異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
天国の甘い罠
フリューゲルは飛ぶ、自身でも信じられない速度で。
カケルの強化、統率の力によって、フリューゲルの能力は跳ね上がっている――が、まだ足りない。嫌な感覚が頭から離れない。
間に合ってくれ……祈るような気持ちでカケルは、セレスティーナの姿を探す。
(……いた、まだ……生きてる)
強化された視力が、セレスティーナを捉える。
……間に合った、とは口が裂けても言えない……
変わり果てた彼女の姿に、これまで感じたことのない怒りの感情が湧いてくる。
思えば、昔から感情の希薄なところがあった。別に薄情だったわけはないと思うが、どこか自分の感情にリミットをかけてバランスを保っていたような気がする。
そうしなければ、きっと瞬間記憶能力と付き合うことができなかったから……
ずっとこの能力が嫌だった。
自分だけ違う世界に住んでいるようで。でも……
セレスティーナの全てを鮮明に思い出すことができる。笑った顔も、怒った顔も、凛とした表情も、照れて赤くなった可愛らしい姿も。
俺を旦那様って、恥ずかしそうに呼ぶ、その鈴が鳴るような綺麗な声も。
そして、誰一人死なせないと、全てを背負い必死に頑張るその高貴な生き様も。そんな能力は……今はもう……嫌いじゃない。
こんな純粋で綺麗な人が本当にいるんだなあって思った。
ミコトさん以外で初めてだ。こんなに誰かを描いてみたくなったのは……
そうだ、この戦いが終わったら、セレスティーナの絵を描こう。
『スケッチブックのレベルが上がりました』
セレスティーナを襲っている奴が目に映る。頭は沸騰し、心は零下まで冷える。
『瘴気操作を記憶しました』
許せねえ、許せねえ……絶対に許さねえ。なにしてんだよ……てめえ、
「俺のセレスティーナになにしてくれてんだ!!!」
「フリューゲル、思いっきり俺を飛ばせ」
『承知した主よ』
フリューゲルの風魔法で弾丸のように撃ち出される。
(……飛翔……加速)
加速スキルで更に速度を上げて接近する。
(デスサイズは使わねえ……)
ギリリと血が出るほど握り締めた拳で、ヴァロノスをぶん殴った。
***
最初、なにが起きたかわからなかった。
突然の突風で、ヴァロノスの剣先がわずかに逸れ、大剣が地面に突き刺さる。
そして、ヴァロノスが、慌てて剣を引き抜こうと力を入れた瞬間――
その声が聞こえた。
「俺のセレスティーナになにしてくれてんだ!!!」
だ……旦那様……なの? いや、旦那様は、西の森へ向かったのだ。こんなところに居るはずがない。きっと最後に女神様が、声を聞かせてくれたのだろう。
『ぐぼぉあああああええええ』
ヴァロノスが顔を殴られ、無様に吹き飛ぶ。
『ぐはっ、ば、ばかな……素手で私にダメージを与えるとは!?』
「良かった、まだ生きてるな。お前が頑丈で助かったよ」
でも、最後に旦那様の声が聞けて良かった。しかも、俺のセレスティーナって確かに聞こえた。嬉しい……もう死んでも良い。いや……きっと、すでに私は死んでいるのだろう。
『うぎゃあああああ!』
先ほどから、悲鳴のような音が聞こえるが、気のせいだ。今の私は、旦那様のセリフを脳内で繰り返すのに忙しいのだ。
「……ナ、……ティーナ!」
私を呼ぶ声が聞こえる。愛しい旦那様の声だ……ああ、逢いたいな、顔が見たい、触れたい。声だけで幸せだったのに。少しだけ淋しくなる。
「セレスティーナ! 大丈夫か?」
旦那様の声が近い。目を開けると、心配そうに覗き込む旦那様の顔があった。幻聴だけでなく、幻覚まで見えるのか……ううん、幻覚でも良い、旦那様に伝えないと……
「よく、よく生きていてくれた、セレスティーナ」
……旦那様……泣いているの?
