切り出す。
「2人とも聞いてくれ、さっきハーピィから連絡が入った。サウスレアは……まだ落ちていないぞ!」
2人の顔色が一瞬で真剣なものになり、すぐに喜びの色に変わってゆく。
「そ、それは本当か? 旦那様。良かったなサクラ!」
「……サウスレアが……みんな生きてる?」
セレスティーナの表情が明るくなり、サクラが大粒の涙を零す。
「ああ、でも喜ぶのはまだ早い。実は状況はあまり良くないんだ。どうやら食糧や物品が不足しているらしい」
「それならば、騎士団から食糧や物品を持って行こう。アルフレイド殿にもすぐに知らせる」
すぐに指示を出し始めるセレスティーナ。
「向こうへ届ける食糧品や物資はすべてリュックに詰めてしまおう。詰め終わったら俺はサウスレアに飛ぶけど、2人はどうする?」
「「もちろん行きます」」
***
「ヒノキ様、もう物資が足りません。食糧は魔物の肉でなんとかつなげますが、このままでは生活に支障が出始めるのも時間の問題です」
オルレアン伯爵ヒノキは歯噛みする。
たくさんの避難民が周辺各地から押し寄せたため、備蓄していた食糧や物資が不足し始めているのだ。
サウスレアが落ちなかったのは、幸運だった。
息子でアストレア七聖剣のひとりクヌギの結婚式の為、サウスレアにクヌギを含め2人の七聖剣がたまたま集まっていたのだ。
2人の七聖剣の奮戦によって、サウスレアはどうにか守られたが、他の地域がどうなったかは分からない。
王都との連絡が途絶えていることを考えると、最悪の可能性も考えざるを得ないだろう。となると、
「南へ向かい神聖ガーランド王国に支援を求めるのが、1番早いか?」
「そうですね、東のアルゴノートとも連絡が途絶えておりますし、西のアルカリーゼか南のガーランドのどちらかになりますが、ガーランドの方が近いですからね」
南のガーランドとは領地を接しているが、アルカリーゼとは隣領を挟みかなり距離がある。
「アルカリーゼか……サクラのことは気になるが、まずはガーランドへの道を切り開くぞ」
数日前から、魔物の勢いが弱まったとの報告もあるが、一時的なものでないという保証はどこにもない。
いずれにせよ、このまま手をこまねいていたら、サウスレアは早晩干上がってしまうのだ。
「伯爵様、ガーランドから使者が来ております」
「なにっ? すぐに通してくれ!」
***
「お久しぶりです、ヒノキ殿。ご無事で何より」
ヒノキの前に現れたのは、金髪碧眼の美青年。神聖ガーランド王国第2王子ノーラッドだ。エルフだけに見た目は十代の青年だが、実際にはヒノキよりも年上だ。
「殿下もご無事で安心いたしました」
ノーラッドの話によると、ガーランドも魔物の侵攻により少なくない被害を受けており、サウスレアと共同戦線を張りたいとのことだ。
森の民であるエルフと、植物魔法を受け継ぐオルレアン伯爵家は昔から良好な関係を保っており、ヒノキにとっては願ってもない申し出だ。
「しかし、状況は深刻です。周辺で無事なのはもしや我々だけなのでは?」
ヒノキの言葉に首を横に振るノーラッド。
「アルカリーゼは無事なはずだ。我が妹が無事を知らせて来たからな。私としては、アルカリーゼとも手を組み、この危機的状況を打開しようと考えている」
「なるほど、アルカリーゼにはセレスティーナ殿下もいらっしゃるはず、どの道、それしか手は無さそうですな」
方向性は決まった。とにかく西へ。具体的にはプリメーラを目指す。
(……だが、上手くいったとしても、ここからプリメーラまでは馬車で片道3日はかかる距離だ。しかも物資を積み魔物に気を配りながらでは更に時間がかかるはず)
そして、考えたくはないが、アルカリーゼもまた危機的状況ではないかという可能性。
大国アストレアがこの状況なのだ、普通に考えて隣国が無傷とは思えない。少なくとも、救援を出せないほどには厳しい状況なのではないか。
いま最優先でやるべきことは、ガーランドとともに、まずは西の拠点を取り戻すこと。
