聖獣に転生したら、もふもふされ過ぎてつらい

シーチキンたいし

何故か人ではない



「きゅ~……」
(どういうことよこれー…)


目覚めた私は、目線の低さに唖然とし、更に、自分の姿に唖然とした。

人間じゃない。あきらかに獣に転生しているようだ。

(こんなの……聞いてないんですけど)

思い悩んでいると、神様に説明されたときに、こっちの世界に来たらまずステータスを確認するといいと言われたことを思い出し、自身を鑑定した。



名前:サーヤ
種族:聖獣 カーバンクル(成体:神獣)
年齢:0
Lv.:1
称号:異世界人   魅惑のもふもふ

HP:125
MP:9999999

スキル:鑑定Lv.MAX
                治癒魔法Lv.MAX
                防御結界Lv.MAX
                索敵Lv.MAX

種族スキル:奇跡の涙
 
ユニークスキル:癒しの毛
                                異世界マップ

加護:創造神の加護
            生命神の加護




なんだそれ……。

まぁ、ただ一言いえるとすれば、意味がわからない─だ。

そう言えば、色々とこの世界のこと、常識などは丁寧に説明してくれていたが、私が何に転生するかとか、全然話してなかったのを今さら思い出した。

これは確認しなかった私も悪い。しかし、言わなかった神様も酷いよね?

上から順番に再度確認することにした。名前はまぁいいとする。なに?種族:聖獣 カーバンクルって?しかも成体になったら神獣だって。わあーウレシイナァ!(棒読み)

そして、年齢とレベルはわかる。だが称号の欄に『魅惑のもふもふ』って…ある。まぁ、わからなくもない。だって自分の姿、まさにもふもふした毛でおおわれてるから。自分で言うのもなんだが、かなりさわり心地が良さそうだった。

猫よりも長く、ウサギよりも短いくらいの耳、胸毛が少し長めでもっこりあり、体は猫のマンチカンのように短足。幼体なので、かなりちっこい。そして、真っ白な毛に額に燃えるような赤い宝石が輝いている。

これが今の私なのだ。

動物好きの紗綾にとって、一目みただけでたまらないドストライク小動物だが、自分がなってしまったのであれば、抱き締めることも、撫でることも、だっこもできない。虚しい気分になった。

そして、MPがバグのようにカンストしている。もう、見ないふりだな。

さらにスキル。普通のスキルはどうやら、身を守るための結界をはったり、怪我や病気を癒せる魔法のようだった。補助極振りの後衛タイプといえるだろう。

そして種族スキル。鑑定したところ、どうやらどのカーバンクルも持つ種族限定のスキルらしい。『奇跡の涙』は、それを発動し流した涙は、どんな傷や病を癒し、地面に垂らせば、不毛の土地を豊穣の土地へかえるような奇跡をもたらす涙だとか。

……カーバンクルすげーな。

そしてユニークスキル:癒しの毛 は、その名の通り、スキル発動中に私の体に触れている─もふもふする─と、精神や疲れをじんわりとる……らしい。鑑定にそう書いてあるから、そうなのだろうが、使ってみないことには効果はまだよく分からない。

あと異世界マップは地図だった。◯oogle先生みたいな。ステータスみたいに視界に出て来て驚いたわ。

とまぁ、よく分からないほうこうにぶっ飛んでいるステータスだ。

ステータスを見ながら唖然としていると、ステータスの画面がいきなり切り替わった。そこには「神様からお知らせ」とあった。


内容は────
「やっほー!目覚めた?どう?気に入ってくれた?その体!

転生先の希望とかなかったからサー、とりあえず君が小動物好きだって聞いたから、僕の世界ナンバーワンの魅惑の小動物カーバンクルを選んでみたよ!君が早くに死んだりしないように、回復とかに特化した種族でもあるから一石二鳥かな?って!

ついでに、スキルのレベルは神様権限でMAXにしといたから!じゃんじゃん使ってねー!

それと、君の今いる現在地は、マップで見ればわかるよ!できれば北西に進むといいよ!その方角にある国は割りと平和だから!他だとちょっと危ないと思うから!人間に会いたくなったら向かってみるといいよ!

じゃ!異世界ライフを楽しんで!

by あなたの神様より!」


(かっっっっるいな……神様。もういいけど)

転生してしまったからもう時すでに遅しだ。こうなったら開き直って人生いや、獣生を受け入れよう。

「きゅ!」

鳴き声もなんか、可愛いし。聖獣なんていう獣の癖に、外見はなんか可愛いだけな気がする。これ、ひょっこり人間に会おうものなら、誘拐されるのでは?

とりあえず、この森の中で生活することにした。














「きゅぅ~……」
(なめてた……獣生…)

この世界に転生して早半年、私は巣穴にした、木の根もとの小さな穴のなかで一人ため息をついた。何故だか理由は単純だ。

私がせ・い・じゅ・う!だからダヨォ!!

森の動物や温厚そうな魔物達に近づいて「友達になろうぜ!」とアピールしても、あっちは「あ、聖獣様!そんな!畏れ多い!」となる。

つまり、半年間ぼっち!遊んでも上司と平の気遣いが入って思いっきり遊べない。ついでに言うと、この体生まれたばかりなので、それにつられて精神が幼児化しているのだ。

なのでつらい。ぼっちがつらい。ひじょーにつらい。

「きゅきゅぅ……きゅぅ…」
(喋りたい、あとなんか無性に撫でられたい)

この体になって良かったといえば、食事だ。この体、空気中にあるマナ(魔力の源)を体内に吸収して生きているため、食べ物を必要としない。餓死はしないのだ。

だが、人間だったころの記憶があるため、何か無性に食べたくなって、木の実を食べてみたら、普通に食べられた。味覚はあるようだ。

ぼっちを誤魔化すように木の実を食べまくった。もう木の実飽きたや…。

もうずっとこの辺から動いてない。そうだ!人間に会いにいこう!神様も言ってたじゃん!会いたくなったら北西にって!

私は人間恋しさに森を出る決心をした。


私がいるこの森、かなり大きい。【深淵の森】と呼ばれるとても危険な場所らしい。まぁ、それは人間にとってだ。

ここは空気中のマナが豊富にあるのだ。そのお陰で森の資源は豊かだが、それに比例するように魔物が狂暴。なので、一攫千金を目指して冒険者がやって来るが、命懸けで挑まなくてはならない。今、冒険者たちがやって来るのは精々森の入り口までだ。

私のいる場所は、かなり奥の方。確かに危険な魔物がいるが、私にはスキル:防御結界Lv.MAXがある。おかげで、例え襲われたとしても、結界のおかげで死ぬことも怪我を負うこともなかった。

神様にこのスキルもらっててよかった…。

私がもらったスキル、かなり役立っている。防御結界しかり、索敵しかり、鑑定しかり。

今のところは、治癒魔法や、種族スキル、ユニークスキルの癒しの毛なんかは、使っていないので、良くわからないままだが、他は重宝している。

鑑定のおかげで、食べられるか食べられないかわかる。索敵のおかげで、不要な魔物との接触をさけられる。防御結界のお陰で身を守れる。

ほんとスキル様様だ。

私は視界の端にあるマップを見ながら、旅立つことを決意した。冒険の準備は万端だ。神様が言っていた北西にある国を目指して、いざ出発!

「きゅきゅ~~っ!!!」



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