「ご、ごめんなさい旦那様、でも私、こんなになってしまって」
「良いんだ。もう大丈夫だから」
「でも……もう旦那様と並んで戦えないし、料理も、何もしてあげられない……」
「セレスティーナ……もう、喋るな……」
「ん……んむむ」
え……私、旦那様にキスされてる?
 旦那様から何かが流れ込んできて、とても気持ちがいい。まるで生まれ変わった気分。
感触まであるなんて……そうか、ここは噂に聞く天国なんだろう。だって、無い筈の手足が、ここではちゃんとある。清く正しく生きてきて本当に良かった。
なるほど……それなら、ここにいる旦那様は、私の理想。何をしても許されるってこと? どうしよう……天国って刺激強すぎる。でも、ここには私たち二人きりだし……いいよね?
「旦那様~」
「ん? どうしたんだセレスティーナ?」
「ん……またキスして?」
「ぶっ!! い、いや……わかった」
(んふふふ、照れた旦那様かわいい……天国最高!)
……旦那様とのキス、とっても気持ちがいい。全身がとろけそうになる。
「ねえ、旦那様! 抱っこして?」
「ああ、いくらでも、どうぞお姫様……」
ああ……念願のお姫様抱っこ……幸せ。
抱かれたまま、旦那様の胸板に頭をすりすりこすりつけ、猫のように甘える。
「旦那様~好き、大好き! えへへへ」
「せ、セレスティーナ? そろそろ行かないと――」
「いやー、ずっと一緒にいるの! 離れちゃやだ~」
我ながら引くほどの甘えっぷりだ……しかし、ここは天国、遠慮など……
ふと、生暖かい視線でこちらを見つめるグリフォンと、ボロボロになって死んでいるヴァロノスが視界に入る。
「な、なあ、旦那様、ここは天国か? いや、そうであってくれ!」
「い、いや、エスペランサ砦とプリメーラの中間地点の草原だな」
ボフンッと顔から湯気が出そうなほど、セレスティーナが真っ赤になる。
「ち、ち、ち、違うんだ! 旦那様、お願い全部忘れて!!!」
「え……ヤダよ。あんなかわいいセレスティーナ、完全保存版だし」
「か、か、かわいい? 私が? あわわわ……あれ、では、あれは本物の旦那様が言ったんだな!」
「え、何を?」
「……俺のセレスティーナって言ったでしょ? んふふふ」
「そ、そんなこと言ったっけ?」
「確かに聞きました! 返せっていっても返しませんから!! 本当に嬉しかったんですよ?」
「セレスティーナ……」
「ん……旦那様……」
『主よ、そろそろ戻った方がいいのではないか?』
「……お前、風は読めても、空気は読めないのな……」
「ときに、そこのグリフォン、名は何というのだ?」
『フリューゲルだ。セレスティーナ殿……ひいっ』
振り返ると、がたがた震えるフリューゲルがいた。……何をしたんだセレスティーナさん?
「さあ、はやく皆と合流しなければ! 行こう旦那様!」
***
「ねえ、ミコトさん? カケルさんって格好良いし、優しくて強いんでしょ? 絶対モテモテだから、せっかく逢いに行っても、女の子に囲まれてたらどうするの?」
『……美琴もようやくカケルのことが分かってきた。問題ない、カケルにとって大事な人は、私にとっても大事な人。カケルの家族なら、私の家族でもある。それが伴侶というもの』
「そんなもんですか……」
『ん、そんなもの』
『大丈夫……美琴は私の家族なのだから、カケルにとっても家族同然」
「へ? 私、ミコトさんの家族なんですか?』
『当然……なぜ泣いてる?』
「……なんか、嬉しくて」
『とにかく、カケルのことは心配いらない……毎日カケルレポート、略してKレポートが届くから。動向はレポートで詳しくチェックしているから完璧』
「……それ、略す意味あります? 大体、誰がそんなレポート作ってるんですか?」
『……イリゼ』
「イリゼ様って実は暇なの!?」
~天界~
