異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
神の息吹
『どうしました? もう終わりですか。いい加減、諦めたらどうです』
言葉とは裏腹に、内心ヴァロノスは酷く動揺していた。
(ま、まずい……なんなんだ、この女は。片手を失った状態で、この魔人貴族たる私を8回も殺すとは。残りの命はあと二つ。やむを得ん……寿命が縮むから、出来れば使いたくはなかったが……)
ヴァロノスは、切り札を使う決意を固める。これ以上命を失えば、貴族としての地位を失うことに成りかねないからだ。
『……そろそろお遊びも飽きてきました。終わりにしましょう、【瘴気解放】』
ヴァロノス男爵の心臓のあたりから、どす黒い瘴気が広がり一帯を瘴気で覆い尽くす。
「ぐっ、なんだこれは……身体が重くなって――」
セレスティーナが苦悶の表情を浮かべ、呼吸もみるみる荒くなってゆく。
『ふはははっ、これが、魔人貴族種のみに発動可能な瘴気の結界【カースス】です。この結界の中では、あなたの能力は半減し、そして……私の力は倍増するのですよ! ――こんな風にね』
ヴァロノスが凄まじい速度で接近、セレスティーナは攻撃を受けきれず、吹き飛ばされる。
『どうです? もうあなたに勝ち目などないのですよ! それなのに……なんです? その目は』
もはや、辛うじて立っているような状態だ。体力はとうに限界を超え、音もよく聞こえていないのではないか。魔力ももうほとんど残っていないはずなのに……なぜ、目が死んでいない!?
『……ちっ、もういいです。あなたの心を折ろうと思いましたが、もう死んでください!』
問答無用で襲い掛かるヴァロノス――――しかし、
――――【先祖返り】――――
セレスティーナのプラチナブロンドの髪が、漆黒の黒髪に変わる。最後の奥の手【先祖返り】スキルを発動したのだ。
アストレア王家には、多くの異世界人の血が受け継がれており、【先祖返り】スキルは、ランダムではあるが、先祖のユニークスキルを使えるようになるのだ。ただし、一度発動すると動けなくなるほど疲弊するため、まさに最後の切り札としてしか使用はできないのだが。
――――【殺戮の円舞】――――
異世界人である長坂京也のもつユニークスキル【殺戮の円舞】発動した相手に対してのみ戦闘力3倍、相手を殺すまで止まらない死のワルツ。
圧倒的な殺戮者の理不尽。ヴァロノスは為すすべもなく、切り裂かれ、蹂躙される。もはやヴァロノスに戦意のかけらも残っていないが、それでも円舞は止まらない。殺すまでは止まれない。
『……はあ、はあ、それでも、私の勝ちです』
もう、命は残っていない。だが、最後に立っていた方が勝者だ。
一度ヴァロノスを殺したことで、スキルはすでに解除された。もはや動けなくなったセレスティーナを見下ろし、満足そうに笑う。
『私をここまで虚仮にしたんです。ただでは殺しませんよ』
冷酷な笑顔を浮かべながら、喜々としてセレスティーナの両足を切断するヴァロノス。
『さあ……これで逃げることも出来なくなりましたねえ。ふひっ、ひひいひい。最後はお前のその忌々しい剣で殺してやります』
セレスティーナの持つ魔剣イルナシオンに目を向けると、最後に残った右手を踏みにじる。
『さっさと剣を離せっ、この――――』
最後は手首毎切り落とし、にんまりと笑う。
『てこずらせおって……さあ、自らの剣で殺される気分はどうだ?』
「……貴様にその剣は絶対に使えない……」
『ふん、強がりを――――』
剣を持ち上げようとするが、重くてびくともしない。
魔剣イルナシオンは、自ら主を選ぶ魔剣だ。選ばれしものには羽よりも軽く、そうでないものには星よりも重い。
セレスティーナが、イルナシオンを持っているのは、王女だからではなく、彼女が、イルナシオンに選ばれしものだから。
魔剣イルナシオンが、悲しそうな波動を放ち、セレスティーナの元へ戻ろうと動き出す。まるで磁石に吸い寄せられるように。
『たかが剣の分際で生意気な!』
阻止せんと両手でつかんだ瞬間、剣に触れた両手が、焼けただれる。
『ぎゃああああ!』
『くっ、瘴気に反応したのか……最後まで私に盾突きおって! もう終わりだ、死ね!』
