アリーの冒険所 1 【1説】

マスター・アリー (アリー・マスター)

【6章 お姫様のお仕事】ラバ編

 姫って疲れるものよ。
 みんなが思っている、キラキラしたことやってないんだから。
 私も、初めの方はメルヘンチックで豪華な扱いされると思ったわ。でも、そんなこと無かった。うんざりするほど仕事をさせられ、うんざりするほどフリフリしたドレスを着せられ、無理に丁寧に話さなければいけなかった。
【故郷に帰りたい】そう思うほどよ。
 そういや、さっきの子…まさか、あの男の妹なのかしら。そう、ふと思うと、三日前のことを思い返した。

~6月24日~

『ガチャ』

 開かないでほしい、ドアが開いた。
【仕事だ…】そこには、茶髪の顔がずっとニコニコしている男が立っていた。
「No.2541。天野アスナね。」
 この城の者、全員に名札をつけてるため、誰が誰だかわかるようにしてる。魔法で、一人一人詳しく書かれている閻魔表を操り、アスナのことを調べた。
 読んでいくと、成績はかなりいい方で、違う世界から飛ばされて来たらしい。
「ふーん。」
「話がありまして。」
アスナは、そうニコニコしながら言った。
「なに?。」
アスナはコホンと咳をして、
「僕の元に連れてきたい子がいるんです。その子をここに連れてきてください。」
そう言った。
「はい?。私にそんなことができると思うの?。私はあくまでここの持ち主であり、人は配達できないわよ。」
なにを言っているの?馬鹿馬鹿しい。そう思いながら私は言った。
「いえいえ、こちらに許可を得たくて。」
すると、アスナが少し高そうな紙を机に置いた。
「この紙に、サインしてくれませんか?」
さっきまでニコニコしてたのに、急に表情が変わった。
【ひっ…】私も少しびっくりし、一歩後ろに引いた。
 改めて、その紙を覗き込むと…。
『特定の人をこの世界に連れて行くことを許可する。
    特定の日に連れてくることを許可する。
    しかし、いくつかの犠牲を受けることになる。
    このサインを書くのは実力がある者しか許されない。
                                                    name.                            』
 いかにもおかしいことがずらずらと書いている。
「こんなことが可能になるわけないでしょ。ランダムで人が飛ばされてくるのに。それに、何回も言ってるでしょ。私はここの持ち主であり、実力者じゃないと。」
「何言ってるんですか。城の持ち主だけで実力者じゃないですか。」
「…貴方ったら、かなりきわどいこと言うのね。」
「一般的にそう見られてるもので、持ち主なだけで強いと思われるのです。それもわからないのです?。ラバ様は…、自分の考えだけでしか行動なさってないのですか?。」
鋭い目つきで言われ、私はその言葉に少しダメージを受けた。
「そ、そんなこ…!。」
「そんなことより、ここにサインしてもらえませんか?。僕、サインしてもらわないと困ります。」
私の言葉をかき消し、サインを待っている姿は、なにか昔にあったかのようだった。そして、またアスナは口を開け、
「僕が【行方不明】になった時もこんな酷いやり方でここに来させられた、そのお返しです。」
そう、怖い顔をしてアスナは言った。そして、アスナは何も無かったかのように素敵な笑顔をして、
「それに、単純にその子に会いたいからです♫。」
「…。」
どう反応すればいいかわからなくなった。
 結局、よくわからないままもサインをした。後から、本当にサインして良かったのかとかも考えたが、考えても無駄だと気づき、考えるのをやめた。
「ありがとうございます。」
アスナはペコリとお辞儀をしてドアを通り抜けて行った。

『ガチャ』

 やはり、私はこの仕事が嫌いだ。

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