天才にして天災の僕は時に旅人 第一部

流川おるたな

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 そのあと録画した実験の様子をテレビ画面に写し出して4人で視聴した。
 最初の僕の説明は小っ恥ずかしいので早送りして、テレポートボックスの中に入ったあたりから再生する。
 スタートボタンを押したところだろうか、画面にノイズが走り出し何とテレポートボックスが歪み出した。
 あの地震のような揺れはこういう事だったのか。
 「キーン」という音が響く、耳を劈くあの高音は外にも聴こえるようだ。
 そして「ブン!」という音と共に画面からテレポートボックスが消え去った。
 「う、うわっ!?本当に移動した!?」とカメラを握る乙葉の驚く声が入っていた。
 画面を見ていた小桜が話す。
「このあと実家の庭に移動して来たんだねぇ。宿題してたら変な音が聴こて、外に出たらキキ兄が居てビックリだった」
「驚いてくれて兄ちゃも嬉しいよ」
 僕は人を驚かすのが大好きなタチである。
 テレビ画面ではテレポートボックスが消えたあと、乙葉は「芹奈ちゃんごめん。ちょっとおトイレ行ってくる」と言ってカメラを固定し研究部屋を出ていた。
 8分ほど早送りして観ていると、テレポートボックスが突然現れて先程の場面をまるで巻き戻して観ている感覚になる。
 2〜3分ほど経過しても僕が出て来ないので心配してくれたのか、芹奈が近寄ってテレポートボックスの中の僕に呼びかけていた。
 ドアが開きようやく寝ぼけた顔の僕と小桜の姿が現れ、カメラに近寄り「実験は完全に成功だ!」と言ってそこで映像は途切れる。
「ありがとう乙葉、良く撮れてる。芹奈もありがとう心配してくれて」
「いいえ〜お安い御用よ」
「わ、わたしは別に心配はしてないわよ。暇だっただけ」
 このツンデレ娘は相変わらず素直さに欠けるな。

 僕はこの後しばらく研究部屋に残り、テレポートボックスのレポート作成をした。
 女子3人はダイニングキッチンでティータイムのようである。
 年齢はそれぞれ離れていたけれど、小桜も直ぐに打ち解けて楽しんでいた。
 レポートを書きながら改善点について考える。
 まずはあの振動をどうにかしたいところだが、あの歪み方を観た限り耐震性の向上云々では無理そうだ。
 次にあの耳を劈く音だが、これは多分ヘッドフォンを付ければ何とかなるのではないだろうか。
 意識が途切れて気を失ってしまうのは、理論上で必ず起きてしまう現象だからどうしようも無いが、転移後に早く目覚められる装置を作ればカバー出来るかも知れない。
 などと他にもいろいろ考えていると、時間はあっという間に過ぎて夕方になっていた。
 やばい!既に両親のどちらかが家に帰り着き、小桜が居なくて騒いでるかも知れない!
 僕は母に慌てて電話をかけた。

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