最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~

マーくん

第261話 【謎の病気3】

<<マサル視点>>
イリヤから、少し前にセラフ様が片付けて下さったヤマトー侯爵の残党がいるって連絡が入った。

最近事務仕事ばかりで、身体が鈍っていたところだったから、ちょうど良かったな。

「リズ、ヤマトー侯爵の残党が現れたって、イリヤから連絡が来たから、ちょっと行って来るね。

あー、晩ご飯は家で食べるから。
じゃあね。」

地下の転移魔法陣に行き、イリヤから聞いた番号を入力してっと。」

白い光に包まれると、目の前にシルビア先生の姿があった。

最近、イリヤがシルビア先生を連れて来て、一緒に晩ご飯を食べる機会が多いから、結構親密になっている。

「シルビア先生、わたしは王様じゃないですよ。」

振り返ったシルビア先生が驚いている。

「あー、びっくりした。
マサル様、もういらっしたのですか。」

「さっきイリヤから転移魔法陣の番号を聞いたからね。

ところで、こちらは?」

「お父様、こちらの皆さんはこの村の村民の皆さんです。」

「初めまして、マサルです。イリヤがお世話になっているみたいで。」

ひとりの老人が後ろから出て来た。

「もしかして、あの救国の英雄マサル様でございますか?」

「そういう呼び方は恥ずかしいからやめてくださいね。
たぶん、おっしゃっているマサルだと思いますよ。」

固まっていた村人達が一斉に頭を下げて地面に擦るように土下座した。

「ちょ、ちょっと待ってください皆さん。立ち上がって下さい。
村長さん、普通にして下さい。
ほらお父さんからも、何とか言って!」

「あのマサル様のご令嬢とはつゆ知らず、大変失礼なことを。」

今度はイリヤに向かって土下座を始めた。

「もうー!」

イリヤの呆れたつぶやきが聞こえた。



結局、20分くらいそんなやり取りがあって、やっと村人達とまともに話せる状態になった。


「それで、ヤマトー侯爵の残党のことですが............」

村長の後ろからひとりの少女が顔を出して、前に出て来た。

「サ、サキヤって言いいます。

わたし、ヤシムの熱が下がらなくって、それで治したくって、山に薬草を採りに入ったの。
そしたら、怖い顔をしたおじさん達がたくさん出てきて、追いかけられて、囲まれて......

捕まって洞窟に連れ込まれそうになったの。

怖くて、腕を振り払って逃げだしたら追いかけてきて。

でもね、急に追いかけるのをやめたと思ったら、どっかから『早くこちらに!』って声が聞こえて、そちらに逃げたら助かったの。」

少女はその時のことを思い出したのか、震えながらも気丈に状況を教えてくれた。

「そうか、怖かったね。話してくれてありがとう。」

「お父様、早く悪い奴等を捕まえに行きましょうよ。

サキヤちゃんみたいに襲われる人が出ないうちに。」

「そうだね。イリヤも行く気みたいだね。」

「もちろん!」

「わたしはこの村に残るようにします。

サキヤちゃん、病人がいるのかい?」

「ええ、ヤシムって言うの。
高い熱でこっちで寝ているのよ。」

「わたしをヤシム君のところに連れて行ってくれるかい?」

「おばさん、お医者様?」

「ああ、そうだよ。」

「こっちなんです。早く早く!」

サキヤと名乗る少女は、シルビア先生の手を引いて、一件の家に連れて行ってしまった。


「じゃあ、イリヤ。俺達は残党狩りといこうか!」

「うん。」

俺達は、サキヤちゃんが言っていた辺りに向かった。


山に入り、少し木々の間を深く入って行くと、森が途切れ岩肌と洞窟が見えてきた。

近づくと、武装した数人が倒れている。

「見た感じこいつらがヤマトーの残党みたいだな。

どうして倒れてるんだ?」

疑問に思いながらも、持って来たロープで全員を縛っていく。

「イリヤはここで見張っていてくれるかい。

お父さんは、洞窟を見て来るよ。」


洞窟に入ると、そこで生活していたことが分かる残骸がたくさんあった。

いちばん奥の穴には、草で作られたベッドのようなものが10 あった。

「外にいたのが10 人だったから、あれで全てか。」

俺は彼等がヤマトーの残党である証拠を探そうと辺りを見渡した。

いちばん奥の少し高くなった場所にある寝床の隅に、少し高価そうな剣がある。

手にとって調べてみると、ヤマトー侯爵の紋らしき形を彫った細工が目に入った。

「後は特に無さそうだな。」

洞窟から出るとイリヤが暇そうにしている。

「さあイリヤ、こいつらを引き渡しに首都のスリトーシティに行こうか。

確か486527だったな。」

スリトーの王城近くの森にセラフ様が転移魔法陣を残しておいてくださったので、それを使う。

もちろん、残党達も一緒だ。

重力魔法で動きを制限してある残党達を浮かせて、王城まで連れて来た。

門の守備兵に名乗ってから、経緯を説明して、残党達を見せる。

「この者達を引き渡したいのですが。

出来ればヤマトー元侯爵家の所縁の者かの確認もお願いします。」

「マサル共和国のマサル?

もしやあの救国の英雄のマサル様でございますか?」

「はあ、たぶんそのマサルだと思います。」

「おい、マサル様が来られていると、王に報告を!」

バタバタと兵達が動き出すのを見ていると、王城からスリトー王が姿を見せた。

「おー、マサル殿。ご無沙汰しておりますな。

今日は、ヤマトーの残党を連れて来てくださったと聞いたのですが。」

「ええ、娘のイリヤが薬草採取で訪れていた村に残党がいると聞いたもので。

お節介だとは思いましたが。」

「いやいや、セラフ殿の件といい、マサル殿には本当にお世話になりっぱなしだな。


ところでセラフ殿は、今日はおられないのですかな。」

「ええ、セラフは急用で親元に戻ったものですから。」

「そうですか。娘のカンナも首を長くしてまた会えるのを楽しみにしておりますのだ。

ところで、せっかくですから、中にお入り下さい。

宴の用意をさせましょう。」

「スリトー王、せっかくのご好意感謝致します。

ただ、今日は連れの者をその村に置いて来ておりますので、これで失礼します。

また改めて来させて頂きたく思います。」

「では改めての来訪お待ちしていますぞ。」

残党を引き渡した俺達は、そのまま飛んでサヤマ村に戻った。


          

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