全ての魔法を極めた勇者が魔王学園の保健室で働くワケ
ネタばらし
「お疲れ様です、シルクさん。あの程度の男に手こずるとは欠片も思っていませんでしたが、ここまで呆気なく片付けるとも思ってませんでした。流石、魔王様に認められただけはありますね」
「えっ!? あの魔王様に……? というか、ずっと気になってたんですけど、シルクさんって何者なんですかっ」
暴れ始めたガンマを無力化した俺は、事の成り行きを見守っていたアイネとルクスリアに出迎えられた。
ちなみに、ルミナリエは早速、自分で壊した部屋の修復に当たっている。
アイツの魔力特性とは相性の悪い魔法だから、悪戦苦闘しているけど、もともとの筋が良いので、それほど進捗は悪くない。
あと5分もすれば復旧作業は終わるだろう。
そして、アイネ達の背後――この部屋の入口付近には、恐る恐るといった様子で中を覗く受験者と、値踏みするような眼差しを向けてくる教官陣がいた。
どうやら、ガンマとルミナリエの対立に巻き込まれないように避難していたらしい。
しかし、他の受験者はともかく教官まで現場を放り出すとは情けない。
被害拡大を防ぐ結界要員や避難誘導に当たる役割を考慮しても、せめて一人くらいは喧嘩を仲裁しろよ。
……と言いたい所だけど、片や魔王の愛娘、片や七星剣の跡継ぎともなれば、敬遠したくなる気持ちは分からないでも無い。
魔界で生まれ、魔界で育ち、魔界の価値観に染まりながら生きていく魔族にとって、魔王と七星剣の名は強い意味を持ち過ぎる。
それこそ、自分や周りの人生を、たった一言で左右しかねない程に。
まぁ、そうは言っても、あのヴェノが理不尽な権力の行使を許す訳ないんだけどな。
たとえ愛する娘でも(むしろ愛する娘だからこそ)間違った道に進むなら容赦なく正すだろうし、七星剣についても同様だ。
とはいえ、絶対的な権力を持っているのも事実であり、その支配下にある魔族達に『怯えるな』というのは無理な話だろう。
何でも自由に決められるという権力者の立場も、意外と考えものだよな。
何にも自由に決められなかった勇者という名の奴隷と、どっちがマシかは分からないけど。
「……」
「えと、シルクさん?」
不思議そうに、こちらを見つめるアイネに呼びかけられ、つまらない感傷に浸っていた意識が引き戻される。
未練といい、黒歴史といい、過去に囚われるのは俺の悪い癖だ。
せっかく、新しい世界に生を受けたんだから、過ぎ去った時間に執着するのは勿体ないよな。
「悪い、何でもない。それより、俺が何者かって話だったな。そんなに大した話でも無いんだけどさ、実は俺って魔王学園専属の医療スタッフなんだ。この学園の校医として、主に生徒の肉体的なケアをするのが仕事だな」
「……医療スタッフ? それに校医って……えぇぇぇ!? って、ことは受験生じゃなかったんですかっ!?」
ちなみに、生徒の精神的なケアを担当する専属カウンセラーも居るらしいが、会った事は無い。
なんでも、諸事情により到着が遅れているらしく、今日か明日あたりに顔を見せるそうだ。
入学試験でカウンセラーが必要になるとは思わないけど、医療スタッフが揃っていない態勢というのは、どうなんだろうな?
ヴェノの事だから、もしもの時は俺に振れば良いやとか思ってそうで怖い。
確かに、俺の魔力特性なら人の精神にも作用できるけど、せいぜい対症療法が限界なんだぞ。
俺自身の精神の安寧のためにも、早いところ本職に来て欲しいもんだな。
「えっ!? あの魔王様に……? というか、ずっと気になってたんですけど、シルクさんって何者なんですかっ」
暴れ始めたガンマを無力化した俺は、事の成り行きを見守っていたアイネとルクスリアに出迎えられた。
ちなみに、ルミナリエは早速、自分で壊した部屋の修復に当たっている。
アイツの魔力特性とは相性の悪い魔法だから、悪戦苦闘しているけど、もともとの筋が良いので、それほど進捗は悪くない。
あと5分もすれば復旧作業は終わるだろう。
そして、アイネ達の背後――この部屋の入口付近には、恐る恐るといった様子で中を覗く受験者と、値踏みするような眼差しを向けてくる教官陣がいた。
どうやら、ガンマとルミナリエの対立に巻き込まれないように避難していたらしい。
しかし、他の受験者はともかく教官まで現場を放り出すとは情けない。
被害拡大を防ぐ結界要員や避難誘導に当たる役割を考慮しても、せめて一人くらいは喧嘩を仲裁しろよ。
……と言いたい所だけど、片や魔王の愛娘、片や七星剣の跡継ぎともなれば、敬遠したくなる気持ちは分からないでも無い。
魔界で生まれ、魔界で育ち、魔界の価値観に染まりながら生きていく魔族にとって、魔王と七星剣の名は強い意味を持ち過ぎる。
それこそ、自分や周りの人生を、たった一言で左右しかねない程に。
まぁ、そうは言っても、あのヴェノが理不尽な権力の行使を許す訳ないんだけどな。
たとえ愛する娘でも(むしろ愛する娘だからこそ)間違った道に進むなら容赦なく正すだろうし、七星剣についても同様だ。
とはいえ、絶対的な権力を持っているのも事実であり、その支配下にある魔族達に『怯えるな』というのは無理な話だろう。
何でも自由に決められるという権力者の立場も、意外と考えものだよな。
何にも自由に決められなかった勇者という名の奴隷と、どっちがマシかは分からないけど。
「……」
「えと、シルクさん?」
不思議そうに、こちらを見つめるアイネに呼びかけられ、つまらない感傷に浸っていた意識が引き戻される。
未練といい、黒歴史といい、過去に囚われるのは俺の悪い癖だ。
せっかく、新しい世界に生を受けたんだから、過ぎ去った時間に執着するのは勿体ないよな。
「悪い、何でもない。それより、俺が何者かって話だったな。そんなに大した話でも無いんだけどさ、実は俺って魔王学園専属の医療スタッフなんだ。この学園の校医として、主に生徒の肉体的なケアをするのが仕事だな」
「……医療スタッフ? それに校医って……えぇぇぇ!? って、ことは受験生じゃなかったんですかっ!?」
ちなみに、生徒の精神的なケアを担当する専属カウンセラーも居るらしいが、会った事は無い。
なんでも、諸事情により到着が遅れているらしく、今日か明日あたりに顔を見せるそうだ。
入学試験でカウンセラーが必要になるとは思わないけど、医療スタッフが揃っていない態勢というのは、どうなんだろうな?
ヴェノの事だから、もしもの時は俺に振れば良いやとか思ってそうで怖い。
確かに、俺の魔力特性なら人の精神にも作用できるけど、せいぜい対症療法が限界なんだぞ。
俺自身の精神の安寧のためにも、早いところ本職に来て欲しいもんだな。
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