聖獣に転生したら、もふもふされ過ぎてつらい

シーチキンたいし

戦闘後の話を盗み聞き


「こんなところで終わってたまるかッ!」

私はこの人を助けるために姿を表そうとした、そのタイミングで、人間の騎士が大きな声を上げたため、ビビって茂みのなかで立ち止まってしまった。

「ッ!クソ!くるなら来い!」

しかも、剣を向けているので私の足はガクブルだ。しかも、耳が全然隠れられてない。頭隠して尻隠さずのごとく、体隠して耳隠さず状態だ。

「……?!な…んだ?」

人間の騎士はなんだか困惑しているようだ。

そういえば、話している言葉は日本語じゃないのに、普通に理解できてるな。なんで?

震えながらそんなどうでもいいことを考えていると、騎士は困惑しながらも、剣を地面に下ろしてくれた。

優しい!

私は意を決して、茂みから姿を現した。

「……は?」

騎士は私を凝視していた。そうだよね、カーバンクルとか絶対幻のポ◯モンみたいなもんだよね。

「み、見たことない魔獣だな……」

困惑する騎士だが、私はもう恐怖より好奇心の方が勝っていた。久しぶりの人間に出会えて歓喜した。

そして、なんだろう?この人からいい臭いがする!

「お前……ここは危険だぞ…早く逃げろ…」

「きゅん!」

私は騎士に近づいて匂いを嗅いだ。やっぱり、この人から何とも言えない引き付けられる匂いがする。

普通、生まれたばかりとはいえ、獣は獣。本能で警戒できるはずなんだけど…この人は無理!むしろ撫でて!可愛がって!と叫びたくなった。

「この深淵の森にこんな人懐っこい魔獣なんていたか?」

それはそうだろな。それよりも、騎士の傷が痛そうだ。私は騎士の傷を癒すべく魔法を発動させた。

「お前いったい……ッ!?」

最初は驚いて警戒しようとしていたが、私が傷付けるためじゃなく、癒すために魔法を使ったことに気づいた騎士は、警戒を解いてくれた。

「これは……回復魔法か?!」

「きゅきゅう!」

「俺を助けてくれるのか?」

「きゅう!」

私は騎士を助けられるのが嬉しくてついついスキルをフルスロットルで使ってしまった。恐らく古傷すら綺麗さっぱり消えているはずだ。

「動く……ありがとう、小さな魔獣。お前に礼をしたいところだが、俺は仲間を助けにいかなくちゃならない。この礼はいつか必ずする」

「きゅう…」

「すまない、俺の名はジルベスター・アンダルシアン。この名に誓って約束は守る」

「きゅう」

行ってしまうのは寂しいだけど、戦闘中なのを思い出した。ジルベスターには仲間がいる。我が儘は言えない。

私は大人しくジルベスターが去っていくのを見送った。






それにしても、何で私はあんなにジルベスターに惹き付けられたんだろう?

疑問に思った私は、そういえばカーバンクルの生態を今更ながらよく知らないことに気が付いた。なので、ステータス出はなく自身を鑑定してみた。

【聖獣 カーバンクル】
神の化身、繁栄をもたらす使徒として語り継がれる幻の聖獣。その個体はいずれ神獣へといたり、神の身許に行くと言われている。

基本的に警戒心が強く、マナの多い場所に生息するが、滅多に人前には現れない。なぜなら、聖獣であるカーバンクルは魂の質を見破ることができるため、善人か悪人かをみわけられるからだ。

知能も高いため、人の言葉を理解すると言われ、成長すれば言葉をしゃべれる個体も現れる。

そして、カーバンクルは生涯に一度だけ、種族に関係なく波長の合うものをパートナーに選ぶ。パートナーは匂いでしか分からないため、生涯見つけられないカーバンクルもいたりする。パートナーと巡り会えるのは非常に稀である──────


カーバンクルの能力とかさ、もう神様から色々もらってる時点で色々突っ込むの諦めてたけど…なにこの最後の文!

パートナーって聞いてないんだけど!

匂いでしか分からないって、あんなにジルベスターに惹き付けられたのってやっぱりジルベスターが私のパートナーだからってこと?

「きゅう、きゅう?」

そうこう思考しているうちに戦闘音が止んだ。もしかしてもう終わった?

私は再びジルベスターに会うべく、戦闘のあった場所へ近づいていった。すると、すぐにジルベスターを見つけた。どうやら他の隊員と話しているようだ。

「団長、お疲れ様です」

「あぁ、お疲れ様」

「いやぁ、無事で良かったぜ。ドラゴンに吹っ飛ばされた時はもう駄目かと思ったぜ」

青っぽい髪の毛の優しそうなイケメンと赤髪の活発そうなイケメンだ。騎士にはイケメンしかいないのか?

「怪我は大丈夫なのですか?」

「いや、……あぁ、もう大丈夫だ」

「何だよ?歯切れ悪ぃな」

「……お前たち、この【深淵の森】に小さな魔獣がいると思うか?」

私!私の話だ!
わーい!ジルベスターが私の話をしてる!

「なんだよいきなり」

「小さな魔獣ですか?我々の知る魔獣分布において、この森には小動物は生息していますが魔獣となると……」

「……では額に燃えるような赤い宝石をつけた白い魔獣を知っているか?」

「宝石をつけた白い魔獣?」

「いったいどうしたのですか?いきなりそんなこと……」

「実は……」

ジルベスターは私に助けられたことを仲間の二人に詳しく話していた。

嬉しい!ジルベスター!ここにいるよ!

「そんなかとが……」

「確かレイ、お前鑑定もってなかったか?」

「カイも持ってますよね?」

「俺のは全然レベル低い」

「私のはまぁ、そこそこありますけど…肝心の相手がいないんじゃ」

「あれ、違うか?」

赤髪の男がこちらを指差していた。私は驚いて固まった。

な、何故わかった……!?

「……ふふっ、小さな魔獣よ…また耳が出てるぞ」

ジルベスターが微笑みながらそう言った。

そして気づいた。ジルベスターが自分の話をしていることが嬉しくて前のめりになっていた。さっきと同じ体隠して耳は隠さずの恥ずかしい格好になっていたことに気がついていなかったのだ。

うぅ……恥ずかしい!でもジルベスターが微笑んでくれて嬉しい!

「小さな魔獣よ……出て来てはくれないか?俺もこの二人も、お前に危害は加えない」

そう言われてしまえば、私はジルベスターの近くに尻尾を振って近付いた。

「うわっ!なんだこれ!ちっこいなぁ」

「可愛らしい魔獣ですね!確かに見たことがない魔獣です」

「だろ?」

「きゅん!きゃん!」

ジルベスター!会いたかった!

「お前…本当に人懐っこいな…心配になる。申し訳ないのだが小さな魔獣よ、お前を鑑定したい。いいか?」

「きゅん!」

「レイ、やってくれ」

「はい、わかりました」

そして、レイという青っぽい髪の騎士から魔力が放出されたのがわかった。鑑定されるってこんな感じなんだ。

「ッ!?こ、これは……!」

「どうしたレイ?何が分かった?」

「隊長、その子は魔獣ではありません。聖獣です。聖獣 カーバンクルです」

「聖獣!?」

「カーバンクル!?」

そうだよー、ジルベスターもっと撫でて!

「鑑定結果を紙に書きますね」

レイは紙に鑑定して見えたことを書いていた。どうら書かれているのは、私の名前、種族、年齢くらいで詳しいステータスまでは分からなかったみたいだ。

あと、さっき私が鑑定したカーバンクルの生態についてがかかれていた。


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