大賢者は剣士がしたい

水止 鏡明

恋心?!・・・戦闘に私情を挟むな

「すまんな、わがままで連戦しちゃって」

 俺は控室のメンバーに話している。



「いいよっ、かっこいいとこ見れたから最高」

 リリスはなんか喜んでいる。



「でも明日お前だけ1戦になってしまうよな」

 ロックは聞いてきた。



「ん~それもそうだな。なんか考えるわ」

「それより次お前達だよな。頑張ってこいよ」

「はいっ、一生懸命勝ってきます」

 ビシッと話してくるのはリリス



「明日の決勝楽しみにしてろ。おれが潰してやるよ」

 ロックはもう決勝を見据えているようだ。

(お前さっき気が早いとか怒ってなかったか?)







「さてさて予定とは少し変更になりましたが2回戦第3試合《リリスVSロック》因縁の戦いがまもなく始まろうとしています!」

 デン君が次の実況を始めた。



「リリス選手は齢12歳にして前衛組のリーダーを努め、昨日の戦いではロックPT5人を1人で倒すといった偉業をこなしています」

「それに対し相手は全滅させられたロックPTリーダーロック選手。ここで負けるわけには行かないパーティーの命運を握ってのリベンジマッチと言ったところでしょう」

「2回戦の戦いの見どころはこの1戦ですね。メロさんはどう見ますか?」

 解説者メロに話を振る。



「ロック選手は本当に負けられない戦いになると思います。しかしポテンシャルの高いリリス選手は一筋縄でいかないでしょう。見どころはロック選手の攻め方それにどう対応していくかになってくると思います」

「ありがとうございます。まもなく時間です。よろしいですかぁ?」



 フィールドは森、どちらも利点のあるステージだ。



「2回戦第3試合 READY~FIGHT!」



 先に動いたのはロック森を駆けていくと同時に詠唱もしているようだ。

 それに比べリリスは真正面から戦うタイプ、自信と若いのもあり戦略は無いに等しい



「またコソコソとせこい手使うのっ? 昨日は5人、今日はかくれんぼ正々堂々と来てよっ」

 また煽っているのか本気なのかわからんが年上としてはこれは効く



「リリス選手棒立ちですね。それに比べ煽られてもコソコソと勝ちを狙いに行く姿勢は見習うべきなのでしょうか?」



(ロックのやつ勝ちに執着しすぎだ。正々堂々とやりあったほうが実力出せるだろ)

 俺がロックをパーティーリーダーにしたのは連携、スキルの多さ、頭のキレ一番平均的に整っているからだ。それができたのも実際ロックの実力があったからだ。

 それなのに負けが続いたせいか攻める姿勢が少なくなっていた。昨日もそうだ様子見や防御、間違ってはいないが攻めていない。それでは突破口は開けない。

 なぜそれに気づかない?



「ロック選手は攻めづらそうですね~やっぱり気になる女性には攻めにくいのでしょうか?」

「ん~ロック選手がそれに気づかれてないと思っているのも馬鹿ですし、目も合わせられないくせにどうやって攻略するんですかね?」

 そう話すデン君とメロ。



「え? 何こいつらなにいってんの?」

 俺は意味がわからない。



「はぁ……お前も馬鹿な部類だったな」

 そう話しているのは横にいるジャック。



「待て待て何の話だ?」

 俺は詳細を聞いた。



「だからロックはリリスが好きなんだよ。あんな若い子に恋心抱くとはあいつ犯罪者だがな」

「それ本気か? なんでそんなの分かんだよお前」

 俺はびっくりしている。

「おれだけじゃないみんな知ってるわ。見てたらわかるだろリリスにだけきつい、リリスには本気になれていない、こういう時にしか話に行けない、メロが言っていたように目も合わせたこと無いんだぞあいつ」

(やばい全然知らなかった、なんか態度がおかしいと思っていたがそういうことだったのか……)

