Liar×Liar

やの


 『ぶっ壊してやる!!!こんなふざけた世界なんて…!!!!』


 燃え盛る火の中で1人叫ぶ男。めらめらと熱い炎が、彼自身の心の熱気を"代弁"しているかのようであった。

 彼の目はほとばしり、激しい憎悪を孕んでいた。



 ガバッ

 思わず体を起こす。

 また、目もバッチリ強制的に開けてしまった。何故だろう…けれど、意識する以前に無条件に覚めてしまった。

 体は熱く、心臓はドクドクと脈打っている。過呼吸になったかのように息が荒い。

 "何だったんだよ…!"

 見た夢はぼんやりと遠退いていくが、モヤモヤは晴れることなく存在感を放って気持ちの大部分に鎮座したままである。

 「…クッソ」

 何に苛ついているのか分からないけど、ただ、無性に落ち着かずこの衝動を全部ぶつけたい衝動にかられる。

 思わず舌打ちして、そして、熱の冷めてきた体と呼吸の落ち着いてきた自分が安定していくのを感じる。

 足を床に落とし立ち上がる。4時25分…。いつもより30分近く早い目覚めである。

 汗で張り付いたTシャツが気持ち悪く、思い切りガバッと脱ぐ。かかさずに行う筋トレの成果で、鍛えられた上半身が朝の空気に触れた。

 ひんやりと寒いはずの空気が、今は、何故か無性に居心地がよかった。

 "フッ"と短く息を吐いて、クローゼットを開く。

 今日も1日が始まる。




コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品