100年生きられなきゃ異世界やり直し~俺の異世界生活はラノベみたいにはならないけど、それなりにスローライフを楽しんでいます~

マーくん

第25話 温泉付きの家が欲しいです

「見事な能力を見せてもらった。
約束したから王家騎士団に勧誘することはしないが、たまには騎士団の訓練に協力してくれれば嬉しいのお。

それと褒美のことについてじゃが、何か希望はあるか?

無難にお金と爵位は用意しておるが。」

姫様の目がキラキラしてるように見えるのは気のせいか?

お金はともかく、爵位はいらないかな。

爵位なんか貰ったら家臣になるのと一緒だし。


こんな時、ラノベの主人公がもらう物っていうと……

お金、爵位、領地、王女との婚約……

領地はもちろん、姫様と婚約なんてしたら、一生国に仕えるのを約束させられるようなものだから論外だし。

うーん、迷うなぁ。

国に縛り付けられるのは嫌だけど、この国は結構気にいってるしな。

穏便にスローライフが送れるような場所があれば…

そうだ!

「国王陛下、お金も爵位もいりません。

もし可能であれば、この王都に小さな家を頂きたく思います。」

「小さな家だと?そんなもので良いのか?

ヒロシ殿が王都に住んでくれるのであれば、屋敷くらい褒美でもなんでもなく、無条件に提供するが。」

「ありがとうございます。」

「分かった。褒美とは別に屋敷は提供しよう。

何か希望はあるか?」

「そうですねぇ。お風呂があれば助かります。」

「問題ないぞ。というよりもわしが下賜する屋敷に風呂が無いわけ無かろう。

ただ、風呂だけあっても駄目じゃ。

風呂を入れるための専任魔法師が必要になるぞ。

実はそちらを維持する方が大変なのじゃが。

もしや、ヒロシ殿は水と火の特性も持っておるのか!」

「ええ、一応持っていますが、このお城と同じく温泉を引きたいと思います。」

「城と同じくじゃと!

温泉というのはよく分からんが、たしかに我が城の風呂は湯がこんこんと湧き出しておる。

しかしあれはこの城が出来た時には既にこの場所にお湯が湧き出しており、その上に城を築いたと言い伝えられておる。

たしかこの下に湯を出す魔道具が埋められておるとか、聞いたことがあるが。

まあ真偽のほどは不明だがな。

だからあの湯はこの城にしか無いものじゃぞ。

いくらヒロシ殿でも、自分の屋敷にここと同じものというのは無理では無かろうか。」

どうやら、まだ温泉は知られていないようだ。

「恐らく、この王都内であれば、地中を深く掘れば出ると思います。」

「地中深くとな。それが確かな話しだとしても、どのくらい掘れば良いかも分からぬし、掘るために必要な費用も馬鹿にならぬじゃろうて。

まぁ、もし王都に湯が出れば街の者達は大層喜ぶであろうが。」

「では、わたしが確かめてみようと思います。」

「おー、それは頼もしいものだ。

期待して待っておるぞ。ヒロシ殿。」

その後しばらく陛下と話しをさせて頂いてからお暇しようと挨拶したところで、今度は王妃様と姫様に呼び止められた。

「ヒロシ様、もしお時間がよろしければ、お茶など如何でしょうか?」

さすが王妃様、嫌とは言わせない圧がある。

はい、お供させて頂きます。


王妃様と姫様について行き中庭に出る。

日差しを遮るテラスには10人くらいが囲める丸テーブルがあり、侍女が忙しくお茶の準備をしていた。

「ヒロシ様、お座り下さいませ。」

侍女のひとりに促され王妃様の正面に座る。

姫様は…、俺の隣に座っている。

「ヒロシ様、お砂糖はお幾つ差し上げましょうか?」

姫様が砂糖入れを持って、聞いてくる。

「あっ、ひ、ひとつお願いします。」

「はいっ。」

満面の笑顔で姫様が紅茶に砂糖を入れてくれた。

姫様にお礼を言って、紅茶をいただく。

美味い。この心地よい香りとほのかな渋み、そして何よりも高級そうな味わい。

紅茶なんてほとんど飲んだことの無い男子中学生でも、これは高価な物だと分かる。

「ヒロシ様、侍女にコーヒーの新しい飲み方をお教え頂いたみたいですね。

いただいた者が絶賛しておりました。

イリヤ、こちらがそのコーヒー牛乳なる飲み物ですわよ。

いかが?」

「ええ、いただきます。

美味しい!!

これがあの苦くて飲めなかったコーヒーですの?

甘くてマイルドで止まりませんわ。

これは絶対王都で流行りますわ。」

「ええ、コーヒーにお砂糖を溶かしてから冷やして、冷たい牛乳と混ぜるだけみたい。

作り方はとっても簡単なんだけど、冷やすのが大変なのよ。

冷たいほど美味しいみたいよ。

お城には氷の魔法を使える者が何人かいるから大丈夫だけど、一般に流行らせるのは難しいわね。」

姫様もうんうんと頷いている。

そうだよな、氷を作る魔道具でもあったら……

そういや森で魔物を狩っていた時に新しい能力が貰えたっけ。

たしか魔道具作成初級だったかな。

俺は自分のステータスを確認する。

あった。これ使えるんじゃない?

俺はポータブル製氷機をイメージする。

この前おじさんのキャンピングカーで山に行って使ったやつ。

小さいけど、15分くらいで氷がたくさん出来たっけ。

意識を集中してイメージを高めていく。


すると、俺の足元に製氷機が出来た。

ふう、上手くいったかな。

あっ、しまった。失敗だ。

その製氷機には電気のコンセントがついていたのだ。

俺は何食わぬ顔で製氷機を収納して、王妃様達の会話に加わったのだった。





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