『イリゼ様、何を熱心に書かれているんですか?』
『あ? レポートだよ、レポート! 提出期限が迫ってるんだよ! 邪魔しないでくれる?』
『……おかしい、なにか間違っている気が……』
カケルの強化、統率の力によって、フリューゲルの能力は跳ね上がっている――が、まだ足りない。嫌な感覚が頭から離れない。
間に合ってくれ……祈るような気持ちでカケルは、セレスティーナの姿を探す。
(……いた、まだ……生きてる)
強化された視力が、セレスティーナを捉える。
……間に合った、とは口が裂けても言えない……
変わり果てた彼女の姿に、これまで感じたことのない怒りの感情が湧いてくる。
思えば、昔から感情の希薄なところがあった。別に薄情だったわけはないと思うが、どこか自分の感情にリミットをかけてバランスを保っていたような気がする。
そうしなければ、きっと瞬間記憶能力と付き合うことができなかったから……
ずっとこの能力が嫌だった。
自分だけ違う世界に住んでいるようで。でも……
セレスティーナの全てを鮮明に思い出すことができる。笑った顔も、怒った顔も、凛とした表情も、照れて赤くなった可愛らしい姿も。
俺を旦那様って、恥ずかしそうに呼ぶ、その鈴が鳴るような綺麗な声も。
そして、誰一人死なせないと、全てを背負い必死に頑張るその高貴な生き様も。そんな能力は……今はもう……嫌いじゃない。
こんな純粋で綺麗な人が本当にいるんだなあって思った。
ミコトさん以外で初めてだ。こんなに誰かを描いてみたくなったのは……
そうだ、この戦いが終わったら、セレスティーナの絵を描こう。
『スケッチブックのレベルが上がりました』
セレスティーナを襲っている奴が目に映る。頭は沸騰し、心は零下まで冷える。
『瘴気操作を記憶しました』
許せねえ、許せねえ……絶対に許さねえ。なにしてんだよ……てめえ、
「俺のセレスティーナになにしてくれてんだ!!!」
「フリューゲル、思いっきり俺を飛ばせ」
『承知した主よ』
フリューゲルの風魔法で弾丸のように撃ち出される。
(……飛翔……加速)
加速スキルで更に速度を上げて接近する。
(デスサイズは使わねえ……)
ギリリと血が出るほど握り締めた拳で、ヴァロノスをぶん殴った。
***
最初、なにが起きたかわからなかった。
突然の突風で、ヴァロノスの剣先がわずかに逸れ、大剣が地面に突き刺さる。
そして、ヴァロノスが、慌てて剣を引き抜こうと力を入れた瞬間――
その声が聞こえた。
「俺のセレスティーナになにしてくれてんだ!!!」
だ……旦那様……なの? いや、旦那様は、西の森へ向かったのだ。こんなところに居るはずがない。きっと最後に女神様が、声を聞かせてくれたのだろう。
『ぐぼぉあああああええええ』
ヴァロノスが顔を殴られ、無様に吹き飛ぶ。
『ぐはっ、ば、ばかな……素手で私にダメージを与えるとは!?』
「良かった、まだ生きてるな。お前が頑丈で助かったよ」
でも、最後に旦那様の声が聞けて良かった。しかも、俺のセレスティーナって確かに聞こえた。嬉しい……もう死んでも良い。いや……きっと、すでに私は死んでいるのだろう。
『うぎゃあああああ!』
先ほどから、悲鳴のような音が聞こえるが、気のせいだ。今の私は、旦那様のセリフを脳内で繰り返すのに忙しいのだ。
「……ナ、……ティーナ!」
私を呼ぶ声が聞こえる。愛しい旦那様の声だ……ああ、逢いたいな、顔が見たい、触れたい。声だけで幸せだったのに。少しだけ淋しくなる。
「セレスティーナ! 大丈夫か?」
旦那様の声が近い。目を開けると、心配そうに覗き込む旦那様の顔があった。幻聴だけでなく、幻覚まで見えるのか……ううん、幻覚でも良い、旦那様に伝えないと……
「よく、よく生きていてくれた、セレスティーナ」
……旦那様……泣いているの?
