異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

私の王子様

「サクラ隊長、この先、魔物の大群がいて、道を塞がれております」


 先行させていた斥候によると、一万近い魔物が道を塞いでいるらしい。


「偶然ではないな……まさか、最初から待ち伏せされていたというのか?」


 突然、男の笑い声が響き渡る。


『はははっ、大正解! おめでとう、お前らは大当たりだ。俺様たちの部隊と遭遇できるなんて実についてる。他の連中は、今頃魔物に喰われちまってるだろうしな』


 なんだ、こいつらは、人間のようにも見えるが、先ほどの男と同じ嫌な感じがする。病的なほど青白い肌に、金髪、金色の瞳……こんな種族見たことがない。


「貴様らは、先ほどコカトリスのところにいた男の仲間だな?」


 セレスティーナ様と戦っていた男の姿と重なる部分があるのだ。嫌な予感がする。


『お前ら……ヴァロノス様に会ったのか。よく無事だったな』
『そりゃ、あれだろ? 俺たちにも獲物を残してくれたんだろ。さすが男爵様』


「……話が見えないが、要するに貴様らが、この戦いをしかけた張本人だということだな?」


 サクラは、油断無く陣形を立て直しながら、謎の男たちを睨み付ける。


『またまた大正解! いいね……頭のいい子は嫌いじゃない。それに、よくみればすっごく好みだし。ねえ、この子俺がもらってもいい?』
『けっ、確かに見た目はいいが、人間だぞ? まったく物好きな奴だな。では、残りは俺たちがもらうぞ』


『いいよ。人間の男なんて興味ないし』
『よし、いいな、見た目の良いやつは殺すなよ。利用価値があるからな』


 まるで自分たちの存在を無視するかのように獲物の取り分を話し合う男たち。単なる馬鹿か、自信故の余裕か……前者であって欲しいが、おそらく後者で間違いあるまい。


「レオン、奴らのあの余裕、よほど力に自信があるのだろう。陣形を崩さず、必ず複数で戦い数的有利を保つんだ」


 幸いなことに、敵の数はわずか5人。対するこちらは50人いる。あの様子では、どうやら魔物を使うつもりは無さそうだ。油断している今が絶好のチャンスだ。


 やつらの気が変わらないうちに勝負をつける!


「隊長、やつらが何者かは関係ない。我々プリメーラ騎士団の力を見くびった報い、受けさせてやりましょう!」


「……一気にカタをつける、総員準備。あれをやるぞ」
「「「「了解です、隊長」」」」




「樹木魔法【悠久の牢獄】!」




 サクラの樹木魔法が発動、地中から無数のツタが襲い掛かり、敵の身体を拘束する。


『へっ、なんだこれは、こんなもので俺たちを拘束できると思って――ぎゃあああっ』


 悠久の牢獄の真骨頂は、拘束した後にある。巻き付いたツタは、魔力を吸収し、その魔力を糧にツタはより強く、太く成長し締め付けを強めてゆく。その拘束は、魔力を吸い尽くすまで終わることはない。


 巻き付いたツタが、もの凄い勢いで成長し、敵の全身を締め上げ骨を砕く。敵の魔力が高ければ高いほど、威力が上がるだけに、強敵を封じるのに最適な魔法だといえる。


 ツタ自体に、スピードと威力がそれほどないのが難点だが、今回は相手が力を過信し、油断していることをうまく利用したのだ。


 敵は、全身を砕かれ、魔力も枯渇寸前で瀕死の状態だ。もはや声を上げることすらできない。


「全員油断するな、一気に止めを刺すぞ」


 騎士団員の一斉攻撃が始まる。各種属性魔法を遠距離から撃ち込み、中距離から槍を投擲。最後に接近した騎士たちが敵の首を落とすまで、わずか3秒。騎士団必殺のコンボが見事に炸裂した。


