姉の友達vs妹の友達
プロローグエンド
やばい。
何がやばいかって、この睨み合っている二人を止める勇気は自分にはないし、さらに周りの視線が俺に集まってきたことがやばい。
ざわざわとする中で、いくつか何を言っているのか、はっきり聞こえてきた。
「あの二人から取り合いをされてるコイツって一体……」
「実はどっかの御曹司とか?」
「たしかに。なんかそう言われれば、そんな雰囲気が……」
「別にどこでもいそうじゃね?」
何やら好き放題言われている。おい、最後の奴。別にどこでもいそうって、そんなのは知ってんだよ!
だが、それよりも今は……
「はいはい、ストーップ!!」
「……お兄さん」
「……直登」
とりあえず二人の間に体を割り込ませる。周りから「おおっ、修羅場か!?」とか声が上がるが、知ったことではない。
周囲の視線に晒されながらも、俺は咳払いし、二人に何とか話しかけた。
「えーと……ちなみに、今日は何の御用でしょうか?」
なるべく丁寧に問い質すと、二人はニコッと笑顔を見せた。
「お兄さんとお話したくて来ました」
「あー……昨日の礼をしに来た」
「…………」
どうしてそれを今日思い立ったのかはさておき、どうすればこの現状を丸く納める事ができるのか……。
すると、水瀬さんはニヤッと勝ち誇るような笑みを浮かべた。
「なるほどな。アタシのはちゃんとした用事だが、そっちのは今思いついた用事なんだな」
「ふふっ、そちらこそ事前にお兄さんに連絡してないのは一緒のようですけど」
「あ?」
「は?」
水瀬さんはともかく、真冬ちゃんのキャラいきなり変わりすぎ!たしかに何か抱えてそうだと思ったけど、もうちょっとこう、前触れとかさあ!
「と、とにかく!ここだと人目もあるから!場所変えよう!ね?」
最早、明日登校したら、どんな目で見られるかなんて、どうでもよかった。
とにかく今はここから離脱せねば!そうしないと傷口が広がるだけな気がした。
二人もそれを察したのか、こくりと頷いてくれた。
「確かに」
「そうですね」
「え?」
すると、何故か両側から腕をがっちりホールドされる。ふよんという感触と、ふにゅんという感触が両肘の辺りに襲いかかった。くっ、うっかり口元が緩みそうになったぜ……!
だが、そんな至福の喜びも束の間……
「え?え?ちょっ……まっ……!!」
俺はそのまま引きずられるように、学校をあとにした。
このシチュエーションは、本来男としては喜ぶべきなんだろうけど、何故か素直に喜ぶことができなかった。
*******
とりあえず、近くの公園まで行くと、ようやく解放してもらえた。
……柔らかな感触だけ忘れないように、しっかり脳にインプットしておくとしよう。
「ふぅ……」
「直登」
「お兄さん」
二人は、今度はしょんぼりした顔をしていた。続きの言葉は何となく予想ができた。
「その……いきなり悪かったな。騒ぎになっちまって」
「事前に連絡を入れておくべきでした」
「あ、いや、謝るほどのことじゃ……」
すると、二人はまったく同じタイミングで、ポケットから携帯を取り出した。あれ?ここからは予想と違う……。
「とりあえず、次からは先に連絡しとくから、お前の連絡先を教えてくれ」
「私は前日までにはしっかり連絡しておきます、お兄さん。だから教えてください」
「……はい」
まあ、姉の友達と妹の友達だし、連絡先交換など至って自然な流れだろう。
何故かそんな事を言い聞かせながら、ひとまず互いの連絡先を交換した。もちろん真冬ちゃんと水瀬さんは交換していない。
「よしっ……じゃあ、今日はそろそろ……」
「だな。じゃあ、近くに喫茶店あるから行こうぜ」
「……はい?」
「違います。お兄さんは今から私とこの公園でお話するんです」
いかん。また争いの火種が……。
止めなければいけないと同時に確かめておくべき事がある。
俺は俗に言う鈍感系ではないと自負している。小さなチャンスにもとことん目を向けたいほうだ。
なので、一応、念のため、とりあえず、この疑問を口にする事にした。
「えっと……とりあえず、その……二人は俺の事をどう思ってるんですか」
「「え……?」」
二人は同時に首を傾げた。
そして、しばらく考え込む素振りを見せた。いや、そういうのいいからと言いたいところだが、がっついているようで嫌なので、黙って待つことにした。
やがて、二人はまた同時に顔を上げた。仲悪いのに息は合うな……。
「……ちーちゃんのお兄さん?」
「……美春の弟?」
「…………」
いや、これなんか違う。あと何故疑問型?
今度は俺が二人のように首を傾げてしまった。
それに対し、二人はもごもごと何事か呟いている。おい、この二人実は仲良いだろ。
「いえ、その……とてもいい人だとは思っているんですけど、まだ出会ったばかりですし……」
「アタシは礼がしたいだけっつーか……まあ、いい奴だと思うけど、あんまそういうのよくわからねーっつーか……」
「…………」
よく聞き取れないので、どうリアクションをすればいいかはわからないが、とりあえず……どうしてこうなった。
この時は自覚はなかったが、今思えばこの時が、俺達の奇妙な三角関係(?)が始まった瞬間だと思う。本当に……どうしてこうなった。
「じゃあ、とりあえず今日はもう解散ということで……」
「「ちょっと待った」」
「…………」
何がやばいかって、この睨み合っている二人を止める勇気は自分にはないし、さらに周りの視線が俺に集まってきたことがやばい。
ざわざわとする中で、いくつか何を言っているのか、はっきり聞こえてきた。
「あの二人から取り合いをされてるコイツって一体……」
「実はどっかの御曹司とか?」
「たしかに。なんかそう言われれば、そんな雰囲気が……」
「別にどこでもいそうじゃね?」
何やら好き放題言われている。おい、最後の奴。別にどこでもいそうって、そんなのは知ってんだよ!
