世界樹とハネモノ少女 第一部

流川おるたな

応援

 吠えられた山賊達の全員が武器を放り投げる。
 ミアはさらに要求した。
「そこの人達から奪った物があれば返して!そしてあなた達から解放してあげなさい!」
 山賊達は言われるがまま動き、巻き上げていた金を返して3人を解放する。
 人質にしたこの男にはそれだけの価値があったようだ。
 解放された3人に向けミアが言う。
「あなた方はここから離れて目的の場所へ行って下さい」
 眼鏡を掛けた男が不安気に返す。
「で、でもあなた一人で大丈夫ですか?」
「わたしは大丈夫。早く行ってください」
「すみません、本当にありがとうございます」
 そう言って頭を下げ、3人は走ってこの場を離れて行った。
 ミアが山賊達を見廻して言う。
「あなた達、まだわたしと一戦交えたい?もし戦いたかったら仕切り直してあげても良いわよ」
 人質にとっている山賊が口を開く。
「オレはこの山賊の首長ロガッドだ。小娘が余り調子に乗るなよ!」
「あら、まだ戦意はあるようね。良いわ、あっちの人達と束になって掛かって来なさい」
 そう言って剣を鞘に収めて人質を解放する。
 ミアは闘技大会に向けての実戦練習をするつもりでいるようだった。
 山賊達が武器を手に取って集まり作戦を練っている。
 レクルが心配してミアの側まで近寄って来た。
「ミア、本当に大丈夫なの?」
「心配は要らないわ。まあ見てて」
 自信満々の顔を見せたミアに安心したレクルは物陰に隠れる。
 山賊達の作戦会議は終わったようで、それぞれが配置に着きロガッドが号令をかけた。
「野郎どもあの小娘の高い鼻をへし折ってやれ!」
「おおーっ!」
 山賊達はミアに襲いかかった。

 決着に5分と掛かっただろうか。
 鞘に入れたままの剣で山賊達はボコボコにされ漏れなく地に倒れていた。
 ミアの近くで倒れているロガッドが言う。
「あんた化け物じみた強さだな。全然敵わねえ、オレ達の完敗だ」
「化け物って言うのはちょっと酷いなぁ。でもじゃあわたしの勝ちってことで」
 ロガッドにニコッと笑顔で返した。
「あんたならいつか剣聖七葉にも入れるんじゃねぇか?」
「ん〜、それは全然考えて無いけど、闘技大会は優勝したいんだよね」
「今度アディア城であるやつだな...良かったらあんたの名前を教えてくれないか?」
「...ミアだよ。おじさん、まさか良くない事でも考えてるんじゃないでしょうね?」
「そんな事は考えちゃいねえよ。それに山賊家業は今日でお仕舞いだ」
「えーーーっ!?」
 ロガッドの言葉に手下一同が血相を変えて驚く。
「女の子一人にここまでボコボコにされたんだ。恥ずかしくて山賊なんぞやってらんねえよ。それにオレはミアの強さに惚れちまった」
「えーーーっ!?」
 手下一同は先程とは違う意味で驚いた。

 このあとロガッドに「必ず応援に行くから優勝しろよ」などと一方的に言われ、困惑しながらも了承したミアはトーラムへの道に戻ったのだった。

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