 5人が死んだことを確認し、陣形を組み直す。


「よし、次は魔物の群れを突破して、味方と合流するぞ。指揮官を失った以上、戦意は落ち、脆くなっているはずだ。いくぞ、突撃!」


 サクラの合図とともに、魔物の群れに突撃をかける騎士団の背後から、轟音とともに、凄まじい威力の魔法が放たれ、無防備な騎士団の背中に直撃した。


「ぐっ、な、なにが起きた……えっ……?」


 さすがに精鋭ぞろいの騎士団だけに、深手は負ったものの、死者は出ていない。しかし――


『おいおい、誰だよ人間が弱いって言ってたやつは? めちゃくちゃ痛かったじゃねえか……』


 服はボロボロだが、身体は何もなかったように無傷の男たち5人がそこに立っていた。


『ダメだ……怒りが収まらねえ、こいつら皆殺しにしていいよな?』
『もったいないが仕方ねえ、ただ殺すだけじゃ面白くない、手足一本ずつ引きちぎってやる』


 (くそっ、なぜ生きている? 確実に倒したはずだ……このままではマズイ……【癒しの樹液】)


 即座に回復魔法を使い、自身と仲間を回復させる。完全回復は無理だが、多少動けるようにはなった。


『今度は油断しねえ……行け! そいつらを逃がすな!』


 魔物の大群が背後から襲い掛かり、前からは、5人の男が突っ込んでくる。


 絶望的な状況だが、サクラは諦めない。即座に指示を飛ばす。


「二手に分かれろ、半分は背後の魔物を、残りは前の連中だ、5人一組で当たれ」


 しかし、先ほど受けたダメージもいまだ残り、連戦の疲労が蓄積している。いくら精鋭とはいえ、長くは持たない。徐々に押され始め、なにより、5人の男の得体の知れなさが、サクラたちの精神を削ってゆく。


「はあ、はあ……、こいつら不死身なの?」


 倒したはずの敵が、目の前で復活してゆくのを見れば、そう思っても仕方がない。


『お前、なにまたやられちゃってんの? 人間ごときに何度もやられて恥ずかしくないの?』
『ぐぬぬっ、ふざけやがって、今度こそぶっ殺してやる!』


 必死の思いで倒しても、すぐに復活して襲い掛かってくるのだ。気持ちが、心が折れそうになる。


(……セレスティーナ様はご無事だろうか? こんな化け物とたった一人で……)


「諦めるな、不死身などありえん。やつらの反応を見て確信した。復活には必ず限界がある、復活しなくなるまで、何度でも倒すのだ!」


 ここで自分が諦めたら、すべてが終わる。敬愛する主ならば、こんなことで諦めたりはしないから。サクラは、気力を振り絞り、必死に仲間を鼓舞し続ける。


『ちっ、あの女が邪魔だな……おい、あの女から先にやるぞ』


 5人が一斉にサクラに襲い掛かる。 


(だめ、間に合わない、セレスティーナ様……)






 しかし、5人の攻撃が、サクラに届くことはなかった。






「……男5人で女の子を攻撃するとか、相当かっこ悪いよ? お前ら」


「お、王子様……?」 


 白馬ならぬグリフォンに乗った黒目黒髪の青年が、サクラの前に立ち塞がっていた。


 見たこともない巨大な武器を手にし、あっという間に5人を切りとばす。様々なスキルを使っていたようだが、サクラの目をもってしても、何をしたのか、全くわからなかった。


「王子様! 気をつけてください。あいつら、死んでも復活します!」
「お、王子様? あ、ああ、わかった、大丈夫だ。あと1回で終わる」


「ミヅハ、頼めるか?」
『お任せください、お兄様』


 復活した5人の体は、すでに水の球体の中にあった。


『ごぼぼぼぼぼっ(息ができないっ)』


 5人は、そのまま窒息を繰り返し全員死亡。今度こそ生き返ることはなかった。そのまま魂を吸収する。


『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』 
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』 
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』 
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』 
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』 
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』


 うおっ、めっちゃレベル上がったんだけど……それより……セレスティーナがいない?


「サクラさん、騎士団長はどこに?」
「団長は、一人残って敵の指揮官と戦っているはずです。王子様、お願い、団長を、セレスティーナ様を助けてください」


「……わかった。クロエ、シルフィ、サラ、エヴァ、後を頼む」


 カケルはフリューゲルにまたがり、放たれた矢のごとく最前線を目指す。


(今行くからな……死ぬなよ、セレスティーナ!)


 

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