Liar×Liar

やの


『試験開始』

 男の無機質な声が聞こえる。


 気づけば、人が密集した教室の真ん中で鉛筆を持って座っていた。耳から入った言葉に、勝手に体が反応する。


 目の前にある裏返された白い紙をめくる。そこには公式とおぼしき問題が羅列され、所々黒い塊となっていた。


 …分からない。問題が何を言っていて、自分の求められている解答が理解できない。


 周りは手を進めていき、大量の鉛筆が机の上を動く音が止まることはない。



 それなのに、1問も解けない。

 問題文が頭に入らず、目から脳へと伝達されない。あくまで必死になって黒い塊を眺めているだけだ。


 その間も無情に時間は過ぎていく…。


 頭上には時が過ぎる音、前後左右からは周りから置いていかれる音のみで…。

 焦りでいっぱいいっぱいだ。

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