異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

リーゼロッテ

 結局、町長のマーロを始めとして、人身売買組織に関わる人間は、町の人口の1割500人に達した。とりあえず、全員地下街の牢屋に打ち込んである。


 直に辺境伯軍が到着し、証拠の調査が始まれば、組織が持っていた顧客の規模を考えるに、国中を巻き込む大事件になることは間違いないだろう。


「冒険者黒の死神のおかげで、無事組織を潰すことが出来たわ。もちろん、手足はまだ残っているでしょうし、顧客連中の調査はこれからだけどね」


 満足そうに頷くリーゼロッテ様。


「これで不幸な人々が少しでも減ってくれれば良いのですが」


 攫われた人たちは、明日以後、辺境伯軍が責任を持って、それぞれ元の町へ送り届けられるそうだ。とりあえず一安心。


「きっと減るわ、いいえ、この私が減らしてみせる」


 綺麗なプラチナブロンドの髪を揺らしながら力強く宣言するリーゼロッテ様。少しだけセレスティーナに似てるなって思った。


「ところで私の騎士、もう遅いし今夜はこの町に泊まっていくんでしょう?」


「いいえ、用事は済んだので、フィステリアに戻ります。召喚獣で飛んでいけば直ぐに着きますので」


「えっ、召喚獣ってなに? 飛べるの?」


 エメラルドグリーンの瞳を輝かせて興味津々で聞いてくるので、フリューゲルを召喚してリーゼロッテに見せてあげた――――結果、


「私を領都バドルまで送りなさい! 私の騎士」


 どうやら、少しでも早く、領都に戻り、今回の件を報告したいらしい。


「うーん、フィステリアに戻って用事済ませてからで良ければ構わないですけど」


「もちろん。じゃあ決まりね。早くフィステリアへ出発するわよ!!」


 ウッキウキな様子のリーゼロッテ様。えっ、ついて来るの?


 他のメンバーは、またかといった感じで特に反応はない。俺も慣れたけども。


「連れて行くのは構いませんが、護衛の人たちにちゃんと説明してからにして下さいよ?」
「わかったわよ、ちょっと待ってなさい」


 走り去るリーゼロッテ様。その間に――


「ツバサ、悪いんだけど領都バドルまで先行してもらえるか?」
『しかし王よ、私は領都へ行ったことが無いからわからないぞ』


 ツバサが申し訳なさそうに首をふる。


「大丈夫、俺の頭の中の情報をツバサに渡すからな。頭部の接触が必要なんだけど、おでこと唇どっちが良い?」
『えっ、あ、あの……えと、く、唇で頼む……』


「おでこで我慢出来ないのか……悪い子だなツバサは」


 自分でも何を言ってんのと思いながら、ツバサと唇を接触させて、情報を渡す。仕方ないんだ、これは仕様だから。


『い、行ってくる、王よ』


 全身真っ赤になったツバサが、ふらふら飛んで行った。




「御主兄様、私にも情報をお願いします」
「いや、クロエ、あれは召喚獣にしか――――」
「御主兄様、は、や、く、お願いします」


 クロエと唇を接触させて情報を渡す。いや、渡せないけどね!?


「「貴方様!」」


 シルフィ、サラと唇を接触させて情報を渡す。もう一度言うけど、渡せないからね!?


「あ、な、た」


 エヴァと唇を接触させて情報を渡す。もう良いよね、キスです! キスしてるだけです、すいません。


『お兄様……』


 ミヅハは触れなくても大丈夫――えっ、駄目? 仕方ないなあ……


「あ、主様……」


 そんな顔されたら、キスだけで済まなくなる――――


「…………なにしてんの? 私の騎士。えっ、情報を渡す? 試してみるかって? バカなのッ!?」


 戻ってきたリーゼロッテ様に怒られた……




「あとのことは全部任せてきたから大丈夫よ」


 良い笑顔で丸投げを宣言するリーゼロッテ様。護衛の人たちの過労が心配になる。今度会ったら神水飲ませてあげよう。


「じゃあ、フィステリアに向けて出発!」 


 黒の死神メンバーとリーゼロッテ様を乗せて、フリューゲルが飛び立つ。マリグノの町灯りはもう見えない。


「すごい、速い、これで景色が見えたら最高だったのに残念だわ!」


 大興奮のリーゼロッテ様、悔しそうにバンバンフリューゲルをの背中を叩く。


『痛い、痛い! 主、この娘なんという馬鹿力だ!?』


 レベル200オーバーのグリフォンが本気で痛がるとかヤバくない?




(楽しい! 久しぶりにはしゃいでしまった。だって――)


 私の最初の犠牲者は母だった。


 出産直後の母は、私の蹴りを受けて骨折する大怪我を負ってしまった。その後も、乳母やメイドたちを次々と怪我させてしまい、物心がつく頃には、私の周りにいるのは、屈強な騎士たちだけになっていた。


 お父さまは、辺境伯家に相応しい素晴らしい力だと褒めてくださったけれど、同じ年頃の子と遊んだり出来ないのは淋しかった。


 その後、一生懸命力加減を訓練して、ようやく従兄妹と遊べることになった時、私は嬉しくて、うっかり彼女の大事な人形を握り潰してしまった。


 あの時の彼女の顔が今でも忘れられない。まるで、怪物を見るようなあの眼を。


 それから私は騎士たちに混じって、訓練に明け暮れるようになった。


 強くなって、みんなを守る。それがこの力を授かった意味だと思ったから。


 でも、強くなればなるほど、私の周りには人が居なくなっていった。仕方ないのは理解出来ても、やっぱり淋しかったのよ。


(でもね……やっと出会えた。私があるがままに振る舞っても壊れない私の騎士に。そして、それを当たり前のように受け入れてくれる仲間たちに) 


「ねえ、私の騎士! ギュッってしていいかしら? 落ちそうで怖いのよ」


「ああ、しっかり掴まってろよ」


 私は思いきり私の騎士にしがみつく。


(覚悟なさい。もう絶対に放してあげないんだから……)














 

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