セレスティーナの剣で殺すことを諦め、自らの大剣を振りかざす。
イルナシオンが、一際強く輝きを放ち、ヴァロノスを吹き飛ばす。
そして、最後にセレスティーナに弱々しい波動を送ると、力を使い果たしたように輝きを失った。
「私を守ろうとしてくれたのだな……ありがとうイルナシオン」
『はぁ、はぁ、もう邪魔するものはいない、ぞ』
ヴァロノスが、今度こそはと、大剣を再び振りかざす。
(……ここまでか……皆すまない、あと一歩及ばなかった。父上、母上、兄上や姉上も……結局、探し出すことも、助けることもできず、申し訳ございませんでした。サクラ、後は頼みました。女神様……願わくば、最後に旦那様に逢いたかった……)
ふと、振り下ろされた剣が止まる。良い事を思いついたとばかりに、顔が醜く歪む。
『あ、そうそう、言い忘れてましたが、あの時逃がしたお前の部下たちは、今頃、先にあの世に行ってますよ。最強の部下たちに待ち伏せさせてますからね。救援部隊も全滅。プリメーラとかいう都市も今頃、西、南と東の3方向からの同時攻撃で陥落しているでしょうね……ふふふ、悔しいでしょう? さあ絶望にまみれて死になさい――――ん? 何がおかしい、絶望で気が触れたか?』
セレスティーナは、おかしくて堪らないといった様子で笑い、ヴァロノスに告げる。
「ああ、そうそう、言い忘れていたが、待ち伏せしているお前の部下は、今頃、先にあの世に行っている。私の部下たちは最強だからな。救援部隊も待ち伏せた魔物どもを必ず全滅させる。南は旦那様が汚い企みごと殲滅した。西は、旦那様が向かった時点で終わりだ。したがって、プリメーラは陥落しない。私の手で貴様を倒せなかったのは残念だが、必ず旦那様が、貴様を倒す。貴様だけではない。貴様ら魔人帝国の企みごと、必ず旦那様が潰す! 覚えておけ!」
『何を言うかと思えば、ベラベラとッ! 二度と戯言を吐けぬよう、永遠に黙らせてやる!』
狙い違わず大剣が振り下ろされた瞬間――
――――猛烈な突風が吹いた――――
軌道を逸らされた大剣は、硬い岩盤に深々と突き刺さる。
(……季節外れの神の息吹か……)
この世界では、突風のことを、神の息吹と呼ぶ。この季節に吹くことは、大変珍しい。
『ハクシュン!』
『イリゼ様、お風邪でもひかれましたか?
いくらお忙しいとはいえ、ちゃんと休んで下さいね!』
『わかってる、わかってる』
ひらひらと手を振る女神イリゼ。
(あまり個人的な介入はしたくないんだけど……これだけ多くの人々からの真摯な願いを無視できるほど私は忙しくも無いし、無慈悲でもないのよ……貴方のこれまでの生き様が、女神すら動かし貴方自身を助けたの……誇りなさいセレスティーナ)
(……カケルくん、後は上手くやりなさいよね)
イリゼは慌ただしく女神業務に戻ってゆく。
言葉とは裏腹に、内心ヴァロノスは酷く動揺していた。
(ま、まずい……なんなんだ、この女は。片手を失った状態で、この魔人貴族たる私を8回も殺すとは。残りの命はあと二つ。やむを得ん……寿命が縮むから、出来れば使いたくはなかったが……)
ヴァロノスは、切り札を使う決意を固める。これ以上命を失えば、貴族としての地位を失うことに成りかねないからだ。
『……そろそろお遊びも飽きてきました。終わりにしましょう、【瘴気解放】』
ヴァロノス男爵の心臓のあたりから、どす黒い瘴気が広がり一帯を瘴気で覆い尽くす。
「ぐっ、なんだこれは……身体が重くなって――」
セレスティーナが苦悶の表情を浮かべ、呼吸もみるみる荒くなってゆく。
『ふはははっ、これが、魔人貴族種のみに発動可能な瘴気の結界【カースス】です。この結界の中では、あなたの能力は半減し、そして……私の力は倍増するのですよ! ――こんな風にね』
ヴァロノスが凄まじい速度で接近、セレスティーナは攻撃を受けきれず、吹き飛ばされる。
『どうです? もうあなたに勝ち目などないのですよ! それなのに……なんです? その目は』
もはや、辛うじて立っているような状態だ。体力はとうに限界を超え、音もよく聞こえていないのではないか。魔力ももうほとんど残っていないはずなのに……なぜ、目が死んでいない!?
