ライトニング、ヒーラーの説得で料理店を成長させる。

間の前に草原で豚の魔物の肉を取りに行こうとヒーラーを説得する。



「挽肉は豚肉だからこそうまいんだ。鳥も牛も挽肉にすればうまいが、リンゴを食べる豚の魔物となれば、そいつは絶品だろう」



「そうね。ワイズで有名な食品会社も、その豚の魔物を毎日狩っているそうだしね」



「何だその食品会社って？」



「知らないの？　ダークカンパニー」



　ダークカンパニーは食品会社である。本来は豚をはじめ農家から野菜。卵は鶏の魔物といった様々な食材を集めては調理。その後は冷凍食品として経営しているチェーン店に送っている。



　ダークカンパニーのチェーン店は中華料理店、洋食店に和食店といった様々なジャンルのチェーン店をワイズだけではなく他の街でも経営していた。

　この会社は名前が不気味と感じる人は多いが、名前とは別に料理は美味しくお客に喜んで食事してもらえるという理由で毎日100万人以上のお客が訪れるほどで料理の評価は全世界で1位であった。



　しかし、それは表向きの理由で裏では機械を利用した改造実験を行っているということは、ワイズの人々はもちろん、ライトニング達でさえ知らない。



　ライトニングは、ヒーラーにダークカンパニーのすごさと良さだけを教えられた。



「すごい会社だな。っていうかこの街に会社があるのか」



「それはもちろん。組織がなければワイズの街どころか、多くの方々への料理の提供とか出来ないって」



　異世界に会社はないとライトニングは思っていたが、似たような組織というのはないはずがない。



　文明があれば会社とか役所に警察。銀行もある。



　ライトニングは、せっかく異世界に転生したというのにこれじゃあ現実世界と変わらないのではないかと思ってしまう。



「社畜は辛い。俺はそういう場所は向いていない。ただゆっくりゆったりとレストランを経営して静かに一生を終えられるならそれでいい」



「ライトニングはそれで満足なの？」



「えっ？」



「せめて大金とか稼いで、お店を大きくするとか野心はないの？」



「そりゃあ、俺だって金を使って楽しいことはしたい。だがお金を稼ぐのは生きるためだから」



「そんな人生はつまらないよ！　私が支えるからお店を大きくしてお金稼ぎしようよ！」



「金稼ぎだと？」



「そうだよ！　会社を作れとは言わないけど、まずは他のお店と契約したりして協力するとか、ボルテックスの2号店を作って、ゆくゆくはアンペア商店街だけではなくワイズ各地。それからワイズの外の街へ、世界へボルテックスの料理店ありと伝えるんだよ」



「もはや大企業だ。ヒーラーは俺にボルテックスを大企業にしてその企業の社長になれというようなものじゃないか。俺は店長で十分だ」



　転生前のライトニング、西南雷気は中小企業で働く一般社員だったため、大企業を作り上げるという目標は大きすぎる。



　それと最初にヒーラーに説得してきたつもりが今度は説得されたことにライトニングは、ヒーラーの情熱を感じられた。



　商店街の小さなお店を、世界1位の大企業にするなど、転生前のライトニング、西南雷気が行えば、上司に説教されるのが普通。



　大企業を目指すのは、人生を終えるまでになしえる目標にしても無理な話だと感じられた。



「私はやるよ。ライトニングが不安なのは分かるよ。だから私がサポートする！　アンドロイドの私がライトニングを支えれば、必ず大業を成せるよ」



「そうか、それを目指すということは挫折することもあるかもしれない。それでもいいのか？」



「人生はどんな時も挫折するもの。苦しみを体験しなければ幸福を得られない」



「よし！　なら頼むぞ！　そのためにも今は豚の魔物を狩り、うまいハンバーグとオムライスを作らないとな！」



　大きな目標と望みがないライトニングであったが、ヒーラーというライトニングのことを高く評価してくれるアンドロイドに対して、その気持ちに答えたいという思いでライトニングはやる気に満ち溢れた。