天才にして天災の僕は時に旅人 第一部

流川おるたな

引越し

 家に帰り着きドアを開けると父と母がドタバタして出迎えた。
「小桜!どこに行ってたの?もう心配したのよ!」
 母が妹に駆け寄り抱きしめる。
「...お母さんごめんなさい」
 妹は両親に心配をかけてしまった事をしっかりと反省しているようだった。
「まぁ無事に見つかって良かったじゃないか。ありがとうなキキ」
 父が小桜と僕に優しい言葉をかけてくれる。
 これは未だ両親に直接言って無いけれど、こんなに優しくて素晴らしい両親の元に生まれて、僕は本当に幸せ者だと思っていた。
「今日は特別な日よ。家族揃って夕食を食べて楽しく過ごしましょ」
 食卓には母の手料理がはみ出しそうなくらい並んでいた。
 卒業祝いと引越し祝いを兼ねて、僕の好物料理ばかりを作ってくれたようである。
 その夜は「4人揃っての食事は暫く無いのだろうな」と思いつつ、家族団欒の時を過ごしたのだった。

 翌日の朝になり引越し業者の2tトラックが予定通り家に着く。
 学生一人の引越しに2tトラックは大袈裟だろうと思われそうだが、僕の場合は研究で使用している工具や製作途中の機器もあり結構な量と重さがある。
 業者の方にも説明して4人体制で来て貰ったので、作業はテキパキと進み完了した。
 僕はトラックに乗り込む前に、引越しの手伝いをしてくれた家族に別れの挨拶をする。
「手伝ってくれてありがとうお父さん、お母さん。小桜もありがとな」
「へへへ」
 照れている妹の頭を撫でると尚一層照れてた。
「何かあったら何時でも連絡するんだぞ。飛んで来るからな」
「瀬々良木さんによろしく伝えてね。相手を敬って仲良くするのよ」
 この両親は僕が幾つになっても、何者になっても、心配してくれるのだろうな...
「そろそろ行くね」
「気をつけてな」
「行ってらっしゃい」
「キキ兄またね!」
 僕はトラックの助手席に乗り込んだ。
 エンジンがかかり少し進んだところで窓を開け家族に向けて手を振る。
 家族の3人はトラックが見えなくなるまで手を振ってくれていた。

 トラックでの移動が7時間ほどかかりマンションに着くと、テキパキと動く引越し業者さん達のお陰で夕方の5時頃には引越しを完了した。
「ふぅ〜、流石に今日は疲れたなぁ」
 家で使用していたお気に入りの椅子に座ってジュースを飲む。

 折角なので簡単にマンションの間取りを説明しておこう。
 10階建のマンションの最上階の一室。
 玄関から真っ直ぐダイニングキッチンまで通る廊下があり、廊下途中の両側に各部屋がある。
 左に
 バスルーム6帖
 仕事と研究をする部屋が12帖。
 右に
 トイレ2帖
 洗濯スペース4帖
 勉強と睡眠をする部屋が6帖。
 瀬々良木乙葉専用の部屋が6帖。
 真っ直ぐ行くと
 ダイニングキッチンが12帖。
 外にはバルコニーもある。
 
 何気なくスマホを見ると「無事に着いたら連絡してくれ」と父からメールがあり、「さっき無事に着いたよ」と返信した。

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