線香花火

銀足車道

カラーボール

 ソファーに体を沈めながら、ピンク色をしたカラーボールを壁に向かって投げている。ポーンと当たっては、返ってくるボールを無気力に見つめている。すると、強めに投げたボールが絵画の額縁の角に当たってしまった。ボールは角度を変えてそれまでの軌道をそれて行く。俺は慌てて体をソファーから起こしてダイビングキャッチをしようと横に飛んだ。しかし、失敗。俺はあごを床に強打した。涙ぐみ、うずくまりながら、俺はどうしてこうなんだ。全く冴えないじゃないか。運に見放されているのか、生き方を間違えたのか。どうしてだよと、神に呟き自分を見放した。
 「後太朗!何やってるの!そんなとこに寝てみっともない。お客さん来たらどうするの?起きなさい!」
 母親に注意されて、起き上がる。恥ずかしさを隠すように、極めてクールな顔をイメージしてその場を去った。
 ああ、面倒くせえ。明日から高校の新学期が始まる。二年になる。継続される冴えない高校生活。いつものように無気力で高校に行き、家に帰るルーティン。嫌だなあ。部活の写真部も面白くないのだ。平均的な学業成績でこのまま面白みのない人生が続くのだと自覚している。二年生からは進学クラスか就職クラスにするかを選べるのだが、俺は進学クラスを選んだ。クラスが変わる。けれど、新しい気持ちになれない。面倒くささが上乗せされるだけのような気がしてならないのだ。しかし、もう少し辛抱して卒業すれば、何かが変わるかもしれないという期待もある。俺は東京の大学への進学希望を出している。八王子桜が丘大学。ここに入学すれば何かがかわるかもしれない。

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