全ての魔法を極めた勇者が魔王学園の保健室で働くワケ

雪月 桜

一触即発

「さて、アイネの現在地は……っと」

実験棟に辿たどり着いた俺は、まずアイネの魔力反応を探って居場所を確かめた。

この実験棟には、魔法の開発や実験、計測といった用途ようとで使用される部屋が大小合わせて数多く存在しているため、どこに居るか分からないからだ。

この2次試験だけでも、複数の部屋が会場として使われているしな。

ちなみに、1次試験と違って、俺の出番は恐らく来ない。

この2次試験では、身体能力や魔法技能、習得している魔法の熟練度などを計測して合否が決定されるため、怪我の心配がほとんど無いからな。

だから、俺はヴェノに頼まれたアイネの監視に集中できるという訳だ。

「……おや? どうやら、アイネさんは姫様と同じ部屋に居るようですね。魔力反応が1箇所に固まっています」

俺と違って、ルミナリエの反応を探っていたらしいルクスリアが先んじて声を上げる。

俺よりも早く見つけたと言わんばかりに得意げな顔を見せてるけど、俺だって声に出して無かっただけで、とっくに分かってたぞ?

――なんて言った所で、負け惜しみと思われるだけかも知れないし、わざわざ良い気分に水を差すのも大人気おとなげないか。

せっかく本人が満足してるんだから、そっとして置いてやろう。

「みたいだな。お前はルミナリエの試験を鑑賞しに行くんだろ? どうせ目的地も同じなんだし、このまま一緒に行くか」

「……えぇ。それは構いませんが」

思っていた手応えが返って来なかったからか、少しムッとした様子のルクスリア。

そんな彼女のジト目に気付かないフリをしつつ、スタスタと先行する。

ふっふっふ、あの程度で俺がムキになると思ったら大間違いだ。

別に狙った訳じゃないけど、ルクスリアの思惑おもわくを外した事で、少しだけ愉快ゆかいな気分になった俺は、アイネの反応を追って意気揚々いきようよう廊下ろうかを進んで行った。

少しねたような気配をただよわせる、ルクスリアの視線を背中に感じて、そのまま歩くことしばし。

俺達は、ようやく目的の部屋に辿り着く。

――いな、そこは部屋では無かった。

実験棟の最上階に位置する、は、天井と外壁が吹き飛んで、見晴らしの良い屋上へと変貌へんぼうしていたのだから。

「あっ、シルクさん! 良かった、無事だったんですねっ!」

「ああ……うん。確かに俺は無事だったけど。むしろ、この部屋の方が無事じゃないよな?」

部屋の惨状さんじょう呆然ぼうぜんと眺めていた俺に、いち早く気付いたアイネが安堵あんどの笑みを浮かべて駆け寄って来た。

どうやら、魔力反応に間違いは無かったらしく、ルミナリエも、この部屋に居る。

ただし――、

「……ごめんなさい、たぶん私の聞き間違いだと思うから、もう1度だけ言ってくれる? ……ただし、聞き間違いで無かった場合、今度は貴方の首が吹き飛ぶ事になるけど」

「オォオォ。コエェ、コエェ。少しは落ち着いてくれや姫さんヨォ」

ほんの数分前に探知した時とは比べ物にならないほど魔力が荒ぶっていたけど。

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