異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

郷に入っては郷に従え

(本当にどうしてこうなった……)


 ことの発端は30分ほど前に遡る。


***


「マルコスさん、プリメーラ騎士団長セレス様と副官のサクラ様がいらっしゃっています。どういたしましょうか?」


 執事長のマルコスのところに、外にいる使用人から連絡が入る。騎士団長セレスといえば、領主と同等の地位と権限を持つこの街の双壁の一人だ。下手な対応はできない。


「わかった、すぐ私が行く、玄関口までの案内を頼むぞ。くれぐれも粗相のないようにな」


 要人の対応に慣れているマルコスといえど、相手は大国アストレアの王族だ。緊張から背中を嫌な汗で濡らす。 


(一体何用だろうか? 騎士団と云えば、先日の長男ロベルト様を引き渡した件だろうか、いや、その可能性は低いか。こんな夜にわざわざ騎士団のトップが持ち込む話でもないだろう)


 結論の出ないまま、マルコスは、玄関前で丁寧に2人を出迎える。


「ようこそいらっしゃいました。セレス騎士団長様、サクラ様、カルロス家執事マルコスと申します」


「マルコス殿、こんな夜更けに申し訳ない。どうしても外せない重要な件があってな」


 セレスティーナがマルコスに頭を下げて失礼を詫びる。


(これは……。マルコスは――表には決して出さないが――内心感嘆する。セレスのプラチナブロンドの髪とブルートパーズの瞳の輝きは、夜の闇ですら染めることが出来ないでいる。サクラの漆黒の黒髪と桜色の瞳もまた、見る者を魅了せずにはいられないほどの美しさであった。これ程近くで見るのは初めてだが、なるほど騎士団に咲く双花と呼ばれる訳だとあらためて納得させられる)


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


 そう、これが本題だ。みれば、2人とも微かに息に乱れがある。まさかここまで走ってきたのであろうか? そうせざるを得ないほどの要件とは一体なんだ?


「混浴だ、混浴を所望する」


「……かしこまりました。ご案内させていただきます。こちらへどうぞ」


 不味いぞ……全く意味がわからない。コンヨク? コンヨクとは一体なんだ? くっ、情けない、これが筆頭執事だというのか! セバスチャン先生が言っていたではないか、想像力の翼を広げろと! っ?! そうか、翼だ、コンヨク、つまり金翼。我がカルロス家の家宝金翼の剣のことではないか! 家紋にもなっているのに気付かないとは、私は大馬鹿者だ。つまり、セレス騎士団長様は、金翼の剣をご所望だということか。(※違います)


 危なかった。あやうく恥をかくところだった。平静を装い2人を応接室へ案内する。


「それでは。当主を呼んでまいりますので、お掛けになってお待ち下さい。直ぐに飲み物をお持ちいたしますので」


 メイドに指示を出し、急いで部屋を出る。


(しかし、カルロス様が家宝を部外者に見せるとは珍しい。もしかすると、領主様からセレス様に見せるように頼まれたのかもしれませんね……)


 マルコスは、大広間で談笑しているカルロスにそっと近づき、耳元でささやく。


「カルロス様、セレス騎士団長様と副官のサクラ様がいらしております」
「何だって! それはお待たせしてはいかんな、直ぐに行くぞマルコス」


 カケルたちと談笑していたカルロスだったが、慌てて立ち上がり、応接室へ向かう。


「マルコス、ところでセレス様の要件は何だ?」
「金翼の剣を見せて欲しいとのことでしたが、聞いておられませんか?」


 移動しながら手短に会話する。


「いや、聞いてないな。突然家宝が見たいとは一体……」


 困惑しながら応接室に入るカルロス。


「これはこれは、セレス騎士団長様、サクラ様、ようこそいらっしゃいました」
「これはカルロス殿、夜分に突然押しかけて申し訳ない。実は折り入ってお願いしたい事があるのだが……」


「……風呂を貸して欲しいのだ」


「は? ふ、風呂でございますか?」
「うむ、実は、カルロス殿の風呂が素晴らしいということで、クロエたちと一緒に風呂に入る約束をしたのだが、我々はあくまで部外者ゆえ、カルロス殿に入浴の許可をいただければありがたいのだが、駄目だろうか?」


「い、いえ、それは全く問題ありません。むしろ、光栄の極みでございます。いつでも自由にはいっていただいて構いませんよ。今後は許可など不要です」


 カルロスは、満面の笑みで喜びを表現する。自慢の風呂を褒められて気分の悪いはずがない。


「それはかたじけない。じつは、この後、冒険者ギルドのクラウディアも来るのだが、構わないだろうか?」
「もちろん、クラウディア様もよろこんで歓迎いたします」


 カルロスは、すっかり上機嫌となり、先程マルコスの言ったことなどすっかり忘れてしまった。おかげで執事の失態?は幸いにも闇に葬られた形になるのだった。


***


 ここで最初の時点に戻る。


(本当にどうしてこうなった……)


 いつの間にか、女性陣全員と一緒に風呂に入ることになっていたのだ。なぜか、セレスティーナとサクラ、そしてクラウディアまで来ているんだがこれは一体?


 まあ、セシリアさんは約束してたし、クロエとミヅハは妹だからいいとして、シルフィとサラは婚約者らしいから別にいいのか、エヴァはパートナーだし、セレスティーナは俺のものって言っちゃったしなあ。サクラも子ども約束しちゃってるから今更な気もするし……あれ、結構大丈夫なのか?


 でも、カタリナさんとクラウディアとソニアは、さすがにどうかと思うし、フリアは子どもだけど、微妙な年齢だから危険な気がする。これって俺が日本人だからなのかな……。


 ここは異世界なんだし、そのあたり現地の人たちに聞いてみよう。


『えっ? 混浴が一般的かって? そうだな、あまり別々になってるところは無いかな』
『そうだね、家族や恋人、友人なら普通に一緒に入るよ。なんで? 異世界では違うのかい?』


 あれ、なんか恥ずかしがってた俺がばかみたいだ。そういえば、日本も江戸時代はみんな一緒に入浴してたんだっけ。郷に入っては郷に従えだよな。


 よく考えたら、みんな俺と一緒に入るために集まったらしいし、ちょっとした新入生歓迎会みたいなノリなのかもしれないな。うん、なんか腑に落ちた気がする。父さん、母さん、俺は異世界で楽しくやってるよ。




 ……なんて思ってた自分の甘さがうらめしい。いや無理でしょこれ、絶対反応しちゃうし。フリアの前でそんなことになったら軽く死ねる。いや、諦めるな、きっと何か方法があるはず……


『……お兄様、何を苦悩されているのですか? 私にできることでしたら力になります』
「ミヅハ、よく聞いてくれた……実は――」


『そんなことでしたら、ミヅハにお任せくださいませ、お兄様。血液も液体ゆえ、私がコントロール可能です。例えばこんな風に……まあ、お兄様立派です。ミヅハは見惚れてしまいます。そうです! このまま入りましょう。最初からこの状態ならきっとバレないとおもいます。えっ、絶対バレる? そうですか……残念です』


 結局、ミヅハのおかげで、思う存分堪能できましたよ。えっ、何をって、もちろんお風呂です。他になにがあるんですか? えっ、やましいことがあると敬語になる? ノーコメントで。


 今日学んだことは、持つべきものは、有能な妹ってことですかね。はい。



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