ダークネス社長の甘い言葉

ライトニングがまだ気にしている事。

それは、社長が放った刺客であるメカ魔物を倒してしまった事。

これが原因でせっかくのダークカンパニーとの契約が破綻になるのではないかとライトニングは気にした。

ライトニングは社長にお詫びをしようとホテルの従業員に社長がどこにいるのかを聞く。

「あの、ダークネス社長はどこにいますか？」

「社長は最上階である11階の119号室のキングルームにおります」

「そんな部屋があるのですか？」

「119号室はそれなりのお客様でなければ入れない場所です」

「そうなんだ」

　それなりのお客様と聞いてライトニングでも入れるのか不安ではあった。

　しかしいずれにせよ、社長に出会わなければいけない。

　ライトニングは社長に失礼のない格好になるために、黄色いドレスを着て頭にティアラを着ける。そしてコハナからもらった銀の指輪をつけて、黄色いヒールを履く。そしてツインテールの髪をほどく。

ライトニングは119号室の部屋へ行きノックをする。

　部屋をノックすると部屋から社長の声がする。

「誰だい？」

「ライトニングです。ダークネス社長にお詫びをいたしたく参りました」

「ライトニングさんでしたか。少々お待ちください。私から開けます」

　社長は部屋のドアを開けるとライトニングをお迎えした。

「申し訳ございません。社長自ら私のためにドアを開けさせてしまいまして」

「いえいえ、私にとってライトニングさんはお客様も当然です。ありがたくお迎えいたします」

「かたじけないです」

　ライトニングは座り心地の良いソファーに座ると、社長にロイヤルミルクティーを差し出された。

「どうぞ」

「ありがとうございます」

「ライトニングさんのドレス姿はお綺麗です。黄色いドレスに黄色い靴。髪型も長髪で髪を結んでいないお姿もライトニングさんらしいです」

「そんなに褒めないでください。照れてしまいます」

「これは失礼いたしました」

　褒める言葉と親切な対応で社長はライトニングの心をつかもうとする。

　しかし、ライトニングはこの社長の甘い言葉が相手に自分を信用させて、最後は騙して命を奪うのではないかと考える。

　今回のメカ魔物の件もそうではないだろうか。

　ライトニングは社長が何を考えているのかを聞かず、まずは謝罪をする。

「実は１０階のレストランなのですが、魔物が４匹入ってきました。その魔物は私が退治しましたが、客席とキッチンを壊してしまいました」


「要するにレストラン階の部屋を破壊したということですか？」

「はい。ですから私は社長に謝罪をしなければいけないと考え参りました」

「なるほど。普通ならば営業妨害と器物破壊で罪に問われる問題です」

「承知しております。契約も破棄され損害賠償もあり得るものと考えております」

　この時ライトニングは、社長はあえてメカ魔物を放ち、ライトニングに倒させたのかもしれないと思った。

ライトニングとメカ魔物が戦えば部屋は荒れる。

荒れた部屋を後ろ盾に損害賠償などの罪を押し付けて自分が被害者のように振る舞う。

これは、損害賠償という金を目的とした詐欺ではなかとライトニングは思った。

　賠償金などを手に入れられれば多額の金を得られるし、それで事業を成せる。

　おそらくダークカンパニーは詐欺で貯めた金で成長した会社だとライトニングは確信した。

　どんな形であっても詐欺で成長した会社に未来はない。必ず滅ぶ時が来る。

　ライトニングはこのことを確信して社長と会話を続ける。

「社長。私は何をすればよろしいでしょうか？」

「いっそのこと我が社の裏仕事でもどうでしょうか？」

「それは奴隷でしょうか？」

「とんでもないです。そんなことをするのは資産家だけです。会社では奴隷などは扱いません」

「そうですか」

「それに、ライトニングさんと当社は契約を交わしています。ライトニングさんが台無しにしたレストランを治してくだされば、この件は水に流します」

　部屋を治せば水に流す。この言葉にライトニングは動揺するのであった。