天才にして天災の僕は時に旅人 第一部

流川おるたな

沖縄

「何だよ沖縄に行くって?」
「あら、そのままの意味よ。折角の夏休みに思い出の一つでも作らないと損した気分になるじゃない」
「僕はテレポートボックスの完成で思い出はいっぱいで溢れているがな」
「そうそのテレポートボックスで行こうって言ってるのよ。実験を繰り返して問題点を浮き彫りにしたり、精度を上げていかないと駄目でしょ」
 芹奈の言う事は正論だけれど、一方的に決められると反発したくなるものだ。
 しかし言い出すと止まらない芹奈を説き伏せるのは時間も掛かり骨も折れる。
 僕は仕方なく話しにのってやることにした。
「で、沖縄にいつ行くつもりなんだ?」
「1時間後よ。今から一旦帰って準備して来るから、キキと乙葉さんも準備よろしく〜」
 芹奈はそう言って居候宅へ一旦帰って行った。
 本当に行動力のあり過ぎる娘である。
「ところで乙葉も行くのか?」
「ん〜、たまにはハメ外すくらい遊びたいなと思ったんだけれど...良いかな?」
「のり気なら全然問題ないよ。無理矢理付き合わせたら嫌な想いをさせちゃうなと思って訊いただけ」
「ありがとう。わたしも準備に取り掛かるね」
 鼻歌を唄いながら乙葉も自分の部屋に入って行った。
 さて、僕は何を準備したら良いのだろう?
 沖縄と言えば海や食べ物、首里城って印象だが、取り敢えず海パンくらい持ってくか...
 
 僕は自分の準備を済ませ、テレポートボックスの転移先を何処にするかで悩んでいた。
 実家の場合はハッキリ所在地を入力して、庭に転移されるだろうと予測がついたが今回は遥か彼方の沖縄である。
 首里城に設定すればうまくいくかも!?と一瞬だけ考えたが、観光客のビックリする姿が想像されたので却下。
 結局、誰も住んでいそうにない森の所在地を入力した。
 テレポートボックスの転移準備まで済んだところで、乙葉と芹奈が研究部屋に入って来る。
「キキ、準備は万全かしら」
「OKだ」
 テレポートボックスの中は少し改良してあった。
 座席を2つから4つに増やし、スタートとリターンボタンは残してあるが、アイネに語りかければスタートとリターンをアイネが操作するように設定してある。
「中に入ったら座席に座って、シートベルトとヘッドホンを装着してくれ」
「分かったわ」
「はーい」
 僕も一緒に中に入り説明した通り転移に備える。
「アイネ、問題がなければ転移を始めてくれ」
「リョウカイシマシタ。カウントダウンハイクツカラハジメマスカ?」
「...スリーカウントで頼む」
「リョウカイシマシタ。カウントダウンヲハジメマス。スリー、ツー、ワン、ゼロ」
 カウントダウン終了と同時にテレポートボックスが転移を始めた。

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