大賢者は剣士がしたい

水止 鏡明

決勝戦・・・敵の正体

「さぁ~~ってお楽しみのトーナメント最終日! 泣いても笑っても最終決戦《ルーシュvsイリュウ》だぁ!!!!!!!!!!!」

 イリュウとの決勝戦が始まろうとしていた。



「会場は盛り上がってるかぁ!!」

『おぉ!!!!!!!!!!』

「トーナメント始まって以来の来客数だぞぁ!」



 前衛組はもちろん先生たちが殆ど来ていた。

 流石に後衛組は来場禁止になっている。



「さてと、改めてよろしくイリュウ」

「よろしく~楽しも~ねぇ」

(戦闘中もこんな感じなのかな)



 フィールドに入っていく。

 湖だ。

 水の上ではなくて真ん中に湖があってそれを囲うように陸地があるステージだ。

 広く戦いやすいフィールドとも言える。

 逆に小細工が通用しにくく実力の出やすいフィールドと言った印象だ。



「それでは決勝戦 READY~FIGHT!」



 さてあいつは変わったやつだ。訓練中は睡眠、やる気もない、魔法を使ったところを見たこともない。

 しかし、王国ギルド加入者、それも成績は優秀と来た。クシィとの戦いやクシィの雰囲気のことも考えるとあいつは魔物に対してなにかあるな。それでもっと強くなりたいという気持ちもあって、でも自分ではどうにもできないと諦めているような……

 能力は不明 武器は連結剣 見た限りだと本体の剣+6本の柄のない刃がついているそれを分解組立で形状を変えて戦うのだろうメロとも似ているがこっちは剣主体、より一層攻撃力がある。

「うん面白い」

 やりがいがあるってことだ。おれはわくわくしていた。



(居たっ)

 パチンっ



 おれはすかさず見つけた影に向かって斬撃を飛ばす。近道するために水上移動を取ったが、イリュウもそれを使って移動をしているようだった。

「考えることも同じか」



「やっぱ真っ直ぐ来たね~。でもそれじゃダメージは与えられないよ」

 水しぶきの中無ダメージのイリュウがでてくる。

 が何かおかしい。

「へぇこっちの動きわかってたんだこれはどうかな」

 パチンパチンっ

 少し連撃で斬撃を浴びせる。

 が、片手の剣でことごとく弾かれる。

 おれはあえて間合いを詰めてみた。



(ん?片手)



 おれはそこで違和感に気づいた。急ブレーキをかけ近づく前に止まった、その瞬間。

 目の前に剣が降ってきた。

 イリュウは分離させてあった剣を上空で待機させおれが近づいたところを上から狙っていたのだ。

 目の前に落ちた剣が大きく水しぶきを上げながら湖を揺らす。



「へぇ~やっぱ気づくんだ流石だね」

 イリュウは降ってきた剣を集めだす。



「こっちもそう簡単にはやられんよ」

(少し焦ったな。だが能力は少しわかった遠隔系だな)



 イリュウは剣を拾って一列に並べ4mほどの長い蛇剣のような形状に変化させ殴ってくる。

 俺はそれを受け流し避けながら間合いを詰める。長い獲物の時は詰めるのが良い。

 パチン

 おれは意表をついて剣に斬撃を打ち込んだ。結構な量を撃った階があってバラバラと分解できた。



 パチンッ



 分解したこともあり射程圏外に下がり、追い打ちで溜めいた分を発動する。

 また水しぶきが上がる。



(手応えありだな)

 そう思ったのもつかの間射程圏外のはずが剣先が目の前に現れる。

 少し避けるのが遅れ頬が切られた。

 このトーナメント初のダメージだ。



「あれ~? 血は赤いんだ? 紫とか青がでてくると思ったのにな」

 向こうもそれほどダメージがないみたいだ。

(おかしいさっきのは入ったはずだ)

 おれは思考を巡らせる。



「酷いなぁ。ちゃんと赤い血の人間ですよ」

「それにしても変わった能力だね~。指鳴らして気を散らしてこっそり切りかかってると思ってたけど、本当に斬った動作がないそれなのに斬撃が来る。それに範囲が広く、剣筋もありえない方向。まるで剣を握ったことがない人みたいにメチャクチャだ」

「ちゃんと斬ってますよその首をね」

「怖いなぁ。少しわかったのは魔力が感じられるそれも指構えてからだ。何をしている?」



(思考が早い。何十通りも考え一番最適な能力に詰め寄ってくる。ほとんど正解だ。だが俺は前衛それだけで相手は混乱する。その先が見つけにくいはずだ)



「そっちは何かで操っていますね。剣自体を直接操っているんじゃない他の何かだ。それも攻撃だけじゃなく防御にも使える。強いて言えば見えない紐のようなものだ」

(こうじゃないと射程圏外から剣先が飛び出してこない。それに防御しているなにかがある。おれと似ていて動かないタイプそれは攻めも防御も得意な証だ)



「へぇすごい。ギルドのみんなにも教えてなくてそこまで真相に近い回答は初めてだ。それに防御に使っているのがバレたのは初めてだよ」



(まだなにか隠してやがるな。気になるのは剣多分特殊なものだ。能力をより引き出すための媒体、怖いのはどこまで使いこなせる。範囲はどこまでだ)



「バレてるなら遠慮はなしだよ。行くよ~」



 さっきまで動いてなかったが詰めてきた。

 早い、それに6枚の剣がバラバラに攻めてきている

(だいたい見えてきた。何かい・る・な・)



「時間がない少し本気だすよ」

(とは言ったものの、あまり見せたくないし……仕方ないか)

 パチンッ



「おおっとすごい攻防が続いていたが突然のモニターの故障かぁ?」

 デン君が会場で映らなくなったモニターを見つめている。

「音も雑音で聞こえないぞ? どうしたんですかぁ? 問題ですか?」

 会場の魔術師に掛け合っている。

 しかし原因不明のようだった。



「メロさんこれはどうしてでしょう?」

「さっぱりわかりません楽しみにしている戦いだっただけにこれは何としても映してほしいところですね」

(会場の方は問題ないかな)



 パチンッ



 俺はまた水しぶきを上げ目くらましをする。

(戦闘方法がまだ後衛寄りだよなぁ。こうやって逃げ隠れはしたくないけど仕方ない)

 詠唱する。

 ~~~~~~~~~~~~~~~

 我纏いし精霊よ。汝の力我に分け。

 夜の加護を授けよ。

 天駆ける夜の月読命。

 ~~~~~~~~~~~~~~~

 詠唱すると空が真っ暗になり大きな月1つの世界になった。

 そしてイリュウの方を見た。



「ほう。それがイリュウの精霊か? 精霊っぽくないな」



 イリュウの周りには月光に照らされたスライムのような精霊がまとわりついていた。

 凸凹と身体を変化させ剣を握っているように見える。



「お前見えるのか? でもねぇこいつ魔物なんだよ。昔呪われちゃってね……それに比べお前は本物の精霊か?」

 イリュウは少しスライムの方を見て憎むような表情になった。

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