異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

もふもふナイト

「カタリナさーん、お届け物でーす。ラビを納品しにきました~」


 理由はともかく女性の部屋に入るのはやっぱりドキドキするね。


「カケルくん? どうぞ、入ってちょうだい」


 カタリナさんの声に促されて部屋に入る。


「失礼します――ってなんで全裸なんですか!?」


 部屋の中には、一糸まとわぬ姿のカタリナさんがベッドに腰かけていた。まあ大事なところは髪で隠れてるけどね。


「なんでって、よりラビのもふもふを味わうために決まってるでしょ」


 確かに一理ある。ラビの毛はシルクやビロードのようにすべすべで、それでいてふわふわもこもこなのだ。例えばアンゴラといううさぎの毛は、羊毛の7倍の保温力を持つというが、おそらくラビの毛はその上をいく。そんな上質な素材を前にして服を着るなど、冒涜以外の何物でもない。文字通り全身全霊で味わうべきだろう。


「……失礼しました。当然のことを聞いた俺がバカでした」
「カケルくんなら、わかってくれると思っていたわ。それじゃあ、始めましょうか? 魅惑のもふもふナイトを」


「カタリナさん、覚悟してくださいね? レベル200のラビはもふランクSです。気を抜くと死にますよ」


 カタリナさんの息をのむ音が聞こえる。


「カケルくん……私をあまり甘く見ないで欲しいわ。冒険者はA級だけど、ウサギに限定すればSS級よ!」




 カタリナさんの覚悟は固いようだ。さっそくラビを召還する準備を始める。なんせ、またさらにでかくなったから、部屋に収まらないんだよね。家具を端に寄せ、スペースを空ける。


『仰向け召喚! いでよラビ!!』


 当然だが、仰向けに召喚する。ラビの毛は全身上質だが、お腹まわりは極上だ。ぷにぷにでだらしないお腹の肉布団の気持ちよさを知ってしまったら、戻ってくることは難しい。


 それ故、初心者にはおすすめ出来ないが、俺やカタリナさんはすでに手遅れだから何の問題も無い。


「さあカタリナさん、準備は整いました。今宵は存分にもふもふナイトをご堪能下さいね」


 これで取引成立だ。残念だが、ラビを堪能するのはまた今度だな。扉を開け、部屋を出る――


「何処へ行くの、カケルくん? 貴方も早く脱ぎなさい」
「は? で、でもそれじゃあ……」


「取引は成立しているわ。私はラビを貸してって言ったけど、独り占めしたいなんて言ってないわ。それに……楽しみにしていたんでしょう? ラビのベッドで寝ることを」


 慈愛のこもった優しい眼差しはまるで母なる女神のようで、思わず泣きそうになる。


「か、カタリナさん、お、俺……」
「何も言わなくて良いの……夜は長いし、ラビのベッドはとても広いわ」


 ラビのサイズはすでに部屋を埋め尽くすほどで、キングサイズどころではない。部屋の全てがラビの肉布団というまさにパラダイス!


「さぁ、きてカケルくん! 一緒にこのラビという大海原へ乗り出すのよ!!」 


 たまらず服を脱ぎ捨て、ラビのお腹へダイブする。カタリナさんも同時だ。


「「おっふう……」」


 言葉にならない声が出る。沈み込む全身がラビの上質な毛に包まれる快感。しかもラビの体温で温かいのだ。あまりの気持ちよさに理不尽な怒りと感謝がせめぎ合う。なぜ怒りかって? さあな。


「か、カケルくん……助けて、気持ち良すぎて怖いの……」 
「だ、大丈夫ですか、カタリナさん! 気持ちを強く持って! 眠ったら死にますよ!」


 大変だ、こんな所で遭難するわけにはいかない。待っていて下さいカタリナさん。俺は肉をかき分け、必死に泳ぐ。あと少し、あと少しだ……


「カタリナさん!」
「カケルくん!」


 すんでのところで、沈みゆくカタリナさんの手を取ることに成功する。


「ありがとうカケルくん……私の認識が甘かったわ。自分の力を過信して、こんな装備で挑むなんてね……これがもふランクSの実力か……」
「カタリナさんは悪くないです! 認識が甘かったのは俺も同じです。後悔するよりも今は助かる方法を考えましょう!」


 そうしている間にも、ラビは俺たちの身体を容赦無く温めてくる。


「カケルくん、このまま温め続けられたら危険よ! 二人で刺激を与えあうしかないわ」


 くっ、確かにこのままではジリ貧だ。やむを得ない、これが生き残るための最後の手段だというのなら、俺は躊躇うことをしない!




