全ての魔法を極めた勇者が魔王学園の保健室で働くワケ
疑問
「失踪……ねぇ。誘拐で無いという根拠はあるのか?」
魔族の少女の身体には、謎の魔法生命体が寄生していた。
あんなものが自然界に存在しているという話は聞いた事が無いし、第三者の接触があったのは間違いないと思う。
二つの事件が同一犯、あるいは同じ組織による犯行だと決まった訳じゃないけど、うちの受験生という共通点がある以上、接触して誘拐された可能性は充分に考えられる。
「むしろ、その逆ですね。誘拐だという証拠が何一つとして見つからないから、失踪という扱いになっているそうです。集団失踪事件が発覚した経緯としては、人間界と魔界を繋ぐ定期船に受験生が現れず、詳しく調べた結果、“数日前から行方不明になっていた”事が判明した、という流れのようです。ちなみに、転移魔法の使い手が失踪事件に関わった形跡は無いですね。……あくまで人間側の話ですが」
「まぁ、転移魔法を扱える人間は限られているし、国家によって厳重に管理されているからな。たった一つの犯罪を犯すだけでも至難の技だろう。……でも、だとしたら、魔族側は相当に疑われてるんじゃないか? 魔族にも転移魔法の使い手は少ないとはいえ、そんな実情は知らないだろうし」
「あはは……そうですね。詳しい話は人間界の統一議会から伺いましたが、かなり執拗に問い詰められましたよ。事件が起きたのが魔界だったら、更に険悪になっていたでしょうね」
統一議会というのは、魔界との外交の為に設立された機関で、各国の重鎮が構成メンバーとして名を連ねている。
表向きは、人間と魔族の交流を円滑に進めるために存在している事になっているが、それは耳触りの良い建前だな。
本音としては、他国のみが魔界と癒着するのを恐れているのだ。
だから、魔界との遣り取りは全て統一議会を通す決まりとなっており、互いが互いを監視している、という訳である。
とはいえ、抜け駆けを防ぐ以外にも責任の分散とか、魔界が侵略する可能性に備えて結束を強める、といった意味合いもあるんだろうけど。
そんな統一議会の相手は魔王が自ら務めている。
いくらルクスリアが有能とはいえ、人間界との遣り取りまで代理に任せていては印象が悪いからな。
恐らく、そのせいだろうが、この話を始めてからルクスリアの機嫌が悪い。
表向きは無表情で目を瞑ったまま控えているだけだが、明らかに魔力が荒ぶっている。
「……まったく、あの狸ジジイ共ときたら……もう少し魔王様に対する礼儀というものを……(ブツブツ)」
よくよく観察したら、滅茶苦茶ブツブツ言ってんじゃねぇか。
声が小さすぎて、何を言ってるか聞き取れないけど。
まぁ、人間側がピリピリしていたのは想像に難くないし、アイツには看過できない暴言や嫌味が多分に含まれていたんだろう。
……ん?
でも、コイツが学園に到着したのは今朝だよな?
それから真っ先に女子寮の風呂場(実際には男子寮だったけど)に向かい、そこで俺と鉢合わせた筈だ。
ルクスリアが汚れた身体で魔王と会うなんて考えにくいしな。
そして、その後は俺の魔法で眠っていたし、ルミナリエからの連絡で起きた後は事件の対処に追われていた筈なんだけど。
……コイツは、いったい何処で魔王の遣り取りを聞いていたんだ?
魔族の少女の身体には、謎の魔法生命体が寄生していた。
あんなものが自然界に存在しているという話は聞いた事が無いし、第三者の接触があったのは間違いないと思う。
二つの事件が同一犯、あるいは同じ組織による犯行だと決まった訳じゃないけど、うちの受験生という共通点がある以上、接触して誘拐された可能性は充分に考えられる。
「むしろ、その逆ですね。誘拐だという証拠が何一つとして見つからないから、失踪という扱いになっているそうです。集団失踪事件が発覚した経緯としては、人間界と魔界を繋ぐ定期船に受験生が現れず、詳しく調べた結果、“数日前から行方不明になっていた”事が判明した、という流れのようです。ちなみに、転移魔法の使い手が失踪事件に関わった形跡は無いですね。……あくまで人間側の話ですが」
「まぁ、転移魔法を扱える人間は限られているし、国家によって厳重に管理されているからな。たった一つの犯罪を犯すだけでも至難の技だろう。……でも、だとしたら、魔族側は相当に疑われてるんじゃないか? 魔族にも転移魔法の使い手は少ないとはいえ、そんな実情は知らないだろうし」
「あはは……そうですね。詳しい話は人間界の統一議会から伺いましたが、かなり執拗に問い詰められましたよ。事件が起きたのが魔界だったら、更に険悪になっていたでしょうね」
統一議会というのは、魔界との外交の為に設立された機関で、各国の重鎮が構成メンバーとして名を連ねている。
表向きは、人間と魔族の交流を円滑に進めるために存在している事になっているが、それは耳触りの良い建前だな。
本音としては、他国のみが魔界と癒着するのを恐れているのだ。
だから、魔界との遣り取りは全て統一議会を通す決まりとなっており、互いが互いを監視している、という訳である。
とはいえ、抜け駆けを防ぐ以外にも責任の分散とか、魔界が侵略する可能性に備えて結束を強める、といった意味合いもあるんだろうけど。
そんな統一議会の相手は魔王が自ら務めている。
いくらルクスリアが有能とはいえ、人間界との遣り取りまで代理に任せていては印象が悪いからな。
恐らく、そのせいだろうが、この話を始めてからルクスリアの機嫌が悪い。
表向きは無表情で目を瞑ったまま控えているだけだが、明らかに魔力が荒ぶっている。
「……まったく、あの狸ジジイ共ときたら……もう少し魔王様に対する礼儀というものを……(ブツブツ)」
よくよく観察したら、滅茶苦茶ブツブツ言ってんじゃねぇか。
声が小さすぎて、何を言ってるか聞き取れないけど。
まぁ、人間側がピリピリしていたのは想像に難くないし、アイツには看過できない暴言や嫌味が多分に含まれていたんだろう。
……ん?
でも、コイツが学園に到着したのは今朝だよな?
それから真っ先に女子寮の風呂場(実際には男子寮だったけど)に向かい、そこで俺と鉢合わせた筈だ。
ルクスリアが汚れた身体で魔王と会うなんて考えにくいしな。
そして、その後は俺の魔法で眠っていたし、ルミナリエからの連絡で起きた後は事件の対処に追われていた筈なんだけど。
……コイツは、いったい何処で魔王の遣り取りを聞いていたんだ?
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