「ご、ごめんなさい旦那様、でも私、こんなになってしまって」
「良いんだ。もう大丈夫だから」
「でも……もう旦那様と並んで戦えないし、料理も、何もしてあげられない……」
「セレスティーナ……もう、喋るな……」
「ん……んむむ」
え……私、旦那様にキスされてる?
 旦那様から何かが流れ込んできて、とても気持ちがいい。まるで生まれ変わった気分。
感触まであるなんて……そうか、ここは噂に聞く天国なんだろう。だって、無い筈の手足が、ここではちゃんとある。清く正しく生きてきて本当に良かった。
なるほど……それなら、ここにいる旦那様は、私の理想。何をしても許されるってこと? どうしよう……天国って刺激強すぎる。でも、ここには私たち二人きりだし……いいよね?
「旦那様~」
「ん? どうしたんだセレスティーナ?」
「ん……またキスして?」
「ぶっ!! い、いや……わかった」
(んふふふ、照れた旦那様かわいい……天国最高!)
……旦那様とのキス、とっても気持ちがいい。全身がとろけそうになる。
「ねえ、旦那様! 抱っこして?」
「ああ、いくらでも、どうぞお姫様……」
ああ……念願のお姫様抱っこ……幸せ。
抱かれたまま、旦那様の胸板に頭をすりすりこすりつけ、猫のように甘える。
「旦那様~好き、大好き! えへへへ」
「せ、セレスティーナ? そろそろ行かないと――」
「いやー、ずっと一緒にいるの! 離れちゃやだ~」
我ながら引くほどの甘えっぷりだ……しかし、ここは天国、遠慮など……
ふと、生暖かい視線でこちらを見つめるグリフォンと、ボロボロになって死んでいるヴァロノスが視界に入る。
「な、なあ、旦那様、ここは天国か? いや、そうであってくれ!」
「い、いや、エスペランサ砦とプリメーラの中間地点の草原だな」
ボフンッと顔から湯気が出そうなほど、セレスティーナが真っ赤になる。
「ち、ち、ち、違うんだ! 旦那様、お願い全部忘れて!!!」
「え……ヤダよ。あんなかわいいセレスティーナ、完全保存版だし」
「か、か、かわいい? 私が? あわわわ……あれ、では、あれは本物の旦那様が言ったんだな!」
「え、何を?」
「……俺のセレスティーナって言ったでしょ? んふふふ」
「そ、そんなこと言ったっけ?」
「確かに聞きました! 返せっていっても返しませんから!! 本当に嬉しかったんですよ?」
「セレスティーナ……」
「ん……旦那様……」
『主よ、そろそろ戻った方がいいのではないか?』
「……お前、風は読めても、空気は読めないのな……」
「ときに、そこのグリフォン、名は何というのだ?」
『フリューゲルだ。セレスティーナ殿……ひいっ』
振り返ると、がたがた震えるフリューゲルがいた。……何をしたんだセレスティーナさん?
「さあ、はやく皆と合流しなければ! 行こう旦那様!」
***
「ねえ、ミコトさん? カケルさんって格好良いし、優しくて強いんでしょ? 絶対モテモテだから、せっかく逢いに行っても、女の子に囲まれてたらどうするの?」
『……美琴もようやくカケルのことが分かってきた。問題ない、カケルにとって大事な人は、私にとっても大事な人。カケルの家族なら、私の家族でもある。それが伴侶というもの』
「そんなもんですか……」
『ん、そんなもの』
『大丈夫……美琴は私の家族なのだから、カケルにとっても家族同然」
「へ? 私、ミコトさんの家族なんですか?』
『当然……なぜ泣いてる?』
「……なんか、嬉しくて」
『とにかく、カケルのことは心配いらない……毎日カケルレポート、略してKレポートが届くから。動向はレポートで詳しくチェックしているから完璧』
「……それ、略す意味あります? 大体、誰がそんなレポート作ってるんですか?」
『……イリゼ』
「イリゼ様って実は暇なの!?」
~天界~
『イリゼ様、何を熱心に書かれているんですか?』
『あ? レポートだよ、レポート! 提出期限が迫ってるんだよ! 邪魔しないでくれる?』
『……おかしい、なにか間違っている気が……』
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