隣領ウルティモ伯爵領都サウスウエストレア。ここを取り戻すことができれば、アルカリーゼ、ガーランド、そしてサウスレアが地理的につながり緊密な協力が可能になる。
もちろん、作戦はある種の賭けになる。戦力を遠征に割けば、サウスレア自体がその分危険に晒され、かといって中途半端に戦力を送れば、作戦の成功は望めない。
おそらくは相当の被害が出るだろう。統治者として犠牲を前提に決断しなくてはならないのは、血を吐くほどの苦しみだが、もはや迷っている時間はない。
ヒノキとノーラッドが決断したその時――
「ひ、ヒノキ様、大変です!!! さ、さ、さ」
「どうした? 深呼吸して、ゆっくり話せ。魔物でも現れたのか?」
「……あの、サクラ様がお戻りになりました」
「は? いま何と言ったのだ?」
「サクラ様がお戻りになりました。しかも――」
「セレスティーナ殿下もご一緒です!」
調査に出ているハーピィから念話が入る。
「良くやった! ソヨカゼ、いま、どの辺りだ?」
調査に出す前に、すべてのハーピィには俺の持つ地図情報を渡してある。
実に70人以上のハーピィに情報を渡すのだから、とても嬉しい――いや、大変な仕事だった。ちなみに、全員唇――いや何でもないです。
『アストレアの南部、サウスレアだと思われます、王様』
「サウスレアか……たしかサクラの実家だったよな」
サウスレアは、サクラの父、オルレアン伯爵領の領都だ。
『……状況はあまり良くありません。城壁は無事ですが、おそらく食糧や物品が不足していますね』
「わかった、後でそちらへ向かう。街が危ない時は、戦闘を許可する。頼んだぞソヨカゼ」
『はい、この命に代えましても! 王様、ご褒美楽しみにしてます!』
嬉しそうにソヨカゼが声を弾ませる。
生存者を発見したものにはご褒美を出すことになっている。過酷な任務だから、少しでもモチベーションになるならいくらでもご褒美をあげたい。
***
プリメーラに本拠地を置くプリメーラ騎士団は、このアルカリーゼ王国においてその練度、規模において王都の近衛騎士団と並び称される王国南東部の防衛の要だ。
今日も5千人の騎士達が、来るべき魔人帝国との戦いに向けて厳しい訓練をしていた。
「騎士達の士気が高いですね、アルベルト様」
「ああ、やはり団長のカリスマによるところが大きいな」
「はい、セレス団長、最近更に魅力的になりましたからね! あ、副官のサクラ様もそうですけど」
「そうだな、以前とは違い、幸せオーラがすごいからな。団員も当てられて結婚するものが急増している。守るべきものが出来るのは騎士にとって大事なことだと思うよ」
とはいえ――――と、アルベルト副団長は視線を話題の2人に向けため息をつく。
「……いくらカケル殿が来たからと言って、あまり職場でイチャつかれるとな」
「確かに独り身の私には目の毒です……」
「旦那様、旦那様、淋しかったぞ!」
はしゃぐセレスティーナ。数時間前に別れたばかりだよね? いや嬉しいけど。
「王子様、私も淋しかったです〜、ギュってしてください! 骨が折れるぐらい」
いや、サクラちょっと表現が怖いから。
とりあえず、2人をギュっとして落ち着かせてから話を切り出す。
「2人とも聞いてくれ、さっきハーピィから連絡が入った。サウスレアは……まだ落ちていないぞ!」
2人の顔色が一瞬で真剣なものになり、すぐに喜びの色に変わってゆく。
「そ、それは本当か? 旦那様。良かったなサクラ!」
「……サウスレアが……みんな生きてる?」
セレスティーナの表情が明るくなり、サクラが大粒の涙を零す。
「ああ、でも喜ぶのはまだ早い。実は状況はあまり良くないんだ。どうやら食糧や物品が不足しているらしい」
「それならば、騎士団から食糧や物品を持って行こう。アルフレイド殿にもすぐに知らせる」
すぐに指示を出し始めるセレスティーナ。
「向こうへ届ける食糧品や物資はすべてリュックに詰めてしまおう。詰め終わったら俺はサウスレアに飛ぶけど、2人はどうする?」
「「もちろん行きます」」
***
「ヒノキ様、もう物資が足りません。食糧は魔物の肉でなんとかつなげますが、このままでは生活に支障が出始めるのも時間の問題です」
