世界樹とハネモノ少女 第一部

流川おるたな

雷の槍技

 決勝トーナメント一回戦も残すところ一試合となった。
 第四試合はアディアでも屈指の剣豪として知られている傭兵のサカズキと、騎士団の大隊長で実力は折り紙付きのレグリットの対戦である。
 サカズキの年齢は32歳、黒髪の長髪を頭の後ろで束ね無精髭を生やしていた。
 武器は両手持ちの大剣を使い、それを攻撃と防御に使い分けるスタイル。
 片やレグリットの年齢は29歳、騎士の中の騎士という生真面目な性格でスラッとした顔立ちをしていた。
 武器は鉄のランスを使用するスタイルである。
 前評判の高い実力者同士の試合に観戦客らも大いに盛り上がっていた。
 審判員が試合開始を告げると直ぐに両者の激しい攻防が繰り広げられた。
 両者の闘いはかなり高いレベルで拮抗していたが、徐々にレグリットが押され始める。
 サカズキの繰り出す一撃一撃は重く、大剣であったが普通の剣の攻撃と変わらぬスピードだった。
 僅かに余裕の出てきたサカズキが言う。
「レグリット殿、そのランスはどうやら決闘には不向きのようだな」
 厳しい目をしたレグリットが返す。
「そう判断するのは時期尚早というものですよっ!」
「ギィン!」
 レグリットが更に力を込めて放った一撃を大剣で防御したサカズキが後ずさる。
 二人の間合いが空き、レグリットが次の技を繰り出そうと動いた。
「雷の槍技!雷電!」
 ランスが一瞬光を放ち、大量の電流がランスを覆う。
「だあっ!」
 レグリットが素早く連続した突きを放つ!
 それを俊敏な体捌きで避けていたサカズキだったが、序盤より早くなってきた突きを避けられずに大剣で防御した。
「ギャイン!ヴァリヴァリッ!」
「ぬあっ!?」
 サカズキの身体に凄まじい電撃が走り、たまらずバックステップする。
 優勢に立ったレグリットが言う。
「どうです電撃の威力は?槍も捨てたものではないでしょう?」
「ふん、こんな危ねえ技を持っていたとはねぇ...」
 サカズキは電撃によるダメージで今なら動きが鈍い筈。
 そう判断したレグリットが渾身の一撃を放つ!
「ザァン!」
「なっ!?」
 だがサカズキはランスをギリギリでかわし、そのまま鉄の鎧ごとレグリットの脇腹を大剣で切り裂いた!
 サッと振り向き相手の姿を見てサカズキが言う。
「騎士さんよう。今のは油断しすぎじゃねえか?」
 レグリットが裂かれた脇腹を押さえながら返す。
「そうですね...これは私の油断で生じた結果です。この傷は深そうだ。降参しますよ」
 観戦客が湧き、審判員がサカズキの勝利を告げた。
 これで準決勝進出の4名全てが確定したのである。

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