チートスキルは存在しました。

千歳

5話 スキルレベル40(ほぼ二ヶ月後)

またまたあれから二ヶ月の月日が経過した。
もうそろそろ恒例になり始めているスキルの効果とステータス上昇。
正直マンネリ化してきたなと思ってた。


そう思っていたんだ。
でもこれがまさかだよ。
ある日また頭に声が聞こえたんだよ。




<【地図】のスキルを獲得しました>




なんだなんだと思ってステータスを確認したら
本当に獲得してやがった。しかも【徒歩】スキルのおかげで。
とりあえずその【徒歩】スキルレベルが40になったことでこうなったんだ。


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【徒歩】・・・移動した分数で熟練度が上昇。
レベル1・・・移動する
レベル10・・・移動した分数×2の熟練度が上昇し、
指定場所が2つになる
レベル20・・・指定先に移動する
レベル30・・・移動した分数×5の熟練度が上昇し、
指定場所が6つになる。
レベル40・・・移動した分数×8の熟練度が上昇し、
指定場所が10つになる。【地図】を獲得する。
レベル50・・・?
レベル60・・・?
レベル70・・・?
レベル80・・・?
レベル90・・・?
レベル100・・・?
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そりゃあ移動する時は道が分からなければ地図を確認するよ。
それがまさかスキルとして獲得出来るなんて誰も思わないだろ。
そんで【地図】スキルの効果がこれなんだ。


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【地図】・・・世界全体を把握出来る。
縮小拡大が可能になり、1m大まで縮小可能。
建物内部も把握可能となり、地下空間も可能。
生物の行動もリアルタイムで把握可能。
任意の指定した場所に<専用ピン>を設定出来る。
<専用ピン>は【徒歩】スキルの指定場所に依存。
スキルレベルは無い。
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正直言うと、これが今後に生かされるのであれば
「限定的瞬間移動」が「瞬間移動」に変わると思う。
でも効果にはそんな事書かれてないし、実際やっても無理だった。
それでも期待は出来る。<専用ピン>って言ってる時点でそうだろって思っちゃう。


あとこの【地図】スキル、悪用しようと思えば出来てしまう。
これストーカーしようと思えば出来てしまうのが怖い所だ。
ここは一度、心を引き締めて、悪事には一切使わないと心に誓わねば。


そして【徒歩】スキル。やはりと言った感じで
「移動時間の倍増と指定先の倍増」をした。
まぁ倍ではないんだが、ここは気持ち的に倍増と言っておこう。
この計算だと十日もしないうちに次のスキルレベル50にまであがる事になる。
ここまで短縮になるとは・・・チートしゅごい・・・。


さて次にステータスである。


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名前 重咲 歩おもさき あゆむ
年齢 24歳
レベル 40


SP S
MP G
物攻 G
魔攻 G
敏捷 S
知力 B
運 S


スキル / スキルレベル (熟練度/累計)
【徒歩 40】(703615/10000000)
【地図 −】 (−/−)
【自己閲覧 −】(−/−)
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敏捷に続いて上がり続けていたSPまでSランクに登りつめた。
最近では、冬頃には季節の変わり目でかなりの確率を風邪をひいてたのに
それもパタリとなくなり、鼻炎気味だったのもスッパリ無くなった。
メタボ気味の腹もシュッとした十代の頃に戻り、
それをも超えてシックスパックになったのだ。


もっと凄かったのが、メガネ男子だった俺がメガネを外した事だった。
そう、視力が回復したのだ。会社ではそれらの事で少し話題になった。
ある女性後輩には「先輩、メガネ外したんですか?いいですね!」とか、
違う部署の女性部長が「重咲君痩せた? それにメガネも。いいじゃない」とか、
贔屓にしてくれている会社の男性社員からは「重咲さん!どうやったら痩せますか!?」とか


この二ヶ月くらいほぼ言われる事はメガネと痩せた事。
周りからしたら体じゃなくて顔付きがシュッとしてメガネも外したもんだから
爽やかと思われているらしい。初めてのショートの髪型も合わさっているらしい。


ただそれのおかげもあって、服装などを全部変える事になり
貯金をしていたお金が全て消えてしまったのはご愛嬌という所なのだろうか。
こっちとしては凄く嬉しいのに悲しい気持ち。複雑だ。


ただ、そういう複雑な気持ちを払拭してくれる出来事もあった。
ここ二ヶ月間で詰めていたプロジェクトが大成功したのだ。
そのプロジェクトも正直いって【徒歩】スキルのおかげでもある。


なんの関係性があるのか疑問にも思われるだろうが
確かな因果がある。


***


スキルレベル40も残すところ一ヶ月の仕事帰り。一ヶ月前の事になる。
その日は仕事も早く終わり、残業もせずに近くの公園まで「限定的瞬間移動」を行った。
そしたら、特に見つかったわけでもないのに近くから悲鳴に近い女性の声が聞こえた。
気になった俺は敏捷を頼りに、本気を出しはせずちょっと早いかなくらいで現場に走った。


