異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

姫騎士セレスティーナ

 その夜は、カルロスさん主催の豪華な食事会が催され、食事もなかなか美味しかったのだが、食事以上に嬉しい驚きが俺を待っていた。なんと屋敷にはお風呂があったのだ。


 時間経過的には、一昨日ミコトさんと一緒に入ったばかりなのだが、日本人としては、出来れば毎日風呂に入りたい。昨日はゴブリンたちと戦ったし、夜も濡れた布で体を拭いただけなので、なおさらだ。


 カルロスさんは、余程風呂にこだわりがあるのだろう。夕食の間、風呂の素晴らしさを熱弁していた。なんでも昔の勇者が広めた風習らしい。


 プリメーラで一番だと豪語するだけあって、綺麗な天然石が敷き詰められた大浴場は、実際、地上の天国かと見紛うほど見事だったよ。


 でも、本当の天国はその後に待っていた。


 風呂場には、二人の可愛いうさ耳メイドさんが待機していて、俺の体を実に丁寧に洗ってくれた。背中だけでなく、文字通り全身くまなく洗っていただき王様気分が味わえました。一応遠慮はしたんだけどね。本当だよ。


『洗体を記憶しました』


 おまけにスキルまでゲット出来た。使いどころが微妙だけど意識飛ぶほど気持ち良かったし、練習してミコトさんをいつか洗ってあげようと思う。




 でも、最初は苦労して、安い宿屋に泊まってお金を稼ぐことになるかなって思っていたのに、ゼロからどころか、VIP待遇から始まる異世界生活になってしまった。


 魂を集めるという目的を考えれば、余計な苦労をしないに越したことはないし、魂集めに集中できると考えればメリットしかない。


 明日は、冒険者ギルドへ行って冒険者登録をするつもりだし、ワクワクして、遠足前の小学生に戻った気分だ。


 早くもっと強くなって、ガンガン魔物を狩りまくらないとな。ふわふわのベッドに飛び込み目を閉じる。睡魔はすぐに襲い掛かって来た。


 異世界生活2日目終了。




***


 西の森 ゴブリンの洞窟


「セレス団長、洞窟内部の調査完了。内部にいたゴブリン29体とゴブリンリーダー3体殲滅いたしました」


「うむ、ご苦労。しかし、この短期間でここまで数が戻ってきているとなると、別の集団がいる可能性が高いか。これは思ったより深刻な状況かもしれないな」


 念の為と思って調査にきて正解だった。西の森にゴブリンの集団が現れただけでも問題だが、複数の拠点が存在するとなると、一大事だ。背後に組織的な動きがあるとみるべきだろう。


 これだけの規模となると、少なくともゴブリンジェネラル以上の個体が率いているはずだ。最近の東領域からの侵攻が激しくなっているのも関係があるのかもしれない。


 魔物、特に人型の魔物は、人間同等の知能がある。陽動、または挟撃か……いずれにしても、西の森を抑えられるとプリメーラは逃げ道を失うことになる。絶対に阻止しなければ……。


「アルベルト、私は一旦戻って作戦を立て直す。周辺町村への警告と、場合によってはギルドと連携が必要になるかもしれない。お前はこのまま、この洞窟周辺の調査を続けてくれ」


「はっ、ゴブリンどもを殲滅しつつ、拠点の特定を優先すればよろしいでしょうか」


「そうだな。敵の勢力を削ぎつつ、拠点の特定に集中してくれ。いいか、敵の規模がわからない以上、絶対無理はするな。戻り次第、増援部隊を送る。合流してから動いてくれ」 


「はっ、団長もお気を付け下さい。護衛は何名――」 
「不要だ。なるべく此処に戦力を残したい」


 そう告げて、セレス団長は騎竜を駆り、風のように森に消えてゆく。


(団長こそ、無理なさならいでくださいね……)


 セレス団長と初めてお会いしたのは半年前の忌まわしい災厄が起きた直後だった。


 隣国アストレアが、突然の魔物大侵攻によって落とされた際、親善大使としてプリメーラに滞在していたセレス団長――当時はセレスティーナ姫――は難を逃れ、現在我がアルカリーゼ公国の保護下にある。 


 現状、生存が確認されている唯一の王族のため、本来であれば、王都で保護されるべき方なのだが、本人たっての希望で、今も最前線に立ち続けておられる。


 短い付き合いではあるが、団長は本当に気高く聡明で、なにより心優しいお方だと断言できる。同僚の騎士はもちろん、どんな人々とも分け隔てなく接し、誰一人死なせないというのが口癖になっているほどだ。


 団長自身は何も語らないが、自分だけが助かったこと、国民や家族を守れなかったこと、そして今現在も、反撃どころか防戦一方の状況への苛立ち、不甲斐無さ……すべてを飲み込んで、プリメーラを守るために働いておられるのだろう。


 怒られるかもしれないが、いざというときは、命に代えても団長を守るつもりだ。命に貴賤はないが、死なせてはならない命もある。


 偵察隊から報告が入る。


「アルベルト様、ここから西へ3キロ地点で、ゴブリンらしき集団を発見しました」


「よし、そのまま監視を続けろ。いいか絶対に無理はするなよ。犠牲者を出すことは許されんのだ」


***


 プリメーラ城 領主 アルフレイド伯爵 執務室




「アルフレイド様、カルロス商会会頭カルロス殿が面会したいと使いを寄越しております。いかがいたしますか」


 執事のセバスチャンが恭しく頭を下げ執務室へ入ってきた。カルロスだって? 確か重病で、今日明日にも死にそうだって聞いていたけど、情報が間違っていたのか、それとも何か思いもよらぬことでもあったのか。うん。後者だといいなあ。面白そうだし。


「わかった。明日にでも会おう。時間の調整は任せるよ、セバス」 


「かしこまりました。それから、セレス団長が先ほど戻られまして、至急の報告があるとのことです」


「……セレス団長は調査に向かったはずだよね。何かあったのかな。よし、すぐに会おう」


「セレス団長は外でお待ちですので、すぐ呼んでまいります」


 セバスと入れ替えに、セレス団長が入ってくる。


 白い騎士鎧に輝くようなプナチナブロンドの髪。アストレア王族にのみ現れる美しく高貴な髪色に、ブルートパーズを思わせる強い意志を秘めた瞳が、人目を引きつけて離さない。


(相変わらず美しいな……)


 氷のような冷静さと、炎のような激情。相反するものが同居する奇跡、アルフレイドはそう思っている。


「アルフレイド殿、お時間いただき感謝する。実は―― 」


 セレス団長の報告内容は、とても放置できないものだった。


「……なるほど。確かにきな臭いね。とはいえ、もし挟撃や陽動が狙いだとすれば、現状騎士団を大きく動かすのは危険だ。となると、やはり西の森に関しては、冒険者ギルドの協力を仰いだほうがいいだろうな」


「私もそう判断した。これからギルドと話し合って、明日にでも特別依頼を出そうと考えている」


「わかった。予算に関しては、こちらで用意しよう。詳細は任せる。頼んだよ、セレス団長」


 










  

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