メカの魔物が出る

プールで体と頭を休めようと考えていたブルースとチャーン。2人はお互いにデートをしようという気ではない。正直男女でいるだけでデートだと思われることが気に入らない2人。



　年も離れており親子だとか兄弟だとかも思われそうだが、そうも思われたくない。



　そんな2人で関係がギクシャクしている。



　しかしそんなことを考える暇はなかった。プールに地面から魔物が現れた。



　魔物は1体だが、身長2メートルの黒い熊の魔物のようだが、体がサイボーグになっており、口からレーザー光線を発射する。



　レーザー光線はプールサイドの床を簡単に破壊し、しかも爪も鋭く、壁をひっかいた時の爪痕が深すぎて壁に爪痕の穴が出来る。



　普通の人間も簡単に襲われて爪でひっかかれた人間は即死。レーザー光線を食らった人間も即死した。



　男女関係なく熊のメカ魔物に襲われる人間達であるが、ブルースとチャーンは慌てない。



「お前、あんな奴見て怖くないのか？」



「あんなので逃げていたら、中華料理どころかこの世界で生きていけないって」



「他の奴らは襲われて逃げまくっている。逃げるなら今だぞ。こっちには気づいていない」



「逃げるわけない。それにどこへ逃げても同じだって。あいつを倒さない限り恐怖は終わらない」



「そうだな。じゃあやってやるか」



　ブルースは腰に着けていたプールでも身に着けられる片手銃のケースから銀色の片手銃を取り出す。



「武器持ってたんだ」



「俺の愛用武器、シルバーガンだ」



「そのまんまなの」



「笑うなって。こいつは魔法銃で魔力の弾を何発でも撃てるんだ。俺の体の魔力が尽きない限りな」



「なるほど、ブルースさんも魔力が体の中にあるんだ。私もだけどね」



　この世界には100人に1人、体に魔力のある人がいる。それは人種を問わずで魔力のある人間は魔法が使えるのと、魔力が尽きても、睡眠で回復する効果がある。



　しかし、こういった人間は特別な人とされて暗殺されたり注目されたりするため、そういったのが嫌な人は世界の表舞台には現れず、静かにお店など地味な仕事をして生活しているのだ。



　ブルースとチャーンはそういった存在である。



「お前、魔力あんのか。どんなことが出来る」



「ブルースさんには特別に教えてあげるけど他の人には内緒だよ」



　チャーンの能力は火と水と風と土の全ての属性魔法が使えるというもの。



　魔力を持つ人間でもそういった属性の魔法は1つしか使えないものだが、チャーンは生まれてから魔力を持つ人間の中でも特別の特別で全ての属性魔法が使える。



「まじかよ。それって異常じゃんか」



「そう、だから。見てて」



　チャーンは「フレイム」という魔法を唱える。これは下級魔法だが、彼女は全ての属性魔法が使える分上級魔法が使えないデメリットがあった。



　そのため、フレイムを何回か唱えて熊のメカ魔物を攻撃するも反撃を食らう。



　熊のメカ魔物は爪でチャーンを攻撃してくるが、チャーンはかわして水魔法の「スプラッシュ」を唱えて水の矢を熊のメカ魔物に攻撃する。すると機械が水でおかしくなるのか、この魔法攻撃を受けた熊のメカ魔物は苦しみだす。そこをブルースがシルバーガンで熊のメカ魔物の心臓を狙い撃ちしてとどめを刺す。



　熊のメカ魔物はその攻撃を受けて爆死した。



　しかしチャーンはいい気分じゃなかった。



「魔物は倒したけど、人は多く死んじゃったね」



「せっかくの楽しい休憩時間だってのに、どうしてくれるんだってんだ」



　ブルースは暗い気持ちでプールを出て行った。チャーンも暗い気持ちで戻っていく。



　このような事件が起きているのにまだライトニングとラップ、セイタとエミーはこの事件が起きたことを知らないのである。



　同じプールでも離れた場所にいて、騒がしい声がそのあたりまで届いていなかったからである。