オルレアン伯爵ヒノキは歯噛みする。
たくさんの避難民が周辺各地から押し寄せたため、備蓄していた食糧や物資が不足し始めているのだ。
サウスレアが落ちなかったのは、幸運だった。
息子でアストレア七聖剣のひとりクヌギの結婚式の為、サウスレアにクヌギを含め2人の七聖剣がたまたま集まっていたのだ。
2人の七聖剣の奮戦によって、サウスレアはどうにか守られたが、他の地域がどうなったかは分からない。
王都との連絡が途絶えていることを考えると、最悪の可能性も考えざるを得ないだろう。となると、
「南へ向かい神聖ガーランド王国に支援を求めるのが、1番早いか?」
「そうですね、東のアルゴノートとも連絡が途絶えておりますし、西のアルカリーゼか南のガーランドのどちらかになりますが、ガーランドの方が近いですからね」
南のガーランドとは領地を接しているが、アルカリーゼとは隣領を挟みかなり距離がある。
「アルカリーゼか……サクラのことは気になるが、まずはガーランドへの道を切り開くぞ」
数日前から、魔物の勢いが弱まったとの報告もあるが、一時的なものでないという保証はどこにもない。
いずれにせよ、このまま手をこまねいていたら、サウスレアは早晩干上がってしまうのだ。
「伯爵様、ガーランドから使者が来ております」
「なにっ? すぐに通してくれ!」
***
「お久しぶりです、ヒノキ殿。ご無事で何より」
ヒノキの前に現れたのは、金髪碧眼の美青年。神聖ガーランド王国第2王子ノーラッドだ。エルフだけに見た目は十代の青年だが、実際にはヒノキよりも年上だ。
「殿下もご無事で安心いたしました」
ノーラッドの話によると、ガーランドも魔物の侵攻により少なくない被害を受けており、サウスレアと共同戦線を張りたいとのことだ。
森の民であるエルフと、植物魔法を受け継ぐオルレアン伯爵家は昔から良好な関係を保っており、ヒノキにとっては願ってもない申し出だ。
「しかし、状況は深刻です。周辺で無事なのはもしや我々だけなのでは?」
ヒノキの言葉に首を横に振るノーラッド。
「アルカリーゼは無事なはずだ。我が妹が無事を知らせて来たからな。私としては、アルカリーゼとも手を組み、この危機的状況を打開しようと考えている」
「なるほど、アルカリーゼにはセレスティーナ殿下もいらっしゃるはず、どの道、それしか手は無さそうですな」
方向性は決まった。とにかく西へ。具体的にはプリメーラを目指す。
(……だが、上手くいったとしても、ここからプリメーラまでは馬車で片道3日はかかる距離だ。しかも物資を積み魔物に気を配りながらでは更に時間がかかるはず)
そして、考えたくはないが、アルカリーゼもまた危機的状況ではないかという可能性。
大国アストレアがこの状況なのだ、普通に考えて隣国が無傷とは思えない。少なくとも、救援を出せないほどには厳しい状況なのではないか。
いま最優先でやるべきことは、ガーランドとともに、まずは西の拠点を取り戻すこと。
隣領ウルティモ伯爵領都サウスウエストレア。ここを取り戻すことができれば、アルカリーゼ、ガーランド、そしてサウスレアが地理的につながり緊密な協力が可能になる。
もちろん、作戦はある種の賭けになる。戦力を遠征に割けば、サウスレア自体がその分危険に晒され、かといって中途半端に戦力を送れば、作戦の成功は望めない。
おそらくは相当の被害が出るだろう。統治者として犠牲を前提に決断しなくてはならないのは、血を吐くほどの苦しみだが、もはや迷っている時間はない。
ヒノキとノーラッドが決断したその時――
「ひ、ヒノキ様、大変です!!! さ、さ、さ」
「どうした? 深呼吸して、ゆっくり話せ。魔物でも現れたのか?」
「……あの、サクラ様がお戻りになりました」
「は? いま何と言ったのだ?」
「サクラ様がお戻りになりました。しかも――」
「セレスティーナ殿下もご一緒です!」
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