「……御主兄様、何をしてらっしゃるのでしょうか?」


 クロエの冷えた声が部屋に響き渡る。


「……見ればわかるだろう? もふもふナイトだ」
「……わかりません。さあ、お部屋に戻りますよ」


 無情なクロエの宣告に俺の冒険が終ったことを知る。


 クロエは自分がもふもふだから全く興味ないし、理解もしてくれないんだよな。完璧超人の唯一にして最大の欠点だ。


「カタリナさん、じゃあ俺はこれで、楽しかったです」
「ありがとう、私も楽しかったわ。またね」


 カタリナさんに別れを告げて、クロエと部屋に戻る。俺のもふもふナイトはここに終わりを告げた。


 おや? 隣を歩くクロエが、なにやらもじもじしている。


「ご、御主兄様、そんなにもふもふがお好きなのでしたら、わ、私で、もふもふしても……良いんですよ?」


 真っ赤な顔でそんなこと言われたら、ねえ。


「クロエ、本当に良いんだな?」
「は、はい。好きなだけ、もふもふ、して、下さい、御主兄様」


 もふもふナイトリバイバル決定!


 クロエを抱き上げ部屋に急ぐ。頭の中で高速ふもふシミュレーションを繰り返す。これが神級スキル『並行動作』の力。心の中で、女神様に感謝を捧げる。


 部屋にたどり着き、はやる心を抑えながらドアを開ける。正直蹴破りたかったが、ここはカルロスさんの屋敷だ。そんな無法は出来ない。


『おかえりなさい、お兄様!』


 ……しまった。俺にはもう一人妹がいたんだ。所詮はシミュレーション、現実は残酷だな……


『お兄様? ミヅハがお兄様のために作った特製ベッドを見て下さい!』


 すまぬ、ミヅハには何の罪もないというのに、俺は兄失格だな。


「おお……これは、ウォーターベッドだな!」 


 しかも、本当に水だけで出来たぷるぷるのベッドだ。水温も自在に調整出来るらしい。


「ありがとうミヅハ。これは本当に気持ち良さそうだ」
『喜んでいただきミヅハは嬉しいです、お兄様』


 もふもふも良いけど、ぷるぷるも悪くない、いやむしろ良い。


「よしっ、明日も早いし、さっそく寝てみるか」


 3人で横になる。温かいクロエと少しひんやりとしたミヅハのサンドイッチだ。俺の夢はサンドイッチの具になる事だったんだな……ぼんやりとそんなことを考えてしまう。


「ご、御主兄様……お願い、身体が熱くて、早くもふもふ、して……ください」


 クロエが熱を帯びた視線で訴えてくる。ここは兄としてクロエの火照った身体を鎮めるべきだろう。


「ひぃっ、つ、冷たい!!」
『……クロエ姉さま、これで、しっかり冷えたのではないですか? 良かったですね!!』


 ミヅハがクロエの寝ている部分だけ、氷に変えたようだ。思ってないよ、余計なことしたなんて思ってない。


『お兄様……ミヅハは寒いのです。どうかお兄様の体温で温めてくださ――や、やめてください姉さま! 毛が! 毛が身体に付きます』
「失礼ですね、ミヅハ。私がしっかり温めてあげますから安心しなさい」




 どうやら、サンドイッチタイムも終わりのようだ。ノックの音が聞こえる……いつものメンバーがやってきたのだろう。早く自分の家が欲しい。そう思いながら目を閉じた。 




 

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