『……ちっ、もういいです。あなたの心を折ろうと思いましたが、もう死んでください!』
問答無用で襲い掛かるヴァロノス――――しかし、
――――【先祖返り】――――
セレスティーナのプラチナブロンドの髪が、漆黒の黒髪に変わる。最後の奥の手【先祖返り】スキルを発動したのだ。
アストレア王家には、多くの異世界人の血が受け継がれており、【先祖返り】スキルは、ランダムではあるが、先祖のユニークスキルを使えるようになるのだ。ただし、一度発動すると動けなくなるほど疲弊するため、まさに最後の切り札としてしか使用はできないのだが。
――――【殺戮の円舞】――――
異世界人である長坂京也のもつユニークスキル【殺戮の円舞】発動した相手に対してのみ戦闘力3倍、相手を殺すまで止まらない死のワルツ。
圧倒的な殺戮者の理不尽。ヴァロノスは為すすべもなく、切り裂かれ、蹂躙される。もはやヴァロノスに戦意のかけらも残っていないが、それでも円舞は止まらない。殺すまでは止まれない。
『……はあ、はあ、それでも、私の勝ちです』
もう、命は残っていない。だが、最後に立っていた方が勝者だ。
一度ヴァロノスを殺したことで、スキルはすでに解除された。もはや動けなくなったセレスティーナを見下ろし、満足そうに笑う。
『私をここまで虚仮にしたんです。ただでは殺しませんよ』
冷酷な笑顔を浮かべながら、喜々としてセレスティーナの両足を切断するヴァロノス。
『さあ……これで逃げることも出来なくなりましたねえ。ふひっ、ひひいひい。最後はお前のその忌々しい剣で殺してやります』
セレスティーナの持つ魔剣イルナシオンに目を向けると、最後に残った右手を踏みにじる。
『さっさと剣を離せっ、この――――』
最後は手首毎切り落とし、にんまりと笑う。
『てこずらせおって……さあ、自らの剣で殺される気分はどうだ?』
「……貴様にその剣は絶対に使えない……」
『ふん、強がりを――――』
剣を持ち上げようとするが、重くてびくともしない。
魔剣イルナシオンは、自ら主を選ぶ魔剣だ。選ばれしものには羽よりも軽く、そうでないものには星よりも重い。
セレスティーナが、イルナシオンを持っているのは、王女だからではなく、彼女が、イルナシオンに選ばれしものだから。
魔剣イルナシオンが、悲しそうな波動を放ち、セレスティーナの元へ戻ろうと動き出す。まるで磁石に吸い寄せられるように。
『たかが剣の分際で生意気な!』
阻止せんと両手でつかんだ瞬間、剣に触れた両手が、焼けただれる。
『ぎゃああああ!』
『くっ、瘴気に反応したのか……最後まで私に盾突きおって! もう終わりだ、死ね!』
セレスティーナの剣で殺すことを諦め、自らの大剣を振りかざす。
イルナシオンが、一際強く輝きを放ち、ヴァロノスを吹き飛ばす。
そして、最後にセレスティーナに弱々しい波動を送ると、力を使い果たしたように輝きを失った。
「私を守ろうとしてくれたのだな……ありがとうイルナシオン」
『はぁ、はぁ、もう邪魔するものはいない、ぞ』
ヴァロノスが、今度こそはと、大剣を再び振りかざす。
(……ここまでか……皆すまない、あと一歩及ばなかった。父上、母上、兄上や姉上も……結局、探し出すことも、助けることもできず、申し訳ございませんでした。サクラ、後は頼みました。女神様……願わくば、最後に旦那様に逢いたかった……)
ふと、振り下ろされた剣が止まる。良い事を思いついたとばかりに、顔が醜く歪む。
『あ、そうそう、言い忘れてましたが、あの時逃がしたお前の部下たちは、今頃、先にあの世に行ってますよ。最強の部下たちに待ち伏せさせてますからね。救援部隊も全滅。プリメーラとかいう都市も今頃、西、南と東の3方向からの同時攻撃で陥落しているでしょうね……ふふふ、悔しいでしょう? さあ絶望にまみれて死になさい――――ん? 何がおかしい、絶望で気が触れたか?』
セレスティーナは、おかしくて堪らないといった様子で笑い、ヴァロノスに告げる。
「ああ、そうそう、言い忘れていたが、待ち伏せしているお前の部下は、今頃、先にあの世に行っている。私の部下たちは最強だからな。救援部隊も待ち伏せた魔物どもを必ず全滅させる。南は旦那様が汚い企みごと殲滅した。西は、旦那様が向かった時点で終わりだ。したがって、プリメーラは陥落しない。私の手で貴様を倒せなかったのは残念だが、必ず旦那様が、貴様を倒す。貴様だけではない。貴様ら魔人帝国の企みごと、必ず旦那様が潰す! 覚えておけ!」
『何を言うかと思えば、ベラベラとッ! 二度と戯言を吐けぬよう、永遠に黙らせてやる!』
狙い違わず大剣が振り下ろされた瞬間――
――――猛烈な突風が吹いた――――
軌道を逸らされた大剣は、硬い岩盤に深々と突き刺さる。
(……季節外れの神の息吹か……)
この世界では、突風のことを、神の息吹と呼ぶ。この季節に吹くことは、大変珍しい。
『ハクシュン!』
『イリゼ様、お風邪でもひかれましたか?
いくらお忙しいとはいえ、ちゃんと休んで下さいね!』
『わかってる、わかってる』
ひらひらと手を振る女神イリゼ。
(あまり個人的な介入はしたくないんだけど……これだけ多くの人々からの真摯な願いを無視できるほど私は忙しくも無いし、無慈悲でもないのよ……貴方のこれまでの生き様が、女神すら動かし貴方自身を助けたの……誇りなさいセレスティーナ)
(……カケルくん、後は上手くやりなさいよね)
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