1分で読める物語

淺井 哲(あさい てつ)

噂の幽霊

最近ここには幽霊が出るらしい

僕はあまり幽霊とかは怖くないから平気だけど

すると前に不自然な女性を見つけた

ああ、なるほどあの人か

意外とはっきり見えるんだな

「こんにちは」

 恐る恐る女性に声をかけてみる。だが、彼女は何の反応も示さない。

「こんにちは」

 少し声量を上げると、ようやく彼女は振り向いた。どこか物憂げで、青白く不健康そうな顔。

「こんにちは。あなた、私の姿が見えるの?」
「はい」
「そう、普通の人間には見えないはずなのに」
「おかしいこと、なんですかね?」
「そうね。だってここは、自殺の名所として知られている森なのよ。あなたも、ここに迷い込んでしまったの?」
「あ、いえ。ちょっとばかり、面白い噂を耳にしましてね。もしかしてあなたは、幽霊なんですか?」
「そうね」

 躊躇いのない返答に、喉がごくりと鳴った。

「でも大丈夫。あなた”は”間もなく成仏できるわ。足の方が、もう薄れてきてるから」

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