その場所には女性が居たんだが、
男二人で強引に腕と脚で持ち上げながら車に連れ込もうとしている所だった。


咄嗟の事で二、三秒自分が硬直しているのに気づき、
ハッと思い返して、足に力を入れてその場に駆け込んだ。


力は特に強くは無いがスピードには最大限の自信を持っていたので
すぐに追いつくことが出来た。


脚を持っていた男には、左脚を軸にしてそれなりに速い蹴りを胸の辺りに叩き込む。
男が吹き飛んだのを確認したあと、腕を持っていた男が気づき
叫んで此方を威嚇しようとしていた所を、今度は右脚を軸にして
男の左頬に左ストレートをぶち込んでやる。
腕を持っていた男もダウンした事を確認して、地面に転がってしまった女性の安否を確認。
涙目で此方の事を警戒していて話す事も出来ないようだ。


右脚も左手も結構痛い。徐々に痛みが引いてきたのが分かったので
その場に居ても危ないので、女性と一緒に現場を離れる事にする。


女性は体が硬直していて動けない。
仕方なく、心ではすみませんと謝り、お姫様抱っこな形で走り出す。


近くの人気ない所で下ろしてから、チェーン店のカフェに入り一服する。


數十分が経ってからようやく女性が此方の警戒を解いたのか話しかけてきた。


「あ、あ、あの・・・」


「あ、はい。えっと大丈夫でしたか?」


「は、はい。先程はありがとうございました」


「いえ、あれを見過ごすとか男が廃るので」


「ほ、本当に、このご恩をどう返せば・・・」


「あ、いえ。特には。大丈夫ですので。
そういえば自己紹介がまだでしたね、私は重咲 歩と言います。
重いに咲くと書いて重咲。歩くと書いて歩です」


「いえ、えっと、ワタシは道長 未来です。
道路の道に身長の長で道長。未来を描くの未来です」


「道長さんですね。あとで警察とかには通報しますか?
無理そうであれば私から通報しておきますが・・・」


「あ、いええっと、通報はしないでおいてもらえると・・・」


「え?・・・えっと、それは何故か聞いても大丈夫ですか?」


「はい。多分と言うかかなりの確率で私の家絡みの問題です・・・」


「家柄み・・・ですか・・・えっとー・・・あっ道長って」


「はい。多分重咲さんが思っている通りだと思います。
ワタシの家、道長家は代々政治家を生業にしています
なのでそれ絡みの物だと思います。
ワタシ自身もこのような事は初めてではないので・・・」


「そ、そうですか。かなり複雑なご事情がお有りなようで・・・」


「すみません。なので通報などは家の影響してしまいますので・・・
助けて頂いて本当に有難い事なのですが・・・すみません」


「あ、いえ。私も偶然に重なった出来事なのでそこまで気にしないでください」


「今度お礼させて下さい。家からは無理かもしれませんが、
ワタシ自身がお礼したいので。連絡先とか教えて頂けませんか?」


「あ、いえ。本当にお礼とかは大丈夫ですよ」


「で、では連絡先でも教えてください!」


「え、えっと・・・?私のようなものの連絡先、欲しいですか?
そこら辺の一般人と変わりないですよ?」


「そんな事言ったらワタシもそこら辺の一般人と変わりませんよ」


「でもご実家は政治家で・・・」


「それは家が、ですよ。ワタシ自身はただの一般人です」


「ま、まぁ連絡先だけなのであれば・・・」


「ありがとうございます!!絶対連絡します!!!」


「い、いえ・・・そ!それでは私は先にお暇しますね?」


「はい!本当にありがとうございました!!」


「で、では・・・」


***


と言う事があったのだ。
それから一ヶ月道長さんと電話で連絡したりメールでやり取りしたり
チャットで連絡を取り合ったりしていた。
その間、プロジェクトは着々と進んでいたのだが、
先方が最初からかなり渋って居たのだが、途中から急に積極的になり、
しまいには先方のお偉いさんから「いやぁ重咲君のおかげでこっちもかなり助かったよ」
とお声をかけて頂いた。最初はなんの事だと思っていた。
それもそのはずで、自分は営業紛いの事もしていたのだがほぼ裏方に回って作業をしていた。


途中から「道長さんのお礼ってこれの事なんだろう」って思えた。


道長さんとの電話でのやり取りの際、プロジェクトが上手くいきそうだと話をしたら
凄く上擦った声を出していたので確信に変わってしまった。
お礼は特にいらないって言ったんだけどなぁ・・・。
今度はこちらからお礼しなくては。


そんな事もあって着々とこの一年が過ぎようとしていた。
もう十二月も最終週。
また来年も良い年になるといいな。



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