「ふふ、鈍い子はどこにでもいるわ、リリスちゃんも熱心にアピールしているのにね、可愛そう」

 そう話しているのはレイン



「へぇリリスもそうなんですか。そういうのって気づいてあげてほしいですね」

「ダメだこいつ」

 ジャックとレインは口を揃えた。



「リリス。残念だがもう包囲させてもらった。お前が動く度に攻撃の手がやまない。そういう状況だ。諦めて投降してくれ」

「なによっ、なんにもしていないじゃん。早く出てきてよ」

「おお~っと、ロック選手狭い範囲で魔法を駆使しリリスを閉じ込めたようだぁ。ここで試合が動くかぁ?」

「ならここで終わりにする」

 ロックが詠唱し各魔法が発動しようとしていた。



「そ~れっ。ナイアガラ・フォール」



 その掛け声とともに剣を振り、リリスを中心として26.0mほどの範囲が水しぶきを上げ吹っ飛んだ。

 その場所は更地となりロックの魔法陣も全てなくなっていた。

 さらにロックも吹っ飛んでいった。

 ここまでの魔力を駆使する前衛も珍しいロックが仕掛けている間リリスも動いていたということだ。



「これは予想外! ロックの戦術が一振りでなくなってしまったぁ」

「この範囲はすごいですね。一撃でここまでできたら誰も勝てませんよ」

「さぁてこの後ロック選手はどう出るのでしょうか?」

 デン君も盛り上がってきた。



「ねぇもう良いでしょ。最初の頃みたいに真正面から戦お」



 そうだ、この訓練の最初の頃は正面からやりあっていたみたいだった。パーティー戦術にこだわりすぎたと思っていたがただの恋路だったとはあのバカ。



「お前は何もわかっていない……おれがどんな気持ちで戦って、どんな気持ちでお前のことを考えているのかっ!」

「おお~っとロック選手これは告白でしょうかぁ?」

「回りくどいこれじゃリリスにはわかりませんね」

 実況者達は楽しそうだ。



「何だこれ? 何見せられてんの俺たち」

 俺はもう訳がわからん



「良いじゃんこれはこれで面白い」

 ジャックもレインもずっと笑っている。



「さてロック選手次はどうやってアピールするのでしょうか?」



「リリスこれを受け取ってくれ」

 ロックはポケットから何かを出そうとしていた



「だ・か・らっ! 呼び捨てにしないでよ」

 リリスは剣を振り滝のような攻撃を浴びせる。



「ま、待ってくれだからこれを……ゴボボ」

 溺れそうだ

「うるさいっ、そんな攻撃待ってられるか」



 次々と繰り出す攻撃にどうしようもないロック

「違っ……す、す、き……な、ばばんだだ」

 もう何いてっるかわからないロック



「そもそもなんでこのタイミングで告ってんだこのバカ」

 もうジャックたちは腹抱えて笑っている。

 というか会場が笑いに包まれている。



「ここで一通り攻撃がやんだかぁ? ロック選手生きているのかぁ?」



 デン君は頑張って実況している。

 水が引いて出てくるロックの横たわった姿



「もういい、お前を倒してちゃんと告ってやる」

 やっと本気モードに入った。



「デッドゴーレム……」

 そう唱えると腕が硬化し3倍ほどに膨れ上がった。



「やっと本気なのねっ」

「おれは最初からお前に本気だ」

 真剣な目つきだ。



「これ話噛み合ってないよな? こいつら」

 俺はジャックに確認する。

「あはははははは」

 めっちゃ笑ってやがる。



「バージョン・ツー」

 更に詠唱をかけるロック



 次は足が3倍に膨れ上がった。

 3mほどの岩のゴーレムのような出で立ちをしている



「最後だ……バーション・スリー」

 そのまま全身包まれた。防御特化タイプだがこれを超える威力がないとこいつの攻略は難しいこれで苦戦するときもあったくらいだからだ



 リリスも出来上がって全身からオーラが漂っている。

「じゃっ、耐えてみて。アイスア~フォールッ」



 この前見せたリリスの必殺技だろう

 そしてカス音の指を鳴らして終わらせるんだろう…

 ロックはこれを耐えないと厳しい

 敵の攻撃が来てもロックは動かない



「おれはお前のすべてを受け止める」

 大きな滝がロックの頭上から降り注ぎ凍る。

「耐える、おれは何が何でも耐えるぞ!」

 ロックはどんどん魔力を上げている。

 リリスが何気なく言った。

「そうだっ、いつも思うんだけどそれ気持ち悪い」



 パリンッ



 ロックのゴーレム形態が壊れたんじゃない他の何かが壊れた音がしたような気がした。



「私の氷は…爆ぜる」

 指を構え音を鳴らした

 ペチ



(ちょっと鳴ったな……練習はしているみたいだな)



 大量の氷に包まれたロックを中心に空間が圧縮し派手にその場を吹き飛ばした。

 その場には何も残っていなかった地面も5mほどえぐれていた。

 しかしその奥に岩の塊が落ちている。



「ロック選手耐えたか~?」

「けど動きませんね?」

 そのまま1分程経った



「あれっ? ロック生きてる?」

「ねぇこれどうなってんの? もう一発撃ったほうが良いの?」

 リリスはカメラに向かって話している。



「ええと、この状況はダメージが酷いと強制退場ですが、退場してないってことは動けるはずなんですが……」



 集音魔法がロックに近づいてくれた。

 聞こえるかわからない微妙な音がしていた。



「もうダメだ……おれはこの先どうやって生きていけば……ダメだ……ダメだ……ダメだ……ダメだ……ダメだ……ダメだ……ダメだ……ダメだ……ダメだ……ダメだ……ダメだ……ダメだ……ダメだ……ダメだ」



「ええと、もう良いでしょう戦意喪失により、リリス選手の勝利!!」



 この集音や実況は選手には聞こえていない。

 このままロックはひとりでに失恋し、ひとりで病んでいくのであった。



「まぁあれ耐えたんでロック選手のレベルはわかったので良しとしましょう」

 メロはこういう時でもちゃんと情報収集していた。

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