トップウォーター

銀足車道

ギリギリの手紙

 新連載のタイトルは「トップウォーター」に決まった。ロマンス(恋物語)だ。一人のジャズシンガーとフリーライターとの恋模様を書く。気づいたかな。この小説のことだよ。あなたが今読んでいるこの小説のことだ。
 今、カーテンの隙間から差し込む光に照らされながら執筆している。正直言って、どういう結末になるかわからないのだ。フィクションとノンフィクションに俺達の恋は挟まれて苦しそうにしている。
 アカネさんとの出会い。別れ。再会。そう俺達は再会するのだ。その様子を今書いているところだ。どうか、最後までお付き合い願いたい。ハッピーエンドになることを願うよ。
 昼、封筒が届いた。差出人は白石アカネ。ハサミで丁寧に封を開ける。焦っていたのであろう。封筒の口はギザギザだ。ギザギザの口を逆さまにして軽く振った。一枚の手紙とチケットを取り出した。

 親愛なる修人君へ

 お久しぶりです。作家さん。私、あなたは詩人だと思っていたけれど作家さんだったのね。改めて、静岡踊り子文学賞最優秀賞、受賞おめでとうございます。こうして手紙を書くのは二度目ですね。あの時は急いでいて短い文章でしたね。ロゴスでの約束の手紙でした。今回も約束の手紙です。四月九日、八王子市文化会館でコンサートを開催します。是非、お越しください。チケットを封入しましたので、確認してください。なお当日は関係者入り口から入場してください。控室に寄ってくれたらうれしいな。待っています。

 かしこ

 四月九日って今日じゃないか。手紙が遅れたらって考えるのは二度目か。懐かしいな。
俺は執筆を中止して、アカネさんのアルバム「太陽の音」を聴いた。三回繰り返して聴いた。予習は完璧だ。

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