異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
月が綺麗ですね
(ダーリンがいない……さっきミヅハと部屋に入ったはずなのに……)
誰もいない空っぽの部屋を見てエヴァンジェリンはしばし悄然とする。
今夜は待ちに待った満月。以前から、吸血の儀をすると約束していた日だ。
吸血の儀は、満月の夜にしか行うことが出来ない。吸血鬼にとって、様々な理由から人生で最も重要な儀式となっている。
(忘れちゃったのかな。ダーリン忙しいからな……仕方ないよね)
よく考えれば、約束したと言っても、初めて出逢った時に、しかも移動中に一度口約束しただけだ。普通に考えたら憶えているとは思えない。自分の詰めの甘さが嫌になる。
ひとり、ダーリンの部屋に入り、ベッドで横になる。
ボフンッと枕に顔をうずめると、滲んだ涙が吸われて消えてゆく。
(えへへ……ダーリンの匂いがする。優しくて暖かいお日様みたいで安心する匂い……)
一人の時は本当の自分にもどる。普段の余所行きの話し方は本当はあまり好きじゃない。でも私は王族だから公私はしっかり分けている。小さいころからそうだから、今更なんとも思わない。
だけど……あの人の前でだけは、本当の私を見せたいの。吸血の儀を交わした相手なら、本当の私を見せることが許される。だからお願い……早く帰ってきて。月が隠れるその前に。
***
……いつの間にか寝てしまっていたのだろうか? 目を開くと、愛しいダーリンが、私の髪を優しく撫でていた。あれ……まだ夢の中なの?
「……ごめんな、エヴァ、遅くなって。ずっと待っていたんだろ?」
「……待ちくたびれたのじゃ。罰としてお姫様抱っこしておくれ」
本当は嬉しくて抱きつきたいけど、そんなことを言ってしまう。
「了解、お姫様」
そう言ってダーリンは、私を優しく抱き上げお姫様抱っこしてくれる。
助けてくれたあの時のように、ひと目みて恋に落ちたあの時のように。
「じゃあ行こうか。満月の光を浴びなきゃいけないんだよな?」
本当に憶えていてくれたんだ……嬉しくて声が出ない。黙ってコクコク首肯する。
「転移するからしっかり掴まってろよ」
本当は転移するとき、身体の一部が触れていれば良いのだと私は知っているが、思いきりダーリンに抱きつく。触れた部分が熱を帯びて心地よい。吸血鬼は体温が低いのだ。
一瞬の浮遊感の後、視界が切り替わり私たちは高い建物の上にいた。
「ダーリン、ここは?」
「プリメーラ城のてっぺんでございます。姫」
眼下には無数の街の灯りが瞬き、見上げれば吸い込まれそうな満月。
「……綺麗」
「本当に月が綺麗だな」
「エヴァ、俺のいた世界では、月が綺麗には別の意味があるんだ」
「別の意味?」
「……貴方を愛しています、だ。今宵の月は本当に綺麗だエヴァ」
「っ?! だ、ダーリン……」
駄目だ……涙が溢れて、愛おしさが溢れて言葉にならない。抱きつく腕にただ力を込める。
「……もし本当に月が綺麗なら、それは貴方が居てくれるから……貴方というお日様が私を優しく照らしてくれるからよ……」
月が優しく二人を照らす。暫く無言で月を眺めた。
「ダーリン……吸血鬼ってね。昔は討伐される化け物だったのよ」
「……そうか」
「でも、私のご先祖様、トラシルヴァニアの初代エヴァンジェリン様が異世界の勇者様と恋に落ち、女神様から授かった祝福が、吸血の儀。生涯この人以外の血は吸わないという誓いであり、呪われた私たち吸血鬼が人間らしく生きられる救いとなったの」
「……誓いを破るとどうなるんだ?」
「死ぬわ。ちなみにパートナーが死んだ時も同じ」
「そんな大事な相手、俺なんかで良いのか?」
「いじわるね……貴方が良いのよ」
首筋に微かに痛みが走るが、直ぐに得も知れぬ快感に変わる。
『吸血を記憶しました』
「お返しだ、エヴァ……」
「えっ……ん、んんん……はぁはぁ、き、気持ち良い……」
吸血はとてつもない快感を二人にもたらす。これは癖になりそうだ。
「エヴァ、悪いが、俺かなり長生きする予定だから、それまで付き合ってもらうぞ?」
「……もちろん、お付き合いさせていただきます。あ、な、た」
【吸血の儀】吸血対象を限定することで、他者に対する吸血欲求が抑えられる。結ばれた二人への祝福として、全ステータス増加、寿命が30%延びる。
***
「ねえ、セバス、今宵は月も綺麗だし、屋上で月見酒とか良いんじゃない?」
「……駄目です! まだやらねばならない書類が残っております」
「えーっ、そんな殺生な〜、もう領主辞めて冒険者になろうかな……」
(それに、どうやら先客がいらっしゃるようですからね……)
「その山が終わったら、休憩しましょう。お酒も用意しておきますね」
アルフレイドの夜はまだ始まったばかりだ。
誰もいない空っぽの部屋を見てエヴァンジェリンはしばし悄然とする。
今夜は待ちに待った満月。以前から、吸血の儀をすると約束していた日だ。
吸血の儀は、満月の夜にしか行うことが出来ない。吸血鬼にとって、様々な理由から人生で最も重要な儀式となっている。
(忘れちゃったのかな。ダーリン忙しいからな……仕方ないよね)
よく考えれば、約束したと言っても、初めて出逢った時に、しかも移動中に一度口約束しただけだ。普通に考えたら憶えているとは思えない。自分の詰めの甘さが嫌になる。
ひとり、ダーリンの部屋に入り、ベッドで横になる。
ボフンッと枕に顔をうずめると、滲んだ涙が吸われて消えてゆく。
(えへへ……ダーリンの匂いがする。優しくて暖かいお日様みたいで安心する匂い……)
一人の時は本当の自分にもどる。普段の余所行きの話し方は本当はあまり好きじゃない。でも私は王族だから公私はしっかり分けている。小さいころからそうだから、今更なんとも思わない。
だけど……あの人の前でだけは、本当の私を見せたいの。吸血の儀を交わした相手なら、本当の私を見せることが許される。だからお願い……早く帰ってきて。月が隠れるその前に。
***
……いつの間にか寝てしまっていたのだろうか? 目を開くと、愛しいダーリンが、私の髪を優しく撫でていた。あれ……まだ夢の中なの?
「……ごめんな、エヴァ、遅くなって。ずっと待っていたんだろ?」
「……待ちくたびれたのじゃ。罰としてお姫様抱っこしておくれ」
本当は嬉しくて抱きつきたいけど、そんなことを言ってしまう。
「了解、お姫様」
そう言ってダーリンは、私を優しく抱き上げお姫様抱っこしてくれる。
助けてくれたあの時のように、ひと目みて恋に落ちたあの時のように。
「じゃあ行こうか。満月の光を浴びなきゃいけないんだよな?」
本当に憶えていてくれたんだ……嬉しくて声が出ない。黙ってコクコク首肯する。
「転移するからしっかり掴まってろよ」
本当は転移するとき、身体の一部が触れていれば良いのだと私は知っているが、思いきりダーリンに抱きつく。触れた部分が熱を帯びて心地よい。吸血鬼は体温が低いのだ。
一瞬の浮遊感の後、視界が切り替わり私たちは高い建物の上にいた。
「ダーリン、ここは?」
「プリメーラ城のてっぺんでございます。姫」
眼下には無数の街の灯りが瞬き、見上げれば吸い込まれそうな満月。
「……綺麗」
「本当に月が綺麗だな」
「エヴァ、俺のいた世界では、月が綺麗には別の意味があるんだ」
「別の意味?」
「……貴方を愛しています、だ。今宵の月は本当に綺麗だエヴァ」
「っ?! だ、ダーリン……」
駄目だ……涙が溢れて、愛おしさが溢れて言葉にならない。抱きつく腕にただ力を込める。
「……もし本当に月が綺麗なら、それは貴方が居てくれるから……貴方というお日様が私を優しく照らしてくれるからよ……」
月が優しく二人を照らす。暫く無言で月を眺めた。
「ダーリン……吸血鬼ってね。昔は討伐される化け物だったのよ」
「……そうか」
「でも、私のご先祖様、トラシルヴァニアの初代エヴァンジェリン様が異世界の勇者様と恋に落ち、女神様から授かった祝福が、吸血の儀。生涯この人以外の血は吸わないという誓いであり、呪われた私たち吸血鬼が人間らしく生きられる救いとなったの」
「……誓いを破るとどうなるんだ?」
「死ぬわ。ちなみにパートナーが死んだ時も同じ」
「そんな大事な相手、俺なんかで良いのか?」
「いじわるね……貴方が良いのよ」
首筋に微かに痛みが走るが、直ぐに得も知れぬ快感に変わる。
『吸血を記憶しました』
「お返しだ、エヴァ……」
「えっ……ん、んんん……はぁはぁ、き、気持ち良い……」
吸血はとてつもない快感を二人にもたらす。これは癖になりそうだ。
「エヴァ、悪いが、俺かなり長生きする予定だから、それまで付き合ってもらうぞ?」
「……もちろん、お付き合いさせていただきます。あ、な、た」
【吸血の儀】吸血対象を限定することで、他者に対する吸血欲求が抑えられる。結ばれた二人への祝福として、全ステータス増加、寿命が30%延びる。
***
「ねえ、セバス、今宵は月も綺麗だし、屋上で月見酒とか良いんじゃない?」
「……駄目です! まだやらねばならない書類が残っております」
「えーっ、そんな殺生な〜、もう領主辞めて冒険者になろうかな……」
(それに、どうやら先客がいらっしゃるようですからね……)
「その山が終わったら、休憩しましょう。お酒も用意しておきますね」
アルフレイドの夜はまだ始まったばかりだ。
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