全ての魔法を極めた勇者が魔王学園の保健室で働くワケ
過ち
「いや、学園長室で統一議会の話題が出た時に不機嫌になってただろ? だから、てっきり魔王と統一議会の遣り取りを聞いていて、何か思う所があったのかと思ってさ。……だけど、俺の勘違いだったみたいだな。今の話は忘れてくれ」
ルクスリアの動揺ぶりからして、何か疚しい事情があるのは間違いない。
とはいえ、コイツが魔王に反旗を翻すなんて事は、天地がひっくり返っても有り得ないだろうし、別に放置しても問題ないだろう。
それよりも下手に首を突っ込んで、藪蛇になる方が恐ろしい。
迂闊に話を聞いてしまうと、その疚しい事情とやらに巻き込まれて、共犯にされる可能性もあるしな。
そんな打算めいた考えのもと、俺は早々に話を打ち切ろうとした。
しかし――、
「……もしかして、ルクスリア。また?」
「い、いえ、その……」
幸か不幸か、意外な人物が反応を示してしまった。
視線を横にずらすと、ルクスリアに向けて呆れたような眼差しを送る、ルミナリエの姿が。
どうやら、この一連の流れの真相に心当たりがあるようだな。
そして、ルミナリエのジト目に射抜かれたルクスリアは、滝のように冷や汗を流している。
正直な所、聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちが半々なんだけど、ここまで来たら腹を括るか。
こんな中途半端な所で切り上げるのは気持ち悪いし。
「ルクスリア、もう諦めて大人しく吐いた方が楽になるんじゃないか? 気付いたのが俺だけなら、あのままスルーしても良かったけど。どうやら、ルミナリエも……というか、むしろルミナリエの方が深い所まで察しているようだし」
「うぅ……元はと言えば、シルクさんが余計な事を口にしなければ……」
僅かに瞳を潤ませながら、恨みがましい目付きで睨んで来るルクスリア。
確かに、その点に関しては少しだけ申し訳ないと思うけど、そもそもの原因は、お前にあるんだろ?
俺は単に疑問を口にしたに過ぎないんだから。
そんな抗議の意を込めて、無言でルクスリアを見つめ返す。
すると、根が真面目な彼女は、あっさりと折れた。
「すみません、本当は分かってます。悪いのは全部、私だって」
「別に、そこまでは言ってないさ。お前の事だから、ただの悪戯や悪ふざけって訳でも無いだろう? というか、具体的に何をしたんだ?」
ルミナリエの言葉から察するに、過去にも同様の何かがあったみたいだけど。
ルクスリアが、これほど狼狽える程の秘密とは。
「盗聴……です」
「盗聴? それって、部屋の外で聞き耳を立ててたって事か?」
いつものハキハキとした口調とは真逆の、か細い声で己の過ちを告白したルクスリア。
しかし、その内容は思わず首を傾げるものだった。
コイツの立場なら、わざわざ盗み聞きなんてしなくとも、その場に同席できるだろうし、仮に盗聴したとしても、そこまで咎められる事じゃない筈だけど。
……いや、違う、そうじゃない。
そもそも、コイツは学園に来てから、すぐに俺と再会して、その後は身動きが取れなかったんだ。
だからこそ、聞ける筈が無い統一義会との会話を“何処で”、“どうやって”聞いたのか。
それが問題の核だった。
「……まったくもう。前の試作品は回収したのに。また新しく作らせたの?」
「はい……これです」
ルクスリアとルミナリエが俺を置いてけぼりにした遣り取りを交わして、ルクスリアが懐から何かを取り出す。
「なんだ、それ……水晶?」
どうやら、それは魔力を宿した水晶を素材とする、マジックアイテムのようだった。
ルクスリアの動揺ぶりからして、何か疚しい事情があるのは間違いない。
とはいえ、コイツが魔王に反旗を翻すなんて事は、天地がひっくり返っても有り得ないだろうし、別に放置しても問題ないだろう。
それよりも下手に首を突っ込んで、藪蛇になる方が恐ろしい。
迂闊に話を聞いてしまうと、その疚しい事情とやらに巻き込まれて、共犯にされる可能性もあるしな。
そんな打算めいた考えのもと、俺は早々に話を打ち切ろうとした。
しかし――、
「……もしかして、ルクスリア。また?」
「い、いえ、その……」
幸か不幸か、意外な人物が反応を示してしまった。
視線を横にずらすと、ルクスリアに向けて呆れたような眼差しを送る、ルミナリエの姿が。
どうやら、この一連の流れの真相に心当たりがあるようだな。
そして、ルミナリエのジト目に射抜かれたルクスリアは、滝のように冷や汗を流している。
正直な所、聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちが半々なんだけど、ここまで来たら腹を括るか。
こんな中途半端な所で切り上げるのは気持ち悪いし。
「ルクスリア、もう諦めて大人しく吐いた方が楽になるんじゃないか? 気付いたのが俺だけなら、あのままスルーしても良かったけど。どうやら、ルミナリエも……というか、むしろルミナリエの方が深い所まで察しているようだし」
「うぅ……元はと言えば、シルクさんが余計な事を口にしなければ……」
僅かに瞳を潤ませながら、恨みがましい目付きで睨んで来るルクスリア。
確かに、その点に関しては少しだけ申し訳ないと思うけど、そもそもの原因は、お前にあるんだろ?
俺は単に疑問を口にしたに過ぎないんだから。
そんな抗議の意を込めて、無言でルクスリアを見つめ返す。
すると、根が真面目な彼女は、あっさりと折れた。
「すみません、本当は分かってます。悪いのは全部、私だって」
「別に、そこまでは言ってないさ。お前の事だから、ただの悪戯や悪ふざけって訳でも無いだろう? というか、具体的に何をしたんだ?」
ルミナリエの言葉から察するに、過去にも同様の何かがあったみたいだけど。
ルクスリアが、これほど狼狽える程の秘密とは。
「盗聴……です」
「盗聴? それって、部屋の外で聞き耳を立ててたって事か?」
いつものハキハキとした口調とは真逆の、か細い声で己の過ちを告白したルクスリア。
しかし、その内容は思わず首を傾げるものだった。
コイツの立場なら、わざわざ盗み聞きなんてしなくとも、その場に同席できるだろうし、仮に盗聴したとしても、そこまで咎められる事じゃない筈だけど。
……いや、違う、そうじゃない。
そもそも、コイツは学園に来てから、すぐに俺と再会して、その後は身動きが取れなかったんだ。
だからこそ、聞ける筈が無い統一義会との会話を“何処で”、“どうやって”聞いたのか。
それが問題の核だった。
「……まったくもう。前の試作品は回収したのに。また新しく作らせたの?」
「はい……これです」
ルクスリアとルミナリエが俺を置いてけぼりにした遣り取りを交わして、ルクスリアが懐から何かを取り出す。
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どうやら、それは魔力を宿した水晶を素材とする、マジックアイテムのようだった。
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