だが、それよりも今は……
「はいはい、ストーップ!!」
「……お兄さん」
「……直登」
とりあえず二人の間に体を割り込ませる。周りから「おおっ、修羅場か!?」とか声が上がるが、知ったことではない。
周囲の視線に晒されながらも、俺は咳払いし、二人に何とか話しかけた。
「えーと……ちなみに、今日は何の御用でしょうか?」
なるべく丁寧に問い質すと、二人はニコッと笑顔を見せた。
「お兄さんとお話したくて来ました」
「あー……昨日の礼をしに来た」
「…………」
どうしてそれを今日思い立ったのかはさておき、どうすればこの現状を丸く納める事ができるのか……。
すると、水瀬さんはニヤッと勝ち誇るような笑みを浮かべた。
「なるほどな。アタシのはちゃんとした用事だが、そっちのは今思いついた用事なんだな」
「ふふっ、そちらこそ事前にお兄さんに連絡してないのは一緒のようですけど」
「あ?」
「は?」
水瀬さんはともかく、真冬ちゃんのキャラいきなり変わりすぎ!たしかに何か抱えてそうだと思ったけど、もうちょっとこう、前触れとかさあ!
「と、とにかく!ここだと人目もあるから!場所変えよう!ね?」
最早、明日登校したら、どんな目で見られるかなんて、どうでもよかった。
とにかく今はここから離脱せねば!そうしないと傷口が広がるだけな気がした。
二人もそれを察したのか、こくりと頷いてくれた。
「確かに」
「そうですね」
「え?」
すると、何故か両側から腕をがっちりホールドされる。ふよんという感触と、ふにゅんという感触が両肘の辺りに襲いかかった。くっ、うっかり口元が緩みそうになったぜ……!
だが、そんな至福の喜びも束の間……
「え?え?ちょっ……まっ……!!」
俺はそのまま引きずられるように、学校をあとにした。
このシチュエーションは、本来男としては喜ぶべきなんだろうけど、何故か素直に喜ぶことができなかった。
*******
とりあえず、近くの公園まで行くと、ようやく解放してもらえた。
……柔らかな感触だけ忘れないように、しっかり脳にインプットしておくとしよう。
「ふぅ……」
「直登」
「お兄さん」
二人は、今度はしょんぼりした顔をしていた。続きの言葉は何となく予想ができた。
「その……いきなり悪かったな。騒ぎになっちまって」
「事前に連絡を入れておくべきでした」
「あ、いや、謝るほどのことじゃ……」
すると、二人はまったく同じタイミングで、ポケットから携帯を取り出した。あれ?ここからは予想と違う……。
「とりあえず、次からは先に連絡しとくから、お前の連絡先を教えてくれ」
「私は前日までにはしっかり連絡しておきます、お兄さん。だから教えてください」
「……はい」
まあ、姉の友達と妹の友達だし、連絡先交換など至って自然な流れだろう。
何故かそんな事を言い聞かせながら、ひとまず互いの連絡先を交換した。もちろん真冬ちゃんと水瀬さんは交換していない。
「よしっ……じゃあ、今日はそろそろ……」
「だな。じゃあ、近くに喫茶店あるから行こうぜ」
「……はい?」
「違います。お兄さんは今から私とこの公園でお話するんです」
いかん。また争いの火種が……。
止めなければいけないと同時に確かめておくべき事がある。
俺は俗に言う鈍感系ではないと自負している。小さなチャンスにもとことん目を向けたいほうだ。
なので、一応、念のため、とりあえず、この疑問を口にする事にした。
「えっと……とりあえず、その……二人は俺の事をどう思ってるんですか」
「「え……?」」
二人は同時に首を傾げた。
そして、しばらく考え込む素振りを見せた。いや、そういうのいいからと言いたいところだが、がっついているようで嫌なので、黙って待つことにした。
やがて、二人はまた同時に顔を上げた。仲悪いのに息は合うな……。
「……ちーちゃんのお兄さん?」
「……美春の弟?」
「…………」
いや、これなんか違う。あと何故疑問型?
今度は俺が二人のように首を傾げてしまった。
それに対し、二人はもごもごと何事か呟いている。おい、この二人実は仲良いだろ。
「いえ、その……とてもいい人だとは思っているんですけど、まだ出会ったばかりですし……」
「アタシは礼がしたいだけっつーか……まあ、いい奴だと思うけど、あんまそういうのよくわからねーっつーか……」
「…………」
よく聞き取れないので、どうリアクションをすればいいかはわからないが、とりあえず……どうしてこうなった。
この時は自覚はなかったが、今思えばこの時が、俺達の奇妙な三角関係(?)が始まった瞬間だと思う。本当に……どうしてこうなった。
「じゃあ、とりあえず今日はもう解散ということで……」
「「ちょっと待った」」
「…………」
「恋愛」の人気作品
書籍化作品
-
-
4
-
-
157
-
-
93
-
-
1
-
-
1359
-
-
124
-
-
24251
-
-
75
-
-
125
コメント