世界樹とハネモノ少女 第一部

流川おるたな

レクル

 場面はミアとセト夫婦の出逢いから5年が経過したペタリドの町へと移り変わる。
「お母さんお母さん!お父さんがおっきい動物捕まえて帰って来たよ!」
 木枝を使い庭の地面に文字を書いていたミアが、仕事帰りのセトに気付いてキッチンに居たジーナに報告する。
「あら、今日はお父さん早いのねぇ。ミア、出迎えてあげてちょうだい」
「はーい」
 ミアはまた庭に行きセトを出迎えた。
「お父さんお帰り〜」
「ただいま。今日は良い子にしてたかい?」
「うん、少しだけどお母さんに文字を教えてもらったよ」
「そうか、文字を勉強したのか偉いなぁ」
 セトは優しくミアの頭を撫でた。
「お父さん、その動物は何てお名前なの?」
 成長して様々な物に興味を持ち始めている。
「ラゼムっていうんだ。こいつがあればお母さんがたくさん美味しい料理を作ってくれるぞ」
「お母さんの料理は全部美味しいから大好き!」
「そうだな。お母さんの料理はいつも美味しいもんな」
 終始笑顔のセトである。
「おっと忘れるとこだった。今日はミアにプレゼントがあるんだよ。見たいかい?」
「見たい見たい!何かな何かな〜?」
 セトはバックパックから布製の袋を取り出しゆっくりと袋の口を開けた。
 そこから可愛い顔をした動物がひょっこりと顔を出す。
「この動物は森に棲んでるポッサルっていうんだよ。森の中で迷子になってたらしくてずっと鳴いてたから拾って来たんだ。まだ子供だから小さいけど大人になってもあまり大きくはならない」
 ポッサルは例えるなら、カワウソとリスを足して2で割ったような動物である。
 本当は近くで親のポッサルが何かに襲われて死んでいたのだが、流石にそれは言えなかった。
「可愛いね〜。お父さん、この子にお名前つけて良い?」
「もちろんだよ。この子は今日からミアのペットで友達だ。じっくり考えて名前を付けてあげなさい」
「ありがとうお父さん!大好き〜」
 セトの足に勢いよく抱きつき、喜びを表現するミアであった。
 その晩の食卓には、ラゼムの肉を使用した何品かの料理が並ぶ。
「じゃあ祈りを捧げていただきましょ」
 テーブルを三人で囲み、セトとジーナは星の守護者に、ミアはよく分からずに祈りを捧げ料理を食べ始めた。
「お父さん、お母さん。ポッサルの子供のお名前いま思いついちゃった」
「考えるのが早くてお利口さんねぇ。何てお名前にしたの?」
「え〜っとねぇ、男の子だからレクル!」
「良いお名前ね。レクルを大事にしてあげてるのよ」
「うん」
 ミアは籠の中にいるポッサルに近付き話しかける。
「いっぱいいっぱい遊ぼうね、レクル」

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