異能学院の復讐者
1話
「……………」
──真っ直ぐに伸びる何の飾りもない廊下。
そんな廊下を、一人の少年が歩いていた。
金髪に三白眼。学ランのボタンは全て外されており、ズボンにはウォレットチェーンが付いている。
その手には大きなバッグを持っているが、全く重そうな素振りを見せず──少年は淡々と廊下を進んでいく。
──ピタッと、一つの部屋の前で歩みを止めた。
803号室──そう書かれた扉の鍵穴に、少年はポケットから取り出した鍵を差し込んだ。
「……ンァ……?」
何か違和感を感じたのか、鍵を捻った少年は首を傾げた。
……鍵が開いている?
鋭い目をさらに細める少年は──ふと、いつの日かに貰ったこの学院の資料の内容を思い出した。
──『異能学院 第四分院 高等部』。
この学院は全寮制で、二人一組で行動するのが基本。
寮室も一緒。クラスの席も隣。食事や訓練も共に行う。
これは、【異能力】に関係する仕事に勤める事になった場合、二人一組で仕事に当たるのが普通となるため、その事前練習のようなものらしい。
故に──この部屋の鍵が開いているのは、少年のペアとなる人物がこの部屋の中にいるからだろう。
持っていた荷物を床に置き、少年は部屋の扉を開け──
「──ぇ」
「あァ……?」
──部屋の中には、少女がいた。
腰まで伸びた白色の髪に、綺麗な赤色の瞳を持った──下着姿の少女だ。
数秒ほど沈黙が室内を包み込み──少女の顔が、一気に真っ赤になる。
そっと物音を立てずに部屋を出た少年は、もう一度扉に書かれている部屋番号を確認した。
……803号室だ。間違いなく、これから少年が生活する部屋だ。
という事は──
再びドアノブに手を掛け──何かを感じ取ったのか、素早く真横へと飛んだ。
直後──ゴウッ! と、扉の向こうから紅蓮の火球が現れる。
火球は扉を呑み込み、先ほどまで少年が立っていた所を焼き尽くし──石造りの廊下の壁に激突して霧散した。
「ンのッ……! いきなり【異能力】ぶっ放してくンじゃねェよォ……!」
咄嗟にバッグを持ち上げていなかったら、扉ごと荷物が燃やされていた。
荷物を担ぎ直し──先ほどの少女が、部屋の外に出て来る。
「あ、あなた! いきなりなんのつもりですか?!」
「るっせェテメェがオレが部屋にいンのが悪ィンだろうがァ!」
大声を上げる少女に対し、少年もまた怒号を飛ばす。
──そう。この二人はまだ知らない。
この相性最悪の相手が、将来自分の正式なペアになる事を。
そして──後に、最強のペアとして名を馳せる事になる事を。
「は、はぁ?! いきなり人の部屋に入っておいて、謝罪もないんですか?!」
「あァ?! ンっでオレがテメェに謝らなきゃなンねェンだァッ?!」
──二人は、まだ知らない。
──真っ直ぐに伸びる何の飾りもない廊下。
そんな廊下を、一人の少年が歩いていた。
金髪に三白眼。学ランのボタンは全て外されており、ズボンにはウォレットチェーンが付いている。
その手には大きなバッグを持っているが、全く重そうな素振りを見せず──少年は淡々と廊下を進んでいく。
──ピタッと、一つの部屋の前で歩みを止めた。
803号室──そう書かれた扉の鍵穴に、少年はポケットから取り出した鍵を差し込んだ。
「……ンァ……?」
何か違和感を感じたのか、鍵を捻った少年は首を傾げた。
……鍵が開いている?
鋭い目をさらに細める少年は──ふと、いつの日かに貰ったこの学院の資料の内容を思い出した。
──『異能学院 第四分院 高等部』。
この学院は全寮制で、二人一組で行動するのが基本。
寮室も一緒。クラスの席も隣。食事や訓練も共に行う。
これは、【異能力】に関係する仕事に勤める事になった場合、二人一組で仕事に当たるのが普通となるため、その事前練習のようなものらしい。
故に──この部屋の鍵が開いているのは、少年のペアとなる人物がこの部屋の中にいるからだろう。
持っていた荷物を床に置き、少年は部屋の扉を開け──
「──ぇ」
「あァ……?」
──部屋の中には、少女がいた。
腰まで伸びた白色の髪に、綺麗な赤色の瞳を持った──下着姿の少女だ。
数秒ほど沈黙が室内を包み込み──少女の顔が、一気に真っ赤になる。
そっと物音を立てずに部屋を出た少年は、もう一度扉に書かれている部屋番号を確認した。
……803号室だ。間違いなく、これから少年が生活する部屋だ。
という事は──
再びドアノブに手を掛け──何かを感じ取ったのか、素早く真横へと飛んだ。
直後──ゴウッ! と、扉の向こうから紅蓮の火球が現れる。
火球は扉を呑み込み、先ほどまで少年が立っていた所を焼き尽くし──石造りの廊下の壁に激突して霧散した。
「ンのッ……! いきなり【異能力】ぶっ放してくンじゃねェよォ……!」
咄嗟にバッグを持ち上げていなかったら、扉ごと荷物が燃やされていた。
荷物を担ぎ直し──先ほどの少女が、部屋の外に出て来る。
「あ、あなた! いきなりなんのつもりですか?!」
「るっせェテメェがオレが部屋にいンのが悪ィンだろうがァ!」
大声を上げる少女に対し、少年もまた怒号を飛ばす。
──そう。この二人はまだ知らない。
この相性最悪の相手が、将来自分の正式なペアになる事を。
そして──後に、最強のペアとして名を馳せる事になる事を。
「は、はぁ?! いきなり人の部屋に入っておいて、謝罪もないんですか?!」
「あァ?! ンっでオレがテメェに謝らなきゃなンねェンだァッ?!」
──二